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遠藤諭の「0(ゼロ)グラム」へようこそ

ジャパネットたかたのテレビ論(続)

2009年04月09日 08時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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カメラのたかた

ジャパネットたかたの原点でもある、「カメラのたかた」佐世保営業所の模型。ジャパネットたかた本社の入口に置いてある。

遠藤諭の「0(ゼロ)グラム」へようこそは、毎週火曜日、アスキー総合研究所のウェブサイトで更新されます

 前回の続き。

 ジャパネットたかたといえば、先週の『日経ビジネス』(2009年3月30日号)の「消費退国/ニッポンの生活者を掴め!」で扱われていたのをご覧になった方もおられるはず。大手家電量販店を含む国全体の消費が冷え込む中、2008年も対前年比18%増、経常利益率5%前後を維持し続けている秘密に迫ろうというものだ。この記事の中でいちばん注目すべきなのは、「(販売する商品を)最終決定するのは当日の午前9時頃だ」という部分ではないかと思う。

ジャパネットたかたは「テレビジョン」の具現
駅前の魚屋を地でいく手法


 テレビジョン(television)というのは、遠くにあるものが見える装置である。『Oxford English Disctionary』には、“『Scientific American』(1907年6月15日号)によると、電送写真の技術などが「テレビジョン」実現への着実なステップになる”といったことが書かれている。テレビの実験放送が行われる30年も前に、「テレビジョン」という言葉がもう使われている。遠くの風景を目の当たりにすることができる技術は、まさに夢の技術だったといえる。

 ジャパネットたかたの高田明社長のお話で感じたのは、このテレビジョンの「遠くのものを見る」といういちばん基本的な特徴を、同社が最大限に生かしているということだ。例えば、ジャパネットたかたは「生」放送にこだわっており(前回記事参照)、全国の地域ごとに、天気などによって商品や話題を変えながら、お茶の間に直接語りかけている。さらに、放送直前まで販売価格を吟味することもできる。

 ジャパネットたかたには、ロングテールも協調フィルタリングも、ワンツーワンマーケティングもない。ヨドバシカメラやアマゾンのように、全方位的な品揃えの充実や、客の滞留が重要というわけではないからだ。絞り込んだ少数の商品しか扱わないので、売れ行きを見ながら売り方や売る数も工夫していける。ひとことでいえば、ジャパネットたかたの販売方式は、駅前商店街の生鮮食料品をあつかうお店と同じである。店頭に立っているオヤジが「お客さん、今日はいいサバが入りましたよ」という感じで語りかけてくる。

テレビは距離を縮めるメディア

ジャパネットたかたはテレビを介して、商店街のオヤジと客の距離と同じ距離感を作り出している。

 このやり方で、2009年にはネット販売がテレビ通販を超え、おそらく家電・デジタル機器のネット通販では日本一になると思われる。これだけ来ているとなると、『ロングテール』(The Long Tail: Why the Future of Business is Selling Less of More)の著者クリス・アンダーセン氏に教えてあげたくもなってくる(ちなみに、彼はいま「無料」エコノミーについての本を書いているそうだ。日本でもこの夏以降、「無料」についての議論が盛り上がるだろう)。

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