DVDの次に来る標準は?
中国信息産業部の担当者はよくこのようなことをいう。「中国政府が管理・推進する技術規格に関する研究開発で、ある程度成果が出ると、その新規格のプロジェクトリーダーは、国家にほめられ、それで満足してしまうというのが問題となっている」。
もっと端的にいえば、プロジェクトリーダーは成果を基に国家のどこかいいポストに移れればいい、と思っている。
「政府に褒められて『ありがたき幸せ』とポストをもらい、めでたしめでたし」というのは、レッドクリフの頃から変わらぬ中国人の習慣にも思えるが、なんにしろ、そういう伝統的な概念をなくし、事業化して収益をあげないといけないという危機感は中国政府も抱いている。
実は中国でDVDプレーヤーの販売台数が頭打ちになりつつある。農村部を含め、中国国内での高い普及率を背景に、ここ3年でDVDプレーヤーの売れ行きが明らかに鈍っているのだ。
だから早いうちに、中国で売れる次世代DVDプレーヤーを作らないと、プレーヤー市場が飽和してしまい、買い替えをしない中国人がゆえ、市場が極端に縮小する恐れがある。
前述したとおり、中国で売れたプレーヤーは、シリコンプレーヤーにしろ、DVD/VCDプレーヤーにしろ、PS2にしろPSPにしろニンテンドーDSにしろ、海賊版が動くことが理由で普及した。
またHD動画を使うとなると、メディアはしばらく高価だし、ADSLの速度がほとんどの地域で2M以下という状況下では、誰かが海賊版動画データを中国全土にばら撒くのにはあまりにファイルサイズが大きすぎる。
BD-RがDVD±R並に安くなり、ADSLが中国全土でさらなる高速回線化をすれば、状況が変わる可能性がある。中国国外のコンテンツが豊富であることからも、中国市民の次世代メディアの標準はブルーレイで決まりとなるだろう。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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