海賊版の存続がハードの命運を握る
ブルーレイやHD DVDの競争のときにキーとなったのは、ハリウッドをはじめとしたコンテンツホルダーがどちらにつくか、ということだった。
魅力的なソフトが供給されなければ、ハードが売れるわけはないだろうと。それはもちろんそうなのだが、中国ではそれ以上に海賊版の存在が必要だ(もちろん海賊版は善ではなく悪である)。
DVDやVCDが中国で爆発的に売れたのは、海賊版の販売店が日本で言えばコンビニほどにどこにでもあり、多数のタイトルが買えて、しかも安いというのが原因だ。
ブルーレイは、メディア(BD-R)自体がまだ海賊版販売額として成立しないほど高価で、ブルーレイで扱うデータ量が、中国の標準的回線速度である「ADSL 2M」では扱えないほど大容量であるために、海賊版が出せず普及せず、結果としてハードも売れていない(パッケージは日本を含めた外国産のブルーレイで、中身がDVDというのはあるが)。
もちろん中国政府的には、海賊版を胸を張って容認するわけにはいかない。なのでEVDファミリーやNVDをはじめとした中国系光メディア規格では、必ずといっていいほど、海賊版対策技術が組み込まれていることをアピールする。しかしその海賊版対策が中国においてはハードの普及を妨げる。
中国政府としては外国の企業に特許という名の対価を奉納する「世界の工場」から脱して、特許の対価を奉納される側になろうと躍起だ。ところが研究者レベルでは、「世界が採用する規格をつくる」という中国が目指す目標とズレがある。
中国産光ディスク規格で特許支払を回避しようという中国の動きに対して、「JETRO(日本貿易振興機構)北京センター知的財産権室」は、以下のような見解コメント(関連文書)を発表している。
「EVDの技術はDVDの延長として開発されたものであり、「以前からDVDディスクも見れる」とか、「EVDメーカーは現行のDVDの3分の1程度の特許使用料を日本を中心とするDVDメーカーに支払う必要がある」とする報道からも、DVDとは利用関係にあるものと想像されます。
日本メーカーを始めとする外国企業のDVD特許出願の多くが未だ特許権として成立していない中、中国発EVDは既に22件の特許が成立したとの報道は、仮にこれが事実とすれば明らかに内外国不平等な取扱いと言わざるを得ません。
さらに、技術の利用関係が明らかになれば、DVD特許を無視することは不可能であり、メーカーはDVD及びEVDの両方にライセンス料の支払い義務が生じることから「海外メーカーに高額の特許料を支払う必要が無く、コストが低く抑えられる」とする報道もおかしくなります。」
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