クチコミに重要なのは人の心を動かすことと
それをどう他人に伝えてもらうか
2008年にソニーから、ビデオカメラユーザーが運動会や卒業式といったハレの場だけでなく、もっと日常で使うことの価値に「気づかせる」提案を強化できないか、という相談を受けたという。
堀 普段のシーンでもっと映像を撮りましょうよという、「何気ない毎日でもスペシャル」というメッセージは、以前からクライアントがユーザーへ投げかけていたんですが、やっぱりユーザー自身にそうだよね、と心から“実感”してもらわなければいけない。そこで『“ハンディカム”、まわそう』という言葉を今回作った上で、今回の制作にとりかかったんです。
2008年12月にティザーサイトを立ち上げて、そこから約3週間後の2009年1月16日にサイトをアップした。もちろん当初からクチコミで広がることを目論んでいた。
桜子 実際今回クチコミで広がったようですが、そのきっかけはどうやって作るんですか?
堀 クチコミは2ステップを踏むことで生まれると思うんです。まず何がクチコミの源泉かと言えば「人に伝えたい」という“気持ち”ですよね。最初に大事なのはその“気持ち”をどう作るか、なんです。心が動くかどうか。それはカッコイイ、カワイイ、キレイのどれでもいい。最初に人が心を動かす要素を作ってユーザーへ与えるのが第1ステップなんです。
今回、堀氏は“心を動かす”要素の中で、特に“泣ける”という部分に注力した。涙を誘うインタラクティブコンテンツがあまりなかったのでトライしたかったと語る。
堀 極端な話、笑いでも良かったと思うんですけど、ビデオカメラを使う機会を増やすことに時間が過ぎ去っていくことの切なさを感じてもらいたかったので、泣けるという方向で作ったんですね
そして、次にそれを体感した人に、いかにしてそれを他人に伝えてもらうか、がクチコミに欠かせない第2ステップであるという。
Cam with meには、サイト左隅に「この体験を共有(EMBED WEBSITE)」というボタンがあり、そこを押せばサイト丸ごとが縮小化されたブログパーツができる。
通常ブログパーツは、必ずしもブログの記事に連動して貼られるとは限らないが、この形式であれば堀氏らが作った「Cam with me」の世界観を損なわずして見る人へ伝わる。ブロガーの手によってカスタマイズされた「Cam with me」のコンテンツが、ネット上に幾つものコミュニティを形成しながら、派生していくのである。
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