「昔からあったものをちゃんとやりましょう」
津田:あとはテレビ番組のネット配信をより簡単にするための改正も盛り込まれています。
テレビ番組をネットで二次利用するためには、著作者全員の許諾が必要なんですが、テレビ番組には多くの人が関わっているため、古い作品では著作者が見つからないことがあるんです。
NHKのネット配信サービス「NHKオンデマンド」などでもがんばって全員に連絡を取ろうとしたけど、所在が分からないケースがあった。現実的に9人がOKといっているのに、1人が行方不明で許諾が取れないことも起こっている。
そこで行方不明の人がいた場合は、事前に必ず許諾を取らなくても二次利用ができるように変えようとしています。
このあたりは僕も議論に参加していた文化庁・文化審議会の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」で話し合われていたことです。
小委員会ではふたつの方法が提示されていました。ひとつは著作物の利用を申告してから一定の期間が経ったらとりあえず使っていいという方式です。事前の支払いはなしで、あとで著作者からの申し出があったときに著作権の使用料を支払うという「フェアユース」的な方法ですね。
もうひとつは民間の第三者機関を作って、行方が分からない人の著作権使用料をプールしていくという方法です。そのどちらかでやっていこうという案は出ていましたが、どちらの方法で具体的に行くのかは決定していません。
こうした制度は「裁定制度」といい、もともと文化庁でも用意していたものなんです(関連リンク)。この裁定制度の手続きをもっとやりやすくしましょう、というのが今回の改正になります。一部では目新しい法改正のように報道されていましたが、そこまでドラスティックな改革ではなく、「昔からあったものをちゃんとやりましょうよ」という話ですね。
まとめると、今回の改正では、昔上げていた問題がかなり広い範囲で盛り込まれています(関連記事)。「2009年になった今にやる改正なのか? 本来は2000年前後でやっておくべきではなかったのか」とも思いますが、ともあれさまざまなことが合法になったのはいいことだと感じます。
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