富士フイルムの「FinePix F200EXR」の可能性
しかし、コナー氏は「プレンオプティクスを実現するためには、解像度の問題を避けて通れない」と語る。複数の画像を組み合わせると解像度が失われ、画質が落ちてしまうケースがある。
そんなコナー氏が興味を持ったカメラが、PIEでもプレゼンを行なっていた富士フイルムのコンパクトデジタルカメラ「FinePix F200EXR」(有効画素数1200万画素)だ。すでに発売されているコンパクトデジカメだが、「スーパーCCDハニカムEXR」という撮像素子を搭載した階調豊かなワイドダイナミックレンジや、ノイズの少ない高感度で簡単に撮影できる。
このカメラには、撮影した時に同時に高感度と低感度の2つの画像を作り、それらをうまく合成することでダイナミックレンジを拡大する機能が搭載された。ただし、「ダイナミックレンジ優先」時には、1200万画素相当での記録ができず、600万画素相当もしくは300万画素相当での記録になる。しかし、通常のL判などで印刷するにはまったく問題がないレベルだろう。コナー氏は「高画素をいくつかに分割して、異なる目的で入れるという進化の方向性が興味深い」と述べる。
これは複数のレンズではないが、プレンオプティクスが実現する世界と近いものがすでに実現されているわけだ。
より豊かな体験を切り取るデジタルイメージ
こういった複数のレンズを持つカメラが登場することで、切り取る世界が変わることをコナー氏は指摘する。
「デジタルフォトグラフの世界は今後はより具体的な個人の体験を切り取ることになる。フィルム時代の体験の切り取り方は一部分だけだった。すでにGPSの位置情報や、Exifなどのレンズの情報を取得しているが、デジタル時代にはもっと多くのメタデータを取り込むことができる」(コナー氏)
アドビはあくまでソフトウェアメーカーであり、カメラを作っているわけではない。プレンオプティクスが実現していく、デジタルデータにおける情報量の増加。またそれをユーザーが手軽に扱うためのツールとして、Photoshopが進化していく。「メタデータをどうやって管理し、どうやって表現するのかという方法が大切になる。そうすれば、より完全な体験をデジタルイメージで切り取り、他人と共有することができるだろう」とコナー氏は述べる。
今回のPIEの会場では、富士フイルムが世界初の3Dデジタルカメラを実現するための技術「FinePix Real 3D System」」を搭載したカメラを登場させた。これは2つのレンズで同時に撮影することで立体的に表現するカメラだ。
複数のレンズで立体を表現する。こういった複眼で被写体を狙うカメラが増えれば、ユーザーにとっても新しい撮影体験が可能となる。そんなときにいままでとまったく違う新しいデジタルイメージの世界が生まれてくる可能性がある。
まだ、28日、29日とPIEは開催されている。未来のデジタルイメージの萌芽を探しに行ってみるのもいいのではないだろうか。