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70万項目のテストを1日で完了!

GUI操作を自動化する魔法のソフト「InP」

2009年03月24日 09時30分更新

文● 大谷イビサ/ネットワークマガジン編集部

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品質向上テストから生まれた「InP」

 実はInPは、前述したSePの品質評価用ソフトウェアを外販したものだ。

 Windows上のあらゆる操作を記録、制御するという製品の性質上、SePでは膨大な項目のテストが必要になる。しかも多くはエンドユーザーが行なうGUI操作をシミュレーションしなければならない。同じコピーでもドラッグ&ドロップ、ドロップダウンメニューからの操作、キーボードショートカットなど複数の操作方法があるのが、GUI操作の特徴だ。こうした複数の操作方法まで含めると、SePでは全項目で70万の評価項目になるという。これを人間がすべてをテストすると、なんと2300人/1日という工数になる。これを解決したのが、InPである。ハミングヘッズはInPを開発して、テストをPCに行なわせることで、期間を大幅に短縮することに成功した。

 前氏は「400台のPCを使って作業を自動化することで、約4ヵ月かかっていた作業時間を22時間にまで短縮できました。年間で可能なテスト回数も2回から、350回にアップすることが可能になり、動作安定度の向上やOSのパッチ適用にも迅速に対応できるようになりました」と語る。ハミングヘッズ自体が長い時間をかけて運用してきた品質管理ソフトウェアなので、実績も十分だ。

人間らしい操作を確実に再現する工夫

 とはいえ、人間がやるような複雑な操作をきちんとこなせるか心配な部分もあるだろう。これに対しては、いくつかの工夫が盛り込まれている。

 1つ目は、画面の座標軸を用いて、操作を記録しているわけではなく、該当のオブジェクトに対して操作を行なっているという点だ。たとえばダイアログのボタンをマウスで押下するといった操作の場合、座標軸で操作を記録すると、座標がずれると適切なボタンを押せないことになる。しかし、「InPは対象となるボタンのオブジェクトに対して、クリック操作を行なうため、確実に想定した操作が行なえます」(前氏)。

「自動操作記録モード」の詳細設定。「操作内容を記録(ボタン)」がオブジェクトに対する操作

「自動操作記録モード」の詳細設定。「操作内容を記録(ボタン)」がオブジェクトに対する操作

 また、ボタンの押下やマウス操作も人間と同じようなタイミングを捉えて実行する。たとえば、メールをきちんと受信し終えてから、メールを開くといった一連の流れも、固定の待ち時間を登録するのでなく、InPが適切なステート(状態)を判断して、処理を実行する。そのため、警告のダイアログが出ても、「OK」ボタンを押して、その後にアプリケーションを起動するといった感じで、複数の処理を連続的に実行できるわけだ。

 さらに実行された処理はすべて記録され、CSV形式で保存される。想定した動作と実行結果の比較までファイルで出力してくれるので、操作が確実に行なわれたかも容易にチェックできる。

操作を記述したCSV形式のコマンドファイルを開いたところ。手作業で編集することもできる

操作を記述したCSV形式のコマンドファイルを開いたところ。手作業で編集することもできる

 InPはWindows 2000以降のOSであれば、ひと通り利用できる。とはいえ、コンピュータ処理の自動化が大きな目的で、同等製品が見あたらないだけに、利用範囲が広すぎるのも事実。前氏は「単なる品質評価テストにとどまらないので、導入企業でどのように使ってもらうかは、頭を悩ませています。課金に関しても、年間利用料をお支払いいただく形態になります」とのこと。とはいえ、ユニークな製品だけに、ユーザー事例ができたら、ぜひ見てみたいところだ。

 同社では品質評価センター(QEC)も公開しているので、気になるユーザーは見学するとよいだろう。

ハミングヘッズにある品質評価センター(QEC)

ハミングヘッズにある品質評価センター(QEC)

ハミングヘッズにある品質評価センター(QEC)

ネットワークマガジン2009年5月号掲載

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