賛成、反対陣営とは
ネットでの規制という意味では、青少年ネット規制法などを思い浮かべる読者もいるかもしれない。青少年ネット規正法の場合は、法案が成立したため、自民党の高市早苗衆議院議員や民主党の高井美穂衆議院議員など、登場人物が分かりやすかった。しかし今回は省令の公布という形を取っているので、登場人物の分かりにくさにつながっている。
賛成側の立場にあるのは、厚生労働省のほか、日本薬剤師会・日本チェーンドラッグストア協会などの薬業9団体、薬害オンブズパースン会議・全国薬害被害者団体連絡協議会・全国消費者団体連絡会などの14団体などだ。
ただし、桝添厚生労働省大臣は、世論に反対意見があることを受け、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の設置を検討し、場合によっては改正薬事法の再改正もあることを明言している。ある意味中立と言えるかも知れない。
一方反対しているのは、NPO法人日本オンラインドラッグ協会(JODA)、ケンコーコム、楽天、ヤフーなどのネット企業と、通信販売の比率が高くネット通販と同様に規制対象となる全国伝統薬連絡協議会、MIAU(インターネット先進ユーザーの会)という、ネット企業やネット関連団体らだ。
議論の焦点は
6月1日の施行を前に、ネット業界から日本オンラインドラッグ協会理事長の後藤玄利氏、楽天会長兼社長の三木谷浩史氏、慶応大学総合政策学部教授の国領二郎氏、全国伝統薬連絡協議会という4者を新たに加えて、「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会」が開かれている。今後の論点はどのようなものなのだろうか。
まずは2009年2月6日に厚生労働省が公布した「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」は、憲法違反ではないのかというのが、大きな論点の一つだ。
既に述べたように、改正薬事法にはネットを含む通信販売についての規定はない。省令は、憲法に定められた国民の権利を大幅に制限するもので、委任の範囲を超えており憲法違反の可能性があるというものだ。
そのほかにも、職業選択の自由を定めた憲法第22条1項からは営業の自由があると解釈されており、「これを剥奪するような規制は憲法違反の可能性がある」とか、「一律にネット販売を規制してしまうことは、ネット販売を必要としている人たちを危険にさらすことになり、憲法第25条に定められた生存権の保障をおびやかすもの」という指摘もされている。
また、省令で定めている「対面の原則」についても疑問視している。医薬品の対面販売が「安全な唯一絶対の策」とされているが、ネットを含む通信販売で、医薬品に関する情報の提供は本当に不可能なのかどうか、今後ネットを含む通信販売をすることに決まった場合、安全策にはどのようなものがあるのかということも論点となる。
このまま行けば、改正薬事法の施行時期が延びることはまずない。2009年6月1日には間違いなく、ネットを含めた通信販売で、医薬品の大半が購入できなくなってしまう。これが覆るかどうかは、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の決定にかかっている。
しかし、施行まで時間がなく6月までに何らかの結論が出るのは、事実上なさそうだ。決定が行われた場合でも、施行後に再改正という形を取ることになりそうだ。