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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第59回

終身雇用がクリエイターを滅ぼす

2009年03月18日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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誤報を生む民放の丸投げ制作体制

報道番組「真相報道バンキシャ!」のサイトで掲載された謝罪文。久保伸太郎社長が日テレ社長を辞任することになり、報道局長や報道局次長の処罰が発表された

 16日、日本テレビの「真相報道バンキシャ!」で虚偽証言の問題が発覚し、社長が辞任した。民放の番組は下請けに丸投げで、チェック体制がほとんどないので、こういう事件が起こっても不思議ではない。

 日本のメディアの質が低い原因として、よく電波利権や記者クラブなどの独占体質が批判されるが、問題はそればかりでもない。日本の終身雇用システムが、メディアのような専門的な職業には向いていないのだ。欧米では、記者やプロデューサーは一生その仕事をするのが当たり前で、一つの番組を同じプロデューサーが30年以上も担当することもある。これに対して民放のプロデューサーは、社内の調整が仕事の「何でも屋」だから、番組制作能力はほとんどない。

 日本のサラリーマンは、若いとき賃金以上に働いて会社に「貯金」し、管理職になってからその貯金を取り崩すしくみになっている。特にホワイトカラーは、40歳ぐらいで管理職になり、現場を離れる。これは製造業のようにブルーカラーが多く、ホワイトカラーの主な仕事がその管理である場合には合理的だ。平社員の時期は管理職になるための訓練なので、社内のいろいろな部署を回って人間関係を広げ、調整能力を養うことが重要だからである。

 しかしメディアのように専門性や創造性の必要な職種には、こういう昇進システムは向いていない。メディアにはブルーカラーは少ないので、キャリアの半分ぐらいで管理職になると、一般職と管理職の数がほとんど同じになり、意思決定が多重化して保守的になる。記者も、技能の高いベテランが現場を離れ、いろいろな記者クラブを転々とするので、専門知識が蓄積されない。

 特に50歳を過ぎると、役員になるような出世頭は忙しくなるが、それ以外の管理職は名目的なポストをあてがわれて窓際族になる。「チーフディレクター」などの専門職待遇のポストもあるが、数は少なく傍流だ。50代のノンワーキング・リッチは、年功賃金によって高い年収をもらうので生活は楽だが、彼らも「現場がいちばん楽しいよ」という。サラリーマンを企業に一生閉じ込める雇用慣行は、彼らにとっても幸福ではないのだ。

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