現在日本で利用することができるほとんどのケータイのブラウザには、アドビ システムズのFlash Liteが搭載されている。そのため、軽いデータ量でスムーズなグラフィックスやアニメーション、そしてまた親指だけで利用することができるゲームなど、インタラクティブなコンテンツを楽しむことができる。
2009年2月にスペイン・バルセロナで開催されたモバイル業界最大級のイベント、「Mobile World Congress 2009(以下、MWC2009)」において、アドビからFlashプラットホームの未来が示されたが、ケータイを含む端末のRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)の世界はどうなるのだろうか。
アドビ システムズのモバイル戦略を担当するアヌップ・ムラルカ氏に話を聞いた。
Open Screen Projectで広まるアドビの世界
Flashは現在、コンピューターから利用するウェブではデザインのツールとして、あるいはブラウザの中で使うアプリケーションを制作するツールとして、広く活用されている。YouTubeで動画が見られるのも、Flash Playerが入っているからだ。一方で先にも述べた通り、ケータイにはFlash Liteと呼ばれるモバイル向けFlash Playerが搭載されている。
そんなFlashプラットホームの現状の取り組みについて、ムラルカ氏に聴いた。
「ユーザーの変化に常にフォーカスしています。ユーザーとコンテンツ、そしてデジタル経験をどのようにインタラクティブに変えていくのか。その革新的な動き方は、デスクトップ(パソコン)の環境で実現してきました。これをモバイルその他に適用していくことが、Open Screen Project(以下、OSP)です」(ムラルカ氏)
OSPは、様々なデバイス上でのウェブブラウジングやスタンドアローンのRIAをワンソースで実現することを目指したプロジェクトで、Flash Playerのプロジェクトから昇華した存在と言える。全てのスクリーン、ディスプレイ上でコンテンツやアプリを配信するための、開発者やデザイナー向けの強力なエコシステムの構築を目指すものだ。
この背景にはFlash Playerでの経験が生きている。
「現在は、(Flash Playerのマルチプラットホーム対応によって)ウェブでコンテンツやデザインを発表することが非常に簡単になっています。この公開の容易さをモバイルやテレビで実現しようとしているのです」(ムラルカ氏)
2008年5月に発表したOSPについて、ムラルカ氏は「この9ヵ月で進捗を見た」と指摘する。例えばアドビは、OSPに対するコミットメントの体制も強化している。これまで分かれていたFlashのチーム、Adobe AIRのチーム、モバイル向けのチームを1つの部署に統合した。
また問い合わせは200社を超え、各社による対応も進んでいる。auのケータイでも採用しているプラットホームBREWへのFlashの組み込み、モバイル向けプロセッサである「ARM v6」、「ARM v7」への最適化、またCES 2009では、インテル、Broadcom、VIZIO、サムスンなどのテレビやセットトップボックス、Blu-rayプレイヤーなどへのFlash Playerの組み込みが発表されている。
OSPは、Flashをよりオープンに、そして多数のデバイスで活用するプラットホームへと昇華させるプロジェクトであり、特に組み込み機器への対応について注力していこうとする姿勢が見られる。

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