このページの本文へ

“MCPC award 2007”でいすゞ自動車がグランプリを受賞

2007年03月20日 23時10分更新

文● 編集部 若林健太

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は20日、携帯端末を利用した情報システムの優秀な事例を表彰する“MCPC Award 2007”の最終審査と表彰式を東京・虎ノ門の虎ノ門パストラルにおいて開催した。グランプリ(大賞)を受賞したのは、いすゞ自動車(株)の“みまもりくんオンラインサービス”。

グランプリ(大賞)を受賞したいすゞ自動車 執行役員 営業本部 国内事業本部 ソフトビジネス推進部 架装推進部執行担当の中川邦治氏
グランプリ(大賞)を受賞したいすゞ自動車 執行役員 営業本部 国内事業本部 ソフトビジネス推進部 架装推進部執行担当の中川邦治氏

MCPCは、携帯電話機やノートパソコンなどの携帯端末を用いた情報処理システム(モバイルコンピューティング)の発展と普及を目的として、通信事業者/ハードメーカー/ソフトメーカー/システムインテグレーターなどの企業によって設立された団体。“MCPC award 2007”は、MCPCが創設したアワードで、企業や自治体などが構築したモバイルコンピューティングのシステムを対象に、優秀な事例を表彰するものだ。応募作の中から審査委員会が書類審査によりグランプリ受賞候補作を“特別賞”および“奨励賞”とともに決定し、各社のプレゼンテーションによる最終審査によってグランプリを決定する。第5回目となる今回は、52事例の応募の中から、グランプリ受賞候補4事例、特別賞6事例、奨励賞13事例が1日に発表されていた。なお今回より“総務大臣賞”が設けられており、同賞はグランプリを受賞した企業/自治体に併せて贈られる。

MCPC会長の安田靖彦氏
MCPC会長の安田靖彦氏

「応募作は優れた内容のものばかり」

まずMCPC会長の安田靖彦(やすだ やすひこ)氏が挨拶を行ない、“MCPC Award 2007”の概要を説明した。安田氏は「今回応募していただいたシステムは、いずれもモバイルコンピューティングを効果的・効率的に活用し、業務の効率化、サービスの充実、売り上げの拡大、経費の削減、新技術の適用などを行なったもので、内容的に優れたものばかりだった」と語った。

続いてグランプリ受賞候補の4社がそれぞれのシステムについてプレゼンテーションを行なった。

みまもりくんオンラインサービス”のプレゼンテーションを行なったいすゞ自動車 ソフトビジネス推進部 テレマティクス推進グループ グループリーダーの前園 昇(まえその のぼる)氏 “みまもりくんオンラインサービス”の概要
みまもりくんオンラインサービス”のプレゼンテーションを行なったいすゞ自動車 ソフトビジネス推進部 テレマティクス推進グループ グループリーダーの前園 昇(まえその のぼる)氏“みまもりくんオンラインサービス”の概要

いすゞ自動車の“みまもりくんオンラインサービス”は、運行しているトラックの車両制御コンピューターが記録したアクセル/ブレーキ/エンジンの利用状況をインターネットを通じてリアルタイムにサーバーに送信するASPサービス。これにより、ドライバーの上司などがリアルタイムで各トラックの運行状況や、部品の交換時期などを確認できる。ドライバーが事故と思われるような急減速を行なったときにそれを上司などに電子メールで自動的に報告する機能や、居眠り運転の直前に見られる運転のふらつきを感知し、ドライバーに警報で警告する機能も備えている。またブレーキやアクセル、エンジンの使い方を把握できるため、省エネ運転を行なうにはドライバーがどう運転を変えたら良いかの指導も簡単に行なえる。

“節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム”のプレゼンテーションを行った(株)ナリキ 専務取締役の成伯将史(なりき まさし)氏(左)と管理技術部 係長の上田 進(うえだ すすむ)氏 “節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム”の仕組み
“節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム”のプレゼンテーションを行った(株)ナリキ 専務取締役の成伯将史(なりき まさし)氏(左)と管理技術部 係長の上田 進(うえだ すすむ)氏“節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム”の仕組み

(株)ナリキの“節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム”は、豪雪地帯に設置されている地下水を利用した散水型消雪装置をプッシュ型メールサーバーを利用して遠隔地から管理/操作を行なうもの。これにより従来自動化されていた消雪装置の誤動作を減らし、地下水の無駄遣いを抑えられるという。

“日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム”について説明した日本テレビ放送網 メディア戦略局モバイル事業部(兼)経営計画室IR部の佐野 徹(さの とおる)氏 “日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム”の利用例
“日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム”について説明した日本テレビ放送網 メディア戦略局モバイル事業部(兼)経営計画室IR部の佐野 徹(さの とおる)氏“日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム”の利用例

日本テレビ放送網(株)の“日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム”は、ワンセグ放送とインターネットによる情報を1画面に同時に表示するもの。これにより、TVの野球中継を見ながら選手のデータベースを検索したり、ニュース番組で動画と同時に静止画やテキストを表示したりできる。

お詫びと訂正:初出時、日本テレビ放送網および日本緊急通報サービスの発表者とプレゼンテーションの写真が間違っておりました。お詫びするとともに訂正いたします(2007年3月22日)
“HELPNET”のプレゼンテーションを行なった日本緊急通報サービス 常務取締役の落合秀広(おちあい ひでひろ)氏 “HELPNET”の仕組み
“HELPNET”のプレゼンテーションを行なった日本緊急通報サービス 常務取締役の落合秀広(おちあい ひでひろ)氏“HELPNET”の仕組み

(株)日本緊急通報サービスの“HELPNET(ヘルプネット)”は、事故などが起きたとき、車載端末や携帯電話機から同社のオペレーションセンターに通報や連絡が行なえるサービス。オペレーションセンターではGPSによりユーザーの位置情報をリアルタイムで確認しており、警察や病院などの出動が必要な場合は、オペレーションセンターがユーザーに代わって出動要請を行なう。そのためユーザー自身が通報を行なえないような状況にあるときに有効なほか、事故などでショックを受けているユーザー自身よりも冷静で正確な通報が行なえるとしている。車載端末は、エアバッグが開いたときに自動的に作動する機能なども備えている。

お詫びと訂正:初出時において、前園 昇(まえその のぼる)氏を前園 昇(まえぞの のぼる)氏、ナリキ 専務取締役の成伯将史(なりき まさし)氏をナリキ 代表取締役社長の成伯 武(なりき たけし)氏、落合秀広氏を落合秀弘氏としておりました。お詫びするとともに訂正いたします(2007年4月9日)

「このシステムが環境や安全にもつながっていく」

グランプリ(大賞)および総務大臣賞を受賞したいすゞ自動車 執行役員 営業本部 国内事業本部 ソフトビジネス推進部 架装推進部執行担当の中川邦治(なかがわ くにはる)氏は、「モバイル・コンピューティングとトラック輸送を融合させるということでKDDIさんとやってきた。今後も同システムなどでお客様の輸送を支えて行きたい。またそれが環境や効率輸送、安全や経済発展にもつながっていくと確信している」と受賞の喜びを語った。

MCPC 普及促進委員長の武藤 肇氏
MCPC 普及促進委員長の武藤 肇氏

グランプリ決定の決め手はビジネスとして確立されているか

続いてMCPC 普及促進委員長の武藤 肇(むとう はじめ)氏が“MCPC award 2007”の総評について語った。武藤氏はグランプリを決めた審査について、「今年はレベルが非常に高く、4作のどれをグランプリにするかの審査は非常に難航した。それは、社会性・グローバル性・技術のどれをとってもモバイルコンピューティングがインフラとして社会に根付いてきたということの裏返しだと思っている」とした。その上で、いすゞ自動車の“みまもりくんオンラインサービス”のグランプリ受賞理由について「ここまで環境・コスト面・業績のすべてにつながる全体的なシステムを作り上げたところはなかった。今までモバイルコンピューティングでやろうとしていたことができなかったが、いすゞ自動車はそれを実現した」とした。

またモバイル・テクノロジー賞を受賞した日本テレビ放送網の“日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム”について、「最後までいすゞ自動車とどちらを大賞にするか、議論がまっぷたつに分かれた。ワンセグ自体は標準化された技術だが、それをモバイルコンピューティングと融合させた点が高く評価された。ただ日本テレビの場合、ビジネスとして活用していくのはこれからだということなので、今回は次点となった」と述べた。日本緊急通報サービスの“HELPNET”とナリキの“節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム”については、「両社とも社会的な意義が高いシステムを構築している。これからもっと発展させ、モバイルコンピューティングを社会のインフラとして活用してほしい」と語った。

各賞を受賞した企業/団体/自治体は以下のとおり。

グランプリ(大賞)・総務大臣賞・モバイルテクノロジー賞・
モバイルビジネス賞・モバイルコンシューマー賞

賞名 会社名 サービス名
グランプリ(大賞)・総務大臣賞・モバイルビジネス賞 いすゞ自動車 みまもりくんオンラインサービス
モバイルテクノロジー賞 日本テレビ放送網 日テレワンセグ 放送×通信 高機能連携システム
モバイルコンシューマー賞 日本緊急通報サービス 緊急通報サービス“HELPNET(ヘルプネット)”
モバイル中小企業賞 ナリキ 節水対応型消雪装置遠隔集中操作監視システム

特別賞

会社名 サービス名
(株)アイ・シー・アール 調査報告システム
(株)入船 飲食チェーン店用リアルタイムPOO(受注点管理)システム
日本コムシス(株) モバイルオフィスワークスタイル
ハイデルベルグ・ジャパン(株) ハイデルベルグ・モバイルサービス
NPO法人ものづくり品川宿 近隣セキュリティシステム
ヤマト運輸(株) 次世代携帯電話NEKOシステム

奨励賞

会社名 サービス名
青森市、NPO法人青森ITSクラブ 除排雪車両運行管理システム
アスクル(株) 配送サービスシステム“シンクロカーゴ(SYNCHROCARGO)”
関東自動車(株) FOMAテレビ電話アルコールチェックシステム
(株)近畿大阪銀行 モバイル渉外支援システム“eビジット”
大新東(株) 大新東勤怠管理アプリ
東北電力(株) 被害状況画像伝送システム
(社)徳島県環境技術センター GPS携帯を利用した検査データ処理システム
内藤証券(株) Touchトレード-Anyone Anywhere Anytime-
(株)日本航空インターナショナル 空港地上作業工程管理システム
(株)はとバス au携帯電話を活用したモバイル業務用アルコール測定システム“ALC-Mobile(エイ・エル・シーモバイル)”の導入
(株)フジテレビジョン “恋するフットサル”ワンセグ放送を活用した視聴ポイント蓄積システム
北陸電話工事(株) オンライン生産システム(すぐる君)
本田技研工業(株) Hondaカーナビゲーションシステム“インターナビ”向け通信定額サービス

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン