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【2007 CES Vol.12】大画面化は一段落?――高画質化やHDMIリンクが主流の大画面薄型TV

2007年01月11日 02時10分更新

文● 編集部 小西利明

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今回のCESで最も大きなTVがコレ。シャープの108インチワイドサイズの液晶TV。右の女性と比べていただきたい
今回のCESで最も大きなTVがコレ。シャープの108インチワイドサイズの液晶TV。右の女性と比べていただきたい

“2007 International CES”の主役の1人が、デジタル放送対応の薄型大画面TV(以下FPD TV)である。特に近年のCESでは、韓国勢を中心とする熾烈な“世界一でかいぞ競争”がホットな話題の1つだった。しかし今年のCESでは大画面化は話題の中心ではなくなっており、各社横並びで映像処理回路による高画質化機能や、HDMI経由でのAV機器操作などを搭載した製品を出展していた。

大画面競争はシャープの108インチが最大

CESの恒例行事化していたFPD TVの大画面化競争だが、2006年に松下電器産業(株)(以下パナソニック)が103インチのプラズマTVを発表したことで、競争も終了したという感がある。特に例年熾烈な争いを繰り広げていた、FPD TV最大手の韓国サムソン電子社と、同社を追う韓国LG電子社は顕著で、出展していた最大サイズのFPD TVは両社とも102インチサイズの液晶TVどまり。大画面化競争はすっかり熱が冷めてしまった、という雰囲気が漂っていた。もちろん商品として成立しないような大画面化には意味がないわけで、その上限が100インチを超える程度のサイズということだろうか。

そんな今年のCESで“世界一大きな”TVの栄冠を勝ち取ったのは、シャープ(株)の108インチサイズの液晶TV“AQUOS”。会場ではTVの横に女性を立たせた展示を行ない、多くの来場者が足を止めて見入っていた。

かつてはサムソンと熾烈な“でかいぞ競争”を繰り広げたLG電子だが、今年の最大は102インチ液晶TV。世界一競争はもう終わり?
かつてはサムソンと熾烈な“でかいぞ競争”を繰り広げたLG電子だが、今年の最大は102インチ液晶TV。世界一競争はもう終わり?

プラズマTV系では、昨年に引き続いてパナソニックの103インチが最大。パナソニックブースでは、入口に6枚の103インチプラズマTVを組み合わせた大がかりな展示を行ない、大画面と画質をアピールしていた。高解像度が課題とされていたプラズマTVも、50インチ以上ではパナソニックや(株)日立製作所、LG電子などがフルHD解像度の製品を出品。50インチ以上の製品ではプラズマもフルHDが当たり前になりそうだ。両社は42インチサイズのフルHDプラズマTVの参考出品も行なっている。

パナソニックブースの入口では、6枚の103インチプラズマTVを組み合わせた展示を披露。中央の2枚は能の映像に合わせて上下に動いたり回転したりする凝り様 42インチサイズのフルHD対応プラズマTVの参考出品も展示。すぐにでも商品化できそうなレベルだ
パナソニックブースの入口では、6枚の103インチプラズマTVを組み合わせた展示を披露。中央の2枚は能の映像に合わせて上下に動いたり回転したりする凝り様42インチサイズのフルHD対応プラズマTVの参考出品も展示。すぐにでも商品化できそうなレベルだ
LG電子ブースにあった、木製フレームのプラズマTV! フレームが木という以外はごく普通の60インチプラズマTVだが、多くの来場者が足を止めていた
LG電子ブースにあった、木製フレームのプラズマTV! フレームが木という以外はごく普通の60インチプラズマTVだが、多くの来場者が足を止めていた

高画質化機能がトレンドに、しかし目新しいものはなく

FPD TVの分野における今回のトレンドは、“高度な高画質化機能の一般化”にあった。特に液晶TVの映像表示品質を高める機能に関しては、日本メーカーが熾烈な技術開発競争を繰り広げてきた。日本市場での中~上位クラスの製品では、演算能力の高い映像処理プロセッサーと豊富なメモリーを組み合わせて実現する高画質化機能を搭載するのが当たり前という状況になりつつある。

それが今年のCESでは、以前からこの分野に注力していた日本メーカーだけでなく、サムソンとLGの2大企業も上位の製品にこうした高画質化機能を盛り込んできた。そのため一気に“上位機種に高画質化機能がつくのは当たり前”という状況が生まれている。製品価格を重視して、高コストな高画質化機能には冷ややかだった韓国メーカーでも搭載するほどに、高画質化機能の実現に必要な部材のコストが下がったとも言えそうだ。

シャープ(左)とLG電子ブースにあった、120フレーム化による動画ブレ軽減のデモ展示。高級機では一気に当たり前の機能になってしまい、もはやこれくらいでは差別化にならない シャープ(左)とLG電子ブースにあった、120フレーム化による動画ブレ軽減のデモ展示。高級機では一気に当たり前の機能になってしまい、もはやこれくらいでは差別化にならない
シャープ(左)とLG電子ブースにあった、120フレーム化による動画ブレ軽減のデモ展示。高級機では一気に当たり前の機能になってしまい、もはやこれくらいでは差別化にならない

しかし高画質化機能の搭載自体が当たり前になってきたうえ、搭載する機能も各社似たり寄ったりであるため、むしろ高画質化機能による差別がかえって難しい状況になってしまったという面もある。特に流行の機能と言えるのが、液晶TVの動画表示のブレを軽減するリフレッシュレートの倍増化(※1)などは、各社横並びで搭載してきているといった状況だ。RGB各8bitの映像ソースを、映像処理プロセッサーで多bit化し、8bit表現では埋もれてしまう微妙な階調表現を再現する技術も、数社が製品に投入してきている。これらの技術はすでに日本市場で発売済みの製品に搭載されているものばかりなので、新鮮な驚きはまったくない。

※1 毎秒60フレームの映像を、120フレームに倍増。さらに黒フレーム挿入なども組み合わせて残像感を減らす

いずれにせよ、こうした高画質化機能が一般的なものになりつつある状況は、画質で差異を打ち出しにくくなっているわけであり、シェアで大きく先行する韓国勢を追い上げる立場の日本メーカーにとっては、苦しい状況にあると言えそうだ。

HDMI経由でのAV機器操作も広がる

高画質化機能の一般化と並んで、FPD TVのトレンドと言えるのが“HDMI経由でのAV機器操作”機能である。

LG電子では“SIMPLINK”の名称でHDMI経由での機器制御機能を披露。AVアンプの操作などを想定している
LG電子では“SIMPLINK”の名称でHDMI経由での機器制御機能を披露。AVアンプの操作などを想定している

日本ではパナソニックのTVやHDDレコーダーで搭載された“VIERA Link”が先鞭を付けた機能で、シャープも同様の機能を搭載した製品を投入している。CESでは先行2社以外にも、東芝やLG電子などが同種の機能を搭載したFPD TVを発表。TVに接続されたサラウンドAVアンプなどを、TVのリモコンで電源オン/オフできる点を魅力としてアピールしていた。

パナソニックの“VIERA Link”は、米国では“EZ Sync”の名称で登場。同じような機能で各社名前が異なるので、分かりにくいことこのうえない
パナソニックの“VIERA Link”は、米国では“EZ Sync”の名称で登場。同じような機能で各社名前が異なるので、分かりにくいことこのうえない

米国ではTVやAV機器を1つのリモコンで操作するプログラマブルリモコンが広く普及しているという。HDMI経由での機器操作はこれに変わるものとして期待されている面があるようだ。しかし最大のネックは、各社間で操作の互換性が保証されないこと。技術的にはいずれもHDMI 1.2aの機器制御用プロトコル“CEC”(Consumer Electronics Control)をベースにしたものだが、各社とも自社の製品同士の組み合わせのみを動作保証している状況で、異なるメーカーの製品を組み合わせて動作するのか、障害は起こらないのかは分からない。機能の名称も各社まちまちなので、むしろ消費者に混乱を招くのではないだろうか。互換性検証/保証の仕組みを早期に確立してもらいたい。

ソニーは有機ELディスプレーTVを参考出品

大画面ではないが、TVサイズを実現したソニーの有機ELディスプレーTVが話題を呼んだ。発色やコントラストは素晴らしい

大画面FPD TVではないが、ソニー(株)は自社ブースにて、有機ELディスプレーを使った超薄型FPD TVを参考出品して話題を呼んでいる。

27インチのフルHD解像度対応品と、11インチワイドSVGA(1024×600ドット)の2品を出展。従来大画面化が困難で、PDAサイズのディスプレーくらいにしか使われていなかった有機ELディスプレーが、ついにTVとして実用的なサイズの製品に搭載可能になった点は大きい。

コントラスト比“100万対1”、NTSCの色空間を100%満たすというその画質は、TVとしては小型の11インチクラスでも、際立って優れたものとなっている。また有機ELディスプレーの特徴であるディスプレー部分の薄さも特筆すべき点で、27インチでも最薄部で10mm以下、11インチは3mm以下という薄さだ。

11インチタイプの側面。ディスプレー部分の厚さは最薄部3mm以下。とてもTVには見えない
11インチタイプの側面。ディスプレー部分の厚さは最薄部3mm以下。とてもTVには見えない

いずれもただちに製品化されるものではないし、製品化のためにはさらなるコストダウンもかかせない。TVだけでなく、12~17インチ級のノートパソコン用ディスプレーへの応用も考えられる。今後の展開に期待したい。

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