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PLCアダプター BL-PA100KT

PLCアダプター BL-PA100KT

2006年12月20日 10時25分更新

文● 池田 圭一

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メーカーや業界は積極推進するが……
競合に勝つには足りないものも

 高速PLCのライバルと目されるのは無線LANだ。今回のPLC試用時も、同じ環境の無線LANで同様の転送テストを行ったが、10Mbps~20Mbpsで安定して通信ができており、速度だけを見るなら無線LANに軍配が上がる。両者を使い分ける場合、PLCは家屋内でも無線LANの電波が届きにくい場所に設置することになるだろうが、今度は家屋内の家電製品の影響を受けてしまう。

 高速PLCの問題はそれだけではない。本来、通信用に設計されていない電力線に高周波を流すと、電線がアンテナとなって電波(短波)を出してしまうのだ。

 BL-PA100では、アマチュア無線や短波ラジオ(の一部)が利用する周波数帯の信号を弱くすることで、ほかの電波利用システムへの影響を押さえている。しかし、そのほかの短波無線システムや精密電子機器、医療機器などへの影響を懸念する声もある。また、宇宙からの微弱な電波を観測する電波天文学への深刻な影響も心配されている。12月7日には、これら悪影響を懸念する任意団体が“高速PLC機器の認可取り消し・差し止め”を求める行政訴訟を提訴した。

 そのほかにも接続互換性の問題が残っている。現在、高速PLCに関しては複数の業界団体があり、規格についても下記に示すように3種類がある。BL-PA100が採用する“HD-PLC方式”では、(株)アイ・オー・データ機器からも製品が出ており、一般消費者向け高速PLC製品としては先行して市場に出てきたのだが、企業などへの大量導入では、“UPA方式”や“HomePlug方式”が主流になるとの見方もある。同一の電力線経路に複数のPLC規格が混在すると、おそらくはどちらも通信できなくなる。電力線を共有する集合住宅や、企業が入るビルなどでの利用は難しいと思われる(例えば、KDDIは集合住宅向けには無線LAN、戸建て住宅にはPLCを勧めている)。

高速PLCの主な規格と、推進する業界団体

HD-PLC方式
CEPCA (Consumer Electronics Powerline Communication Alliance)
HomePlug方式
HomePlug Powerline Alliance
UPA方式
UPA (Universal Powerline Association)

 現行の高速PLCは、さまざまな問題を抱えた微妙な通信システムである。そのことはBL-PA100の商品案内サイトにもある“使用上の注意”を見てもうかがえる。使い勝手のよい新しい通信システムだけに期待も大きいのだが、現実には解決すべき問題が多すぎるのも事実。今後も普及には困難がつきまといそうだ。

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