次世代無線LAN規格“IEEE 802.11n”は、データの送受信を複数アンテナで並行して行なうMIMO(Multi Input Multi Output)などの高速化技術を採用することで現行のIEEE 802.11a/gよりも高い実効スループットを実現する。この新規格は2007年前半にリリースされると言われるインテルのノートパソコン向け新プラットフォーム(コードネーム:Santa Rosa)にも含まれるので、2007年以降は急速に普及するのは間違いないだろう。
IEEE 802.11nドラフト版無線LANブロードバンドルーターと、CardBus対応無線LANアダプターのセット、コレガ「CG-WLBARGE」。単体販売も12月中旬から行なわれる予定。 |
そのため、これから購入する無線LAN付きブロードバンドルーターやアクセスポイントは“IEEE 802.11n対応”かどうかがかなり重要なポイントとなっている。IEEE 802.11nの正式認定は2007年の予定だが、既にドラフト1.0版を元にした製品がいくつか登場している。今回紹介するコレガの無線ブロードバンドルータ「CG-WLBARGE-P」もその製品群の1つで、ブロードバンドルーターの「CG-WLBARGE」とPCカード無線LANアダプターの「CG-WLCB144GE」がセットになっている。
3本のアンテナは背面にほぼ等間隔で配置されている。有線LANは4ポート。ルータモードとアクセスポイントモードを切り替えるスイッチもある。 | 付属の子機はCardBus専用のTypeII PCカード。アンテナ部の厚みがカード部と同じフラットな構造なので、持ち運び時も邪魔ではない。 |
IEEE 802.11nのMIMOを簡単に説明すると、アンテナを複数立てて分割送信することで速くしようというものだ。送受信アンテナが各2本なら2分割の“2ストリーム”、各3本なら“3ストリーム”というように、アンテナの分だけ分割送信が行なわれる。1ストリームあたりの通信速度(理論値)はIEEE 802.11gと同じ54Mbpsなので、2本でも理論値は100Mbpsを超えることになる。もちろん実効速度はこれよりも落ちるわけだが、現状の1ストリームと比べて2~3倍の速度になるわけで、有線LANの速度にかなり近づくと言えるだろう。また、いずれかのストリームで通信が切れても、残りのストリームで送受信が続行されるので切断障害に強いというメリットも持つ。
黒を基調とした落ち着いたカラーリングで、LED表示は小さめ。横置きを前提としたデザインだが、付属スタンドで縦置きも可能だ。 |
本機の無線LANチップセットは、米アセロス・コミュニケーションズ社の「AR5416」(MAC/ベースバンド部分)とAR2133(RF部分)の2チップ構成だ。アンテナはルーター、PCカードアダプターともに3本を装備し(PCカードは送信時2本)、双方向で2ストリームでのデータ転送を行なうため、実効転送レートは同社公称値で約85.4Mbpsと高速だ。さらに同チップセットに内蔵されたXSPAN技術を用いて、余ったアンテナで2ストリームの合成データを転送することで電波信号の乱れを補正し、障害物にも強いより安定した通信を可能にしている。
コレガのテストでは屋外で300m離れた場所からでも約8.3Mbpsで接続できたというデータが掲載されており、玄関にルータ部分を設置したり広大なオフィスで利用したりする際に安定した接続が期待できる。
付属品一覧。電源はACアダプター経由で供給し、WAN/LAN用のケーブルが1本用意される。アンテナは着脱タイプで3本が付属する。 |
今回実機を借用できたので、実際の転送速度を計測するため、認証方式に“WPA2-PSK”、暗号方式に“AES”を用いた場合と、オープンシステムを想定して暗号なしの2パターンのテストを実施してみた。テスト環境は最も利用ケースが多いと思われるWindowsファイル共有を用いて、無線LANカードを挿したパソコンに約230MBのMPEGファイルのコピーする時間を計測している。
テストした組み合わせ | 実測値 |
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IEEE 802.11nドラフト版同士(暗号オフ) | 86秒 |
IEEE 802.11nドラフト版同士(暗号オン) | 96秒 |
IEEE 802.11nドラフト版→11g(暗号オン) | 138秒 |
テスト結果は11gと組み合わせた場合の2倍まではいかないものの、かなりのスピードアップ(約1.4倍)になっているのが分かる。暗号オンにすると若干転送レートが下がるので(約10%減)、少しでも速度が欲しいなら、多少セキュリティーは落ちるが暗号化をオフにして、MACアドレスフィルタリング(接続可能なネットワーク機器をMACアドレスで制限する)を活用するなどすれば速さとセキュリティーを両立できるだろう。
ルーターの設定は一般的なウェブブラウザーで行なうタイプ。IEEE 802.11nドラフト版で使用する際にも特別な設定は必要なく、通常通りに認証や暗号方式を選べばいい。 | 無線LANカード付属の無線LANユーティリティー。カードを挿すと自動的に起動し、アクセスポイントの検索や接続時の設定変更、電波状態の確認ができる。 |
ブロードバンドルーターの設定はウェブブラウザーから行なう。インターネットの初心者向けにウィザード形式の設定メニューが用意されているほか、バーチャルサーバーやIPv6ブリッジなどの機能も備え、一般的なホームユースには機能的にも十分だ。すでにブロードバンドルーターを利用していて無線LANアクセスポイント付きハブとしても利用する場合も、背面のスイッチで切り替えるという簡単な仕組み。本体のIPアドレスやウェブ設定画面へのログイン方法は本体底面にプリントされており、いざという時にマニュアルが見あたらなくても困らない工夫がされているのはありがたい。
付属CD-ROMを挿入すると、オートランでFlashを用いたグラフィカルなメニューが起動する。ここから初心者向けのセットアップが行なえる。 |
価格は3万3390円。すでに低価格化が進みきったIEEE 802.11a/b/g対応の無線LANルーター&PCカードセットと比較すると割高感は否めないが、IEEE 802.11nは今後の普及していくのが間違いない規格であり、ドラフト版とはいえ現時点で導入しても価格に見合ったメリット(高速無線LAN構築)は十分得られる。高速かつ障害物越しでも切断しにくい快適な無線LANを実現してくれて、将来性もある製品である。
CG-WLBARGEの主なスペック | |
製品名 | CG-WLBARGE |
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製品種類 | 無線LANブロードバンドルーター |
無線LAN規格 | IEEE 802.11nドラフト版、IEEE 802.11b/g |
有線LAN規格 | WAN側:10/100BASE-TX(Auto MDI-X対応)×1 LAN側:10/100BASE-TX(Auto MDI-X対応)×4 |
独自機能 | Atheros XSPAN対応(IEEE 802.11nドラフト版を実現するAtheros独自機能) |
セキュリティー | WEP 64/128/152bit、WPA-PSK(TKIP/AES) |
アンテナ | ダイポールアンテナ3本(送信時3本、受信時3本使用) |
電源 | ACアダプター(付属) |
消費電力 | 約13.1W(最大) |
本体サイズ | 200(W)×119(D)×34(H)mm |
重さ | 約360g |
CG-WLCB144GEの主なスペック | |
製品名 | CG-WLCB144GE |
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製品種類 | 無線LAN PCカードアダプター(CardBus対応) |
無線LAN規格 | IEEE 802.11nドラフト版、IEEE 802.11b/g |
独自機能 | Atheros XSPAN対応(IEEE 802.11nドラフト版を実現するAtheros独自機能) |
セキュリティー | WEP 64/128/152bit、WPA-PSK(TKIP/AES) |
アンテナ | 内蔵(受信時3本、送信時2本使用) |
消費電力 | 約2.74W(最大) |
本体サイズ | 54(W)×5(D)×121(H)mm |
重さ | 約44g |
対応OS | Windows XP(SP2含む)、Windows 2000 Professional |