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富士通、HD映像をH.264でリアルタイムに圧縮できるLSIを開発

2006年11月30日 21時58分更新

文● 編集部 橋本 優

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富士通(株)は30日、HD映像をBlu-rayなどで採用されている映像圧縮方式である“H.264”形式で、リアルタイムに圧縮/復元できる映像処理LSI『MB86H50』を開発したと発表した。販売は2007年3月からで、サンプル価格は1万5000円となっている。

『MB86H50』
『MB86H50』

このLSIを使うことで、1440×1080ドットのHD映像を、H.264のHD映像向けプロファイルである“High Profile(Level 4.0)”に準拠した形でリアルタイムに圧縮でき、同時に音声は米Dolby Laboratories社の“AC-3”で圧縮できる。これら一連の処理を1チップで実現できたのは業界初だという。LSIのサイズは150mm四方で、パッケージはFBGA(650ピン)。

新LSIは低消費電力であることが特徴。従来の技術をそのまま利用してH.264 High Profileで圧縮しようとすると、MPEG-2と比較して約10倍の処理量が必要になり、それだけ電力も消費する。しかし新しいLSIは同社が独自開発した技術により600mWという消費電力を実現しており、これは現行のMPEG-2エンコーダチップに匹敵するものだとした。

動き検索アルゴリズムの説明図
動き検索アルゴリズムの説明図

低消費電力を実現した仕組みとしては、動画の前の画面と現在の画面を比較して、動いている部分を検出する“動き検索アルゴリズム”を見直したことを挙げた。従来(MPEG-2など)は前の画面の広い範囲で動き検索を実施していたが、新LSIではまず前の画面を縮小し、大雑把に動いている部分を検出。その後、縮小した画面をやや拡大しさらに詳しく動いてる部分を検出する。これを何度か繰り返すことで動きを検出する。広い画面を隅々まで検索する前者に比べ、効率的に検索が可能な後者のほうが処理量が少なく、消費電力も抑えられたという。

MB86H50のブロック図
MB86H50のブロック図

さらに256MBのバッファー用メモリーを内蔵することで、外部にメモリー用インターフェースを用意せずに済み、その結果さらなる低消費電力を実現できたとした。

高画質化制御技術の仕組み
高画質化制御技術の仕組み

圧縮した映像が高画質なのも特徴の1つ。顔やゆっくり動く物体など、画質劣化が見えやすい絵柄の箇所について、圧縮率を一定かつ低く抑えて圧縮する。この結果、見た目の画質が大幅に改善するという。

会場のデモの様子
会場のデモの様子。左がMPEG-2で右がH.264。ともにIP映像伝送装置を利用してリアルタイム伝送している

(株)富士通研究所(神奈川県川崎市)で同日開催された発表会では、実際に今回のLSIで圧縮したビットレート8Mbpsの映像と、ビットレート20Mbpsで圧縮したMPEG-2の映像を同時に流すというデモを行なっていたが、見た感じ前者のほうがシャープな印象だった。さらに新LSIが搭載されたIP映像伝送装置『IP-9500』(12月発売、360万円)も紹介され、デモに利用されていた。

『IP-9500』
『IP-9500』

今後はフルHD(1920×1080ドット)への対応や、H.264とMPEG-2といった異なる形式の映像の同時デコードを実現するLSIの開発など行なっていきたいとした。

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