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【INTERVIEW】まずは「絵を出す」という作業が大変なんです――K10Dの開発者に聞く(前編)

2006年12月04日 23時27分更新

文● 聞き手 小林 伸/撮影 岡田清孝

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[――] CCDからデータの読み出しは2チャンネルですが、そこが連写速度のボトルネックになっていたりしませんか?
PRIME
新開発映像処理エンジンの“PRIME”。デジタル処理における強化ポイントのひとつ
[堀田] 公称値の毎秒3コマをクリアするためには充分です。バックエンドに関して言えば、バス制御などは余裕をもって設計してあるので、これより速い撮像素子にも対応できます。後段処理に関しては最高速度で動作させているので、今以上のセンサーを使用した場合でも、かなりいいパフォーマンスを出せるはずです。
[――] そう聞くとなおさら、CCDからの信号をより高速に取り出せる“4チャンネル読み出し”に対応すべきだったのではないかと感じるのですが……。2チャンネルでは毎秒3コマ程度が限界だと聞いたことがあります。
[堀田] 確かに、2チャンネルで取り込める最大フレームレートは決まっていますので、それ以上の高速性を求めれば、撮像素子がボトルネックになります。しかし、2チャンネル読み出しには4チャンネル読み出しにはないメリットもあります。ひとつはフロントエンドが2つなので、消費電力の削減が可能になる点です。もうひとつは、解像力を高めやすいということです。


ベイヤー配列
ベイヤー方式のフィルター配列。緑の画素数が2倍になっているのは、人間の目が緑に敏感なため
[――] もう少し具体的に教えていただけますか?
[堀田] ご存じのように、単板型のCCDでは、ベイヤー方式のフィルター配列(赤と緑、緑と青のフィルターが交互に並んだ配列)が採用されています。この情報を4チャンネルで読み出そうとすると、赤(R)、緑(Gr、Gb)、青(B)の情報が、それぞれ別々のチャンネルに分かれて読み込まれる形になります。このとき問題になるのがGr(赤の列にある緑フィルター)とGb(青色の列にある緑フィルター)の誤差です。

4チャンネルでは、それぞれが異なる経路で読み込まれるため、経路の違いによる誤差が生じてしまいます。後段の処理でその誤差を調整しなければならないのですが、この修正が上手くいかないと、解像力を下げなければならなくなったり、縞のようなノイズが発生するといった問題が生じます。一方、2チャンネルの読み出しであれば、片側のチャンネルでRとB、もう一方のチャンネルでGrとGbの信号を読み出すことになるため、GrとGbの信号をハード的に等価に扱えます。スピードだけを求めるのであれば、4チャンネルでもいいのですが、画質も含めた全体的なパフォーマンスの見地からすると、2チャンネルがベストではないかと個人的には考えています。
[――] 今回画像処理エンジンに“PRIME”と名前が付いていますね
[畳家] まったく新しいシステムを開発したので全体のパフォーマンスが向上しました。その中でもキーになっている部分は俗に“画像処理エンジン”と言われている部分です。その部分が新しくなり高いパフォーマンスを発揮しているので、この部分をユーザーにアピールしたいと考え、当社として初めて画像処理エンジンに名前をつけました。当然画像処理エンジンだけでなくA/D変換、DDR2などシステム全体のスペックアップもアピールしています。


DDR2メモリー
高速化のひとつの要因になっているDDR2メモリー。圧倒的なバス速度が採用の理由だという
[――] メモリーにDDR2を採用した理由とは?
[堀田] 圧倒的なバス帯域の広さです。1000万画素の画像を連写することを見込んだとき、従来のメモリー帯域ではストレスのない連写は成り立たちません。これをクリアするためにどの程度の帯域が必要か計算したとき、DDR2が現状で最適だったのです。市場的にも価格がこなれてきており、品質が向上してきたことも理由のひとつです。
[――] バススピードが上がったということですが、それ以外の回路、例えばメインCPUのクロックなども上がっているのでしょうか?
[堀田] 連写関係のスピードアップを目指してDDR2を使用していますが、メディア書き込みのデータバス帯域も従来より上げてあります。
[――] 何倍程度の数字になっているのでしょうか?
[堀田] 従来の2倍以上の数値となっています。書き込みも2倍以上です。ただメディアへの書き込みに関しては当然カード自体の性能にも依存してしまいます。データバスの帯域はそのぐらいは確保したとお考えください。




UMLの採用は組み込み向けでは珍しいもの

[――] ファームウェアに関しては、今回新規のハードが多いので大変ではありませんでしたか?
[堀田] ファームウェアに関しては、画像処理エンジンの“PRIME”も新規に開発したこともあり、一から起こす必要がありました。こちらも今までのカメラとはぜんぜん別物になっています。ファームウェアの質自体も向上させるため、開発には“UML”(Unified Modeling Language)を導入しました。ソフトウェア的にも業界では新しいことをやっています。
[――] “UML”とはなんですか?
[堀田] オブジェクト志向の分析手法で、ファームウェアを作る前の段階から要求分析――つまり“このカメラにはどんな機能が必要であるか”という分析のレベルからの追い込みを行なっています。組み込み関係でUMLを導入しているメーカーはまだまだ少ないと思います。

後半へ続く

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