スキャナーと組み合わせたカラーコピーや、メモリーカードからのデジタルカメラ画像印刷など、インクジェット複合機の機能は毎年どんどん充実してきている。セイコーエプソン/エプソン販売の“Colorio”(カラリオ)「PM-T990」は同社複合機のフラッグシップモデルにあたり、大画面液晶ディスプレーや有線&無線LANに加えて、ついには書き込み可能な光ディスクドライブまで装備するなど、機能満載の1台だ。
Advanced-MSDTとREALOIDで高速&高画質を両立!
セイコーエプソン/エプソン販売の複合機フラッグシップモデル“Colorio”「PM-T990」。 |
印刷エンジンは“Colorio”シリーズの家庭用モデルとして最高画質となるもので、最高解像度5760×1440dpi、インクはCMYK+ライトシアン/ライトマゼンタの6色染料系を採用するのは従来(2005年モデル)と同様だが、インク滴の制御技術“MSDT”(Multi Size Dot Technology)はさらに進歩して“Advanced-MSDT”と呼ばれる5種類の大きさのドットを打ち分けることができるようになった。
高画質印刷のため高解像度化と、粒状感低減のためのインクドロップの小径化はここ数年インクジェット機の課題とされているが、インク滴自体が小さくなると大きな面積を塗りつぶすような場合により多くのインク吐出工程が必要になるため、最近は1つのヘッドで数種類のサイズのドットを打ち分けるという技術が搭載されるようになっている。同社のMSDTでは従来“3種類”のドットサイズを打ち分けていたが、新たに“5種類”の打ち分けが可能となり、グラデーション部での階調表現など、インクジェットプリンターが不得手としていたようなシチュエーションでも粒状感が少なくなるという。
本体前面の給排紙トレイの両側にはインクカートリッジを装着する。メモリーカードスロット部も開閉式のフタが設けられている。 |
また、ヘッド駆動の高速化や紙送りの高精度化などの駆動部分の改善に加えて、高速の画像処理プロセッサによって処理を高速化している。画像処理プロセッサには“REALOID”(リアロイド)という名称が与えられ、細かい画像編集機能と同社ならでは画像自動補正機能“オートフォトファイン! EX”などの制御、ネットワーク接続などを高速で並列処理する強力なもので、今期の同社製品の特徴のひとつとなっている。
4色カラーフィルター搭載の4インチ液晶パネルなど
印刷以外もフラッグシップらしい豪華スペック
本機は印刷機能以外も豪華なつくりとなっている。本体前面に備える4インチ大型液晶ディスプレーは同社独自の4色カラーフィルターを採用した“Photo Fine Ultra”液晶パネル。一般的なRGB(3色)ではなく、Gの代わりに黄緑とエメラルドグリーンで構成された4色カラーフィルターによって色再現域が広がり、デジタルカメラ画像の印刷時の補正なども印刷前に確認しやすい。
4インチ大型液晶パネルが目を引く操作部。基本操作は液晶左側にある円形のモードスイッチと、右にあるカーソルキーで行なう。モードスイッチのLEDインジケータはスタンバイ状態では円を描くように順に点灯するようになっている。分かりやすい半面、何度も見せられるのはツライかもしれない。 |
スキャナーは4800dpiのCCDタイプで、オンチップマイクロレンズ付きの6ライン構成(各色2列の市松配置によって高解像度化を図ったタイプ)、フィルムスキャンは35mmフィルム1列(スリーブ6コマ、スライド4コマ)を一度に取り込める。同社のスキャナー製品では2~4列を一度に取り込めるので、比べるとやや見劣りこそすれ、基本機能はほぼ同等だ。
各種モードメニュー。アイコンと文字が中心で、大型液晶ということもあって非常に見やすい。基本的にモードスイッチで各種モードを切り替えたあとはカーソルの左右で各種処理を選択する。 |
前面と背面の2WAY給紙に加えて、前面のDVD-R/CD-Rラベル印刷用トレイ(同梱のマウンターを使用)などの基本構造は最近のColorioシリーズに共通するものだが、新たに書き込み可能な光ディスクドライブや大型液晶パネルを搭載しただけあって、複合機としてはやや大きめの本体。それでも、無線LAN機能を標準搭載するため置き場所の自由度が高いのがありがたい。
前面操作パネルの下には左にメモリーカードスロット、右にはDVD-Rドライブを搭載し、メモリーカードから読み込んだデジタルカメラ画像を紙に印刷するだけでなく、画像ファイルをまとめてDVD-R(もしくはCD-R)メディアに書き込める。この作業は同社が(メモリーカードからの)“バックアップ”と呼ぶ機能であり、画像1枚単位のコピーはできない。また、すでにDVD-R(CD-R)メディアに記録した画像ファイルを読み出して表示・印刷することも可能だ。なお、本体に装着したメモリーカードは接続したパソコンから“マスストレージデバイス”として読み書き可能だが、DVD/CDドライブはパソコンから認識されず、外付けドライブとして利用できない。
本体背面にはLANコネクタが配置される。中央にあるスリットはDVD-R/CD-R印刷用のトレイが移動するためのクリアランス。 |
インターフェースにはUSBのほか、有線&無線LANを標準搭載し、携帯電話などから印刷するのに便利な赤外線通信、およびオプションでBluetoothユニットを内蔵可能だ。しかも有線LAN機能は地上デジタル放送用機器に対応し、番組連動のデータ放送から各種コンテンツを印刷する機能が用意されている。今後は地デジチューナーや地デジ対応TVがホームネットワークの中心になることを見越してのことだろうが、どんな使い方がなされるか未知なところもある“地デジ”のデータ放送にプリンターとしていち早く対応したのは面白い。