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【Adobe MAX 2006レポート Vol.4】来春登場予定の“CS3”に迫る――ジョン・ロイアカノ氏インタビュー

2006年10月26日 14時02分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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例年の“MAX”は、開発者(クリエイター/デベロッパー)向けカンファレンスということもあり、現在開発中の新製品の情報よりも、すでにリリースされた製品での開発手法のレクチャーや将来のバージョンアップに向けた開発者からのフィードバックを受ける、といった側面が大きい。しかし今回、米アドビ システムズ社の名前が冠された最初の“Adobe MAX 2006”では、かなり多くの開発中の製品が披露された(基調公演レポートを参照)。ここでは、そんな新製品がまとめて登場することになりそうな、米国で来春発表予定の『Adobe Creative Suite 3』(以下、CS3)について、デジタルビデオ製品担当のジョン・ロイアカノ(John Loiacano)氏を直撃した。

“クリエイティブオーガニゼーション”
CSシリーズ以外の製品とも連携を図っていく

ジョン・ロイアカノ氏
デジタルビデオ製品担当のジョン・ロイアカノ氏。ロイアカノ氏は6ヵ月前まで米Sun Microsystems社に努めていた。「以前はUNIXベースの“Solaris”というOSを作っている……と説明しても『何それ?』と言われたが、今は『あー、Photoshopの会社ね』とすぐに分かってもらえてうれしい」と現在の心境を語った

最初に断っておかねばならないのは、インタビュー時点ではCS3の詳細、例えば含まれる製品やそのバージョンなどは答えてもらえなかったということ。ここではCS3をリリースする狙いやコンセプトを中心に話を聞いている。まず、ロイアカノ氏が切り出したのは“クリエイティブオーガニゼーション”(クリエイティブツールの有機的な統合)という単語だった。

「まず、すべての製品の統合が最初の目的。CS3という製品は来年の春に登場する。これによって従来のクリエイティブ部門以外の製品との連携が始まる。例えば『Adobe Connect』、『Adobe Flash Media Server』とDRM(デジタル著作権管理)技術、さらにモバイル部門などが関わってくる」

これは前バージョンの“CS2”(2005年6月発表、関連記事1)に『Adobe Flash Professional 8』がバンドルされた製品が登場した時(2005年12月発表、関連記事2)からの必然的な流れと言える。クリエイターの仕事の領域が、単に“紙の上の単独のデザイン”に止まらずウェブやモバイル(携帯電話機、組み込み機器)などの新しい世界へと急速に広がっていること、そしてウェブの世界で作品を発表・流通するために必要なツールを旧マクロメディア(Macromedia)社から入手したことも、アドビ システムズにとってはごく自然な成り行きとも言える。そのためのクリエイティブツールとして、CS3は登場するわけだ。

「CS3には3つのオーディエンスにフォーカスしている。ウェブの世界、デザインの世界、そしてビデオの世界だ。特に積極的に投資しているのがビデオの世界」

これは日本でも今月20日に発表された米Serious Magic社の買収に関連した発言だろう。Serious Magicは、映像をHDDに直接記録してパソコン画面でモニタリングする“DV Rack”や、個人/法人向けに映像を介したコミュニケーションツール“Visual Communicator”“Vlog It”などを開発している。こうした技術と同社のビデオ編集ソフト“Premiere Pro”“AfterEffects”、さらにインターネット上で急速に流通しているビデオフォーマット“FlashVideo”を組み合わせることで、ビデオを活用するシーンが今まで以上に広がることは容易に予想できる。

「かつてビデオは一部の人だけのものだったが、リッチメディアという動きの中で個人のデザイナーも映像を扱うようになってきた。加えてインタラクティブな動きも増えてきている。例えばバックエンドのデータベースを連動して映像を組み合わせる、といった表現もできる」――ロイアカノ氏はこのようにも述べ、デザイナーにとって動画編集が今後は重要な位置づけになることを示し、CS3でも大きな役割を担うことを示した。

ビデオ製品とクリエイティブ製品の統合とは?

ロイアカノ氏

では、ビデオ製品とほかのクリエイティブ製品の統合はどんな機能を実現するのか? ロイアカノ氏の答えは、「シームレスに動く形で、ウェブ向けアプリケーションとビデオ編集アプリケーションが連動する機能を提供していく。例えば同じようなユーザーインターフェースであるとか、同じようなパレットを配置する、共通の操作体系を提供したい」と語った。

ユーザーインターフェース以外のファイルフォーマットについては、「ひとつのフォーマット、ひとつのCODECに統一するのではなく、複数のフォーマットやCODECをすべてのアプリケーションで使えるようにする」とも述べた。



FlashVideoは2つの方向に進化していく

最後にFlashVideoの将来の方向性について聞いてみた。FlashVideoはFlash Player 8の登場時に“On2 VP6”という新たなCODECに対応して、現在の軽量なストリーミングに十分な高画質を手に入れた。これをより高画質・高解像度な方向に進めるのか、あるいは今のまま軽量なストリーミングビデオ向けに進化させるのか?

「どちらか一方を選ぶことはできない。おそらく両方を選ぶことになる。モバイルからTVまで、幅広いターゲット(出力デバイス)に向けた開発を進める。HD(高解像度)表示も念頭において開発を進める。TVと同じ程度の画質をどこでも使えるようにする、というのがメインコンセプトだ」

FlashVideoは、YouTubeやMySpaceなどのCGM(利用者自身が作品を制作・投稿するメディア)によって、一気にストリーミングビデオのデファクトスタンダードの地位を占めるに至った。そして来春のCS3の登場が、こうしたメディアにどんな影響を与えるのか。すでに今から楽しみになってきた。

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