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【INTERVIEW】見えない部分に開発者のこだわりがある──『Nikon D80』の開発者に聞く

2006年11月07日 12時44分更新

文● 聞き手 小林 伸、撮影 岡田清孝、構成 編集部

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高感度撮影に関しては、メニューにはISO 1600までのパラメーターしかないが、1/3段刻みで最大1段の増感が可能なため、最大でISO 3200(ISO 1600の倍)相当の撮影が可能となっている。ノイズリダクションに関しては、ISO 800までは画像処理をかけない設定が可能。それ以上では設定状況に関わらず、自動的にノイズ除去が行なわれる。

モードダイヤル
D80のモードダイヤル。コンパクト機からのステップアップも考え、代表的なシーン別撮影モードなどが用意されている

デジタルカメラでは、感度をコマ単位で自由に変えられる。最近ではこの特徴を生かした自動感度調整や、感度優先の露出モードを備えたカメラも登場している。例えば、ペンタックスが最近発表した『K10D』では、絞り/シャッター速度に加え、感度も考慮した2種類の自動露出モードが追加された。実は、この感度を考慮に入れた撮影モードはニコンも積極的に取り組んできていたと若林氏は話す。

[若林] 感度が変わって自動露出する撮影モードは、実は当社では2002年の『Nikon D100』から搭載してきた機能です。撮影モードをMにして“感度自動制御”をすると、設定したシャッター速度と絞り値で、露出適正となるように感度が変わって撮影できるようになります。これもあまりアピールしてこなかった機能なんですが、新たな露出モードでと思っております。シャッターと絞りを固定し、感度を変更することにより露出適正にする機能です。

感度自動制御は、撮影モードがマニュアルモードでは、設定したシャッター速度と絞りで最適な露出が得られない場合に、自動的に感度を調整し、適正な露出を得るモードだ。ペンタックスでは、K10Dで新たに追加された“シャッター速度&絞り優先”(TAv)に相当する。操作方法などが異なるため、一概に同じものとは言いにくい面もあるが、デジタルならではの操作感の追求という点で、両社がよく似たアプローチを取っている点は興味深い。



デジタルカメラとしての使いやすさも考えたい

商品企画を担当した中村氏は、インタビューの冒頭で“撮影機会を増やしたい”という点を筆者たちに強調していた。最後にまとめの言葉をと問いかけた筆者に対して、中村氏は以下のようなD80の楽しみ方をアピールした。

[中村] “撮る楽しみ”はもちろんなんですが、“見る楽しみ”やデジタルならではの“加工する楽しみ”といったものも体験してほしいと考えています。“見る楽しみ”“加工する楽しみ”という点では、D80は非常に画期的ではないかと思います。

まずD80では画像編集機能を加工する楽しみとして入れました。コンパクト機では、従来からも入っていた機能なんですが、撮った画像を加工するという概念は、多分一眼レフ機としては初めてではないかと。当社の場合“D-ライティング”という逆光補正機能がありますし、白黒に関しても、撮影前に設定しておかないと撮れなかったものが、撮影後に白黒に落とせるなど。要するに、その場で加工する楽しみが加わりました。

どうしてその場でやらなくちゃいけないの?っていう疑問もあると思いますが、それはやはり、撮った瞬間の感動が新鮮なうちに――目の前の被写体がその通りに撮れればいいんですけど、そうじゃない場合もありますよね。やっぱり感動を、その場で加工できれば、撮った本人にとって最高の1枚になるんじゃないかと。

“見る楽しみ”に関しては、“ピクトモーション”というスライドショー機能を持っています。テレビに接続すると、音までついた面白いスライドショーが作れる機能として楽しんでほしいと思います。この見る楽しみ、加工する楽しみを同時に味わえるという点で、強調していきたいなと思います。




ファインダー内で確認できる情報だけでも使い勝手は変わる

一方、若林氏はカタログスペックには現われない感触やフィーリング、快適な操作感をぜひとも体験してほしいと話す。

[若林] カタログスペックだけ見ると、地味な進化しか遂げていないように見えるかもしれませんが、実際に手にとっていただくと、持った感じがしっくりし、見て仕上がりがいい、ファインダーをのぞけば大きな像が見える……。ということで、まず触っていただきたいなぁというのが第一です。

インタビューの中で、若林氏はPN(ポリマーネットワーク)液晶による見やすく情報が整理されたファインダー、5000シーンものパターンでグループ分けされた構図の情報を利用して最適なAFを選ぶアルゴリズム、“オートエリアAF”の仕組みなどを紹介してくれた。

ニコンの一眼レフ機では、PN液晶を利用したことで、フォーカス位置(D80の場合11点)を黒枠であらかじめ確認できる(他社のカメラでは半押しの状態でフォーカス位置が赤く点灯するのみなのが一般的)。また、ファインダースクリーンの交換なしで格子線が表示できる点や、カードの有無、バッテリー警告などを出せるのもPN液晶ならではの機能だ。また、半押し時のAF位置の確認に関しても、同じフォーカス内であれば何点でもエリアが赤く点灯するようになっている。従来は画面の両端に人物が立ち、中央に背景があるような構図では、左または右の人物のいるエリアしか点灯しなかったが、両方点灯することで撮影時の不安感をより軽減できるという。

[若林] AFに関しては、従来は“至近優先ダイナミック”という手前側の被写体を優先する方式でした。今回は被写体をグルーピングして、主要被写体を見分ける仕組みを盛り込んでいます。5000シーンにおよぶ実写データに基づくシーン判定条件から、主要被写体を選び撮るというグルーピング手法です。また、カスタム設定に関しても“マイメニュー”では、設定を変える頻度の高いものだけを表示できるようにしています。本当に必要な項目だけしか出てこないので、どこにあったかとか迷うことなく選択ができます。

D80が登場したことによって、ニコンの一眼レフラインアップはローエンドのD50から、D70s、D80、D200と細かなニーズに対応できる4機種が揃った形になる。価格的にもD50が6万円弱、D70sが7万円台、D80が11万円台、D200が20万円程度となっており、予算にあった最適なクラスのカメラを容易に選択できる状況が整った。

ニコンの一眼レフカメラは、製品寿命の長さや初中級機といっても、妥協しない一定の水準の質感へのこだわりも特徴だ。D80のイメージキャラクターには、タレントの木村拓哉さんが起用されているが、CMではカメラの機能や絵ではなく、質感や所有感を強調した今までとは一風変わった切り口となっている。このCMからもニコンがD80で何を強調したいかが伺える。



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