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【Smartphone Show 2006 Vol.4】米グーグルが携帯電話市場をめざす理由――米グーグル副社長の講演より

2006年10月19日 21時13分更新

文● 安藤 怜

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イギリス・ロンドンで開催された“Smartphone Show 2006”では、17日(現地時間)、携帯電話市場へのサービス浸透をめざす米グーグル(Google)社のAlan Eustace(アラン・ユースタス)技術担当副社長が、“Google in the Mobile World”(モバイルワールドのグーグル)と題する講演を行なった。

アラン・ユースタス技術担当副社長
米グーグル社のアラン・ユースタス技術担当副社長

米グーグルの創業以来のミッションとして、“世界中の情報を集め、それを広くアクセスし利用できるようにする”というものがある。そして、このミッションは携帯電話市場においても重要であることを、ユースタス氏は講演で示した。

検索クエリーの上位1000の分布
グーグルへの検索クエリーの上位1000の分布を、デスクトップ(ピンク色の線)とワイヤレス(青色の線)それぞれについて示している。分布は若干異なるものの、どちらも上位のシェアは1%にも満たず、きわめて長い“ロングテール(グラフの右側の低いライン)”が観測された

まず、ユースタス氏は、デスクトップとワイヤレス(主に携帯電話)それぞれについて、グーグルへの検索クエリーの上位1000の分布を示した。すると、ワイヤレスであっても、最も頻度の高い検索クエリー数は全体の1%にも満たないことが分かる。デスクトップの世界と同じように、ワイヤレスでも非常に長いロングテール(検索頻度が低くても、より多い情報)を持つことが必要になる。「だから、我々は、携帯電話に向けても、世界中の情報を利用できるようにしなければならない」とユースタス氏は強調した。

しかし、携帯電話の世界はパソコンとインターネットの世界と異なり、非常に複雑なエコシステムが存在する。まず、携帯電話メーカーやソフトメーカー、携帯電話キャリアーなどプレーヤーの数が多く、利害関係が複雑になっている。また、さまざまな端末やプラットフォームが乱立している。料金体系が複雑で、ユーザーも把握できていないため、あるサービスを利用するといくらかかるのかが分かりにくくなっている。また、携帯電話業界は伝統的に過大な約束をし、それを過小に実現してきた。さらに、サービスを得られる場所が偏在し信頼性が低い、などである。これらの問題は、米グーグルに立ちはだかる「大きな困難である」と、ユースタス氏は語る。

提携関係図
携帯電話市場への浸透には提携戦略がカギを握る

こうした問題を克服するために、米グーグルが選択したのが提携戦略である。携帯電話メーカー、ソフトメーカー、携帯電話キャリアーとの提携を進めることで、携帯電話市場浸透の足かがりを作ってきた。

グーグルの3つの主要コンテンツ
ニュース、Gmail、自分用にカスタマイズしたホームページの3つが主要なコンテンツとなる

携帯電話向けのコンテンツとしては“ニュース”“Gmail”“自分用にカスタマイズしたホームページ”の3つが主要なサービスになるという。

Click to Call
携帯電話向けの広告(一番左)では、広告をクリックすると広告主に電話をかけられる“Click to Call”機能も搭載できる

また、新しい収入源としては携帯電話向けの広告がある。広告をクリックするだけで、そのまま広告主に電話をかけられる“Click to Call”という機能を付加することが可能で、これは広告主にとっても大きな意味がある。また、他社のポータルサイトやショッピングサイトに検索エンジンを提供するサービスも、新たな収益源として期待されている。

最後に、ユースタス氏は、英シンビアン(Symbian)社の『Symbian OS』の優れた点として、

  • 最大のスマートフォン向けOSであること
  •     
  • 多くの携帯電話メーカーがSymbian OSの採用に向かいつつある
  •     
  • 技術開発の環境が整っており、OSと通信技術が深く統合されている
  •     
  • ユーザーの経験を最適化できる環境が整っている

ことなどを挙げて講演を締めくくった。

講演の後には“Smartphone Show”参加者とのミーティングも行なわれ、携帯電話メーカーやソフトメーカーなど多くの参加者が詰めかけた。ここでは、米グーグルが16億ドル(約1888億円)で買収する計画を示している米ユーチューブ(YouTube)社の動画配信サービス『YouTube』に関する質問も出たが、ユースタス氏は、「YouTubeについては、答えられない」としながらも、「一般論として、インターネットによるビデオ配信は、これからもますます重要になってくる。YouTubeは1つの大きな流れを示したものだ」と語った。

また「一般ユーザーが作ったコンテンツに広告を出すことを嫌がるスポンサーもあるが、それにどう対処しているか」という質問に対しては、「スポンサーの意見も取り入れて、スポンサーが出したいコンテンツに広告を出せるような技術の開発も進めている。ただ、私は、どんなコンテンツであっても、まったく広告の出せないコンテンツはないと信じている。あるコンテンツに広告を出すのを嫌がるスポンサーがいるならば、別のスポンサーを探せばいい」と答えた。

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