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【INTERVIEW】ソニーの持ち味が生かせた『α100』――開発者に聞く(後編)

2006年10月27日 00時00分更新

文● 聞き手/撮影 小林伸

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[――] 手ぶれ補正機能もα100で進化しましたが。
関氏
ソニーAMC事業部商品企画部商品企画課の関氏。ソニー入社以前は、旧ミノルタでフィルムの一眼レフを設計してきた
[関] 手ぶれ補正に関しては、コニカミノルタ時代に開発した『αSweet DIGITAL』で最大3段までの補正効果を実現していました。α100では、それを上回る最大3.5段の補正効果をうたっています。また、カタログスペックには表れない改良も行なっており、細かな部分では、低い周波数のゆれに対する補正性能の向上にも取り組んでいます。
[安原] 一口に手ぶれといっても、ぶれの周波数はさまざまです。高いところでは10Hz程度で、これはカメラを構えた際に筋肉がぴくぴくと反応するぐらいの振動です。これとは別に低い周波数のゆれ――例えば、体全体がゆっくりと動くような動きもあります。αSweet DIGITALでは、比較的高い周波数に関しては、いい性能を発揮できていたと自負しているのですが、大きなゆれに関してはもうひとつ性能が出し切れていませんでした。今回はその部分にも手を入れて、全体的な底上げを狙っています。信号処理系をすべて見直して、比較的遅いゆれから、速いゆれまで、ほぼフラットな補正性能が達成できたと考えています。
[――] 低い周波数の手ぶれを抑制するために、具体的にどんな取り組みが行なわれたのでしょうか。
[安原] 細かい部分はノウハウになるため、お答えできないのですが、基本的にすべての周波数を補正することは不可能で、どういったぶれを補正するのかを意識して、処理を最適化していく必要があります。これによってカットされる周波数も生じるのですが、カットしすぎると、今度は対応できないぶれが生じてしまいます。α100では、焦点距離の短いレンズでも十分な補正効果が得られるようにするという設計意図で、より低い周波数をカバーすることにしました。
[――] 撮像素子が1000万画素になると、画素も高密度になります。ちょっとした手ぶれも画質に悪影響を及ぼすでしょう。1/60~1/100程度の比較的高速なシャッター速度でも厳密に見ると、ぶれが生じていることがありますから、補正性能の向上は嬉しい部分ですね。
[関] おっしゃられたように“なぜかシャープじゃない”と感じる原因の大半が手ぶれです。仮に、速いシャッタースピードだったとしても、望遠レンズであればぶれますので、遅いシャッタースピードから速いスピードまで、シャープな絵が撮れるというのは大きいメリットだと思います。(レンズ内補正に取り組まれている)他社さんのレンズラインアップを眺めると、開放F値が1.8以下の明るいレンズ、あるいは標準~広角領域の単焦点レンズはいまのところありません。手ぶれ補正を内蔵するのが難しいためだと思います。そういう意味では、“単純な手ぶれ補正性能の比較”だけでなく、“レンズを問わない”という点が大きなメリットになるのではないでしょうか。


分解写真α100の発表会で展示されていた分解写真。中央右(8番)が手ぶれ補正機構ユニット


α100に搭載されている手ぶれ補正機構

現在一眼レフ機で使用されている手ぶれ補正機構は、大きく分けてレンズ内蔵型とボディー内蔵型の2種類があり、前者はニコン(株)やキヤノン(株)、後者はソニーのほか、ペンタックス(株)が取り組んでいる。

同じボディー内蔵型でも、撮像素子の駆動方式には違いがある。ペンタックスの場合は磁力を利用した制御を行なっているが、ソニーは積層ピエゾタイプの圧電アクチュエーターを利用している。圧電アクチュエーターの特徴は、可動機構があるのにがたつきがない点と、不使用時には通電を切れば固定される点だという。通常のモーターやアクチュエーターによる駆動では、撮像素子を動かすためにはある程度の遊びが必要となるが、圧電アクチュエーターではそれが必要ない。遊びによる誤差は画質に悪影響を与えかねないため、有利だ。

圧電アクチュエーターは、電圧を掛けると伸び縮みするセラミックスの先端にロッドを固定。これを使ってCCDの基板(可動面)を動かす。CCD面はロッドと台板にきつく挟み込まれた状態になっている。セラミックスに電圧を加えると素子がゆっくりと伸びてCCD面が動き始める。ここで印可を止めると素子が速く縮んで、可動面が慣性で動く状態になる。これを非常に速い周波数で繰り返すことで、滑らかでガタ付きのない制御が行なえるのだという。

圧電アクチュエーター
圧電アクチュエーター。分銅に取り付けられたロッドの下端が、圧電素子になっている。写真は過去に展示会で出展されたもので、α100に搭載しているものとは異なる

圧電アクチュエーターと同じ原理のアクチュエーターを利用したボディー内手ぶれ補正を初めて搭載したのが、2003年に発売されたレンズ一体型機の『DiMAGE A1』。α100の手ぶれ補正は、同製品以降、3年間にわたって蓄積したノウハウを利用して開発されている。

DiMAGE A2
圧電アクチュエーターと同じ原理のアクチュエーターによるボディー内手ぶれ補正機構は、まずコンパクト機に搭載された。写真は2004年2月発表の『DiMAGE A2』

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