幕張メッセで開催中のアジア最大の家電イベント“CEATEC JAPAN 2006”。マスコミの目は、クリスマス商戦に備えてデビューした最新家電を、コンパニオンの数と派手なブースで印象づけようとする大手メーカーのブースに集まりがちだ。しかし、すぐ隣のホールには、もう少し夢のある、ちょっと先の未来が展示されている。
ここでは部品、デバイスメーカーが軒を連ねる7、8番ホールで見つけた、半歩先のトレンドを読み解くデバイスを紹介したい。まずはディスプレー関係の最新技術を取り上げよう。
風景の中に映像を映し出すウェアラブルディスプレー
日常風景の中に、好きな映像を映し出せるのがコニカミノルタテクノロジーセンター(株)が参考出品していたウェアラブルディスプレー“ホログラフィックシースルーブラウザー”だ。
メガネのように装着して映像を見るウェアラブルディスプレーはこれまでにもあった。ただし、そうした製品はどれもメガネ部分が液晶ディスプレーとその背景で遮蔽(しゃへい)されており、映像を見ている間は、まわりで何が起きているかわからないという不安感や閉塞感がつきまとった。
同技術は透明レンズのような部分に、ホログラム工学素子を使って映像を映し出すことで、まわりの景色と映像を同時に見ることができるのが特長で、例えば電車に乗るといった日常生活と平行して、映像の“ながら見”ができるというもの。27gという本体重量もウリになっているようだ。
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ウェアラブルディスプレー“ホログラフィック・シースルー・ブラウザー”とその解説 |
何に使うのかわからないが、とにかくスゴイ
ローム(株)のブースには、フキダシで「わ~っ!ちっちゃなテレビ」と書かれ、その横に顕微鏡が置かれている。覗き込むとLSIの上に極小の有機ELディスプレーが埋め込まれている。解像度は縦7×横8mmのものでQVGA(320×240ドット)、縦横1cmを超えるものだとVGA(640×480ドット)だ。
用途は“デジタルカメラ、カムコーダーのビューファインダやヘッドマウントディスプレー”と記載されている。リビングルームのディスプレーが大型化を競い合う一方で、デバイス業界では今後、ディスプレーの小型化技術における競争も始まるのかもしれない。
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LSIの上に埋め込まれた極小の有機ELディスプレーの展示。“LSI上ディスプレーを実現”“省スペース”などと特徴が書かれているが、「省スペースにも程がある」と言いたくなる |
ちなみに、その近くの三洋電機(株)のブースには“世界最短”と書かれた展示がある。何かと思って見てみると、デバイスではなく同社の液晶プロジェクター『LP-XL40(S)』が置かれている。“約1mの距離から投影可能”というのが世界最短らしい。
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液晶プロジェクター『LP-XL40(S)』。映像業界の最小・最短競争、来年はどこまで加速しているのだろうか |
進化するタッチパネル
これからの薄型型ディスプレーの進化で、無視できなくなってきたのがタッチパネルの存在だ。一連のタッチパネル関連の展示で、もっともおもしろかったのがSMK(株)の“フォースフィードバックタッチパネル”だ。
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“フォースフィードバックタッチパネル”のデモと解説パネル |
用途が広がっているタッチパネルだが、操作していて不快なのは、どこを触っていても真っ平らな1枚の板で、画面上のボタンがちゃんと押されているのかといった感触が伝わってこないことだ。
同タッチパネルは、触った時に例えば機械的なスイッチを押したときのような感触やゴムのスイッチを押したような感触といった触感を再現していること。同じ機械的スイッチといっても、カチっとしたものから、プチっという感触など、いくつかのバリエーションがあり、スライダーをドラッグする感触といったものも演出できる。
あらかじめソフトウェアとして用意された感触用データ(異なる振動パターン)にあわせ、タッチパネル自らが振動することで感触を再現している。これなら画面をちゃんと見ないでも正しい操作ができたかが分かりそうだ。
![]() | 動作原理のデモ |
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![]() | タッチパネルについては米タイコ エレクトロニクス(Tyco Electronics)社も面白い展示をして、その活用方法を提案していた |
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破綻のない自然な立体映像
こちらの記事でも紹介したが、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのブースには、東京農工大学と共同開発した3Dディスプレーが展示されていた。ディスプレーの上にはユーザーの目の位置を検出するカメラが用意されている。
そのため、見る角度を変えても立体映像の角度が変わらないこれまでの3D技術と異なり、目の動きにあわせて、隠れていたものが見えたり、見えていたものが隠れたりする、より自然な立体映像を再現する。
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(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモが東京農工大学と共同開発した3Dディスプレー |
