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“Media Keg”HD30GB9

“Media Keg”HD30GB9

2006年09月29日 20時34分更新

文● 編集部 小林 久

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じわりと分かる音質の向上

 今回、標準添付のヘッドホンのほか、SHUREの「E4c」(インピーダンス29Ω、109dB/mW)、AKGの「K171 Studio」(55Ω、94dB/mW)、オーディオテクニカの「ATH-A55」(60Ω、102dB/mW)など複数のヘッドホンを使い、何種類かの音楽ソース(WAVE形式)を従来モデルと聴き比べてみた。

試聴に使用したヘッドホンとCDの一部。

 音質の傾向はHD30GA9とよく似ており、過去に掲載したレビュー記事に書いた内容がほぼそのまま当てはまる。音のバランスがやや高域に寄ったHD20GA7(第1世代機)と比べると、より中低域の厚みを感じ、高域の表現も擦音を抑えたソフトなものとなっている。HD30GA9との比較では、ハッとするような違いは感じないかも知れないが、いろいろなジャンルの楽曲をヘッドホンを変えながら試聴を重ねると、音の見通しや、きめ細やかさ、中高域の解像感、低域のスピード感などが改善されていることに徐々に気付く。

 特に、アンプの出力がアップすることで、ヘッドホンのドライブ能力にかなり余裕が出た点はうれしい部分だ。K171 Studioは、密閉型のモニターヘッドホンで、メリハリの利いた音で鳴る反面、出力が弱いとやや中域がやせた印象になる。しかし、HD30GB9と組み合わせて聴くと、こういった不満はなく、高域から低域にかけてバランスのよい、フラットな印象の音となった。試聴では「マーラー交響曲6番 悲劇的」(ブーレーズ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団)、ヴィオラ・ダ・ガンバとポジティブオルガンによるバッハの器楽曲などを聴いたが、いずれもワイドレンジで均整の取れた印象。澄んだ高域と引き締まった低域が魅力的だった。



無音部分のノイズはかなり低減
いろいろなヘッドホンと組み合わせたい

 無音部分のノイズに関しては、従来機種の場合、一般的なヘッドホンではほぼ皆無という状態だったが、能率が高い一部のカナル型ヘッドホンで聴くと、鳴っていると気付く程度の音量を感じた。E4cを使用した試聴では、HD20GA7に比べかなり小さな音になったのは事実だが、残念ながらゼロにはなっていなかった。ただし、それ以外のヘッドホンでは、ノイズはまったく感じないレベル。同じカナル型でも、ケンウッドの「KH-C701」(32Ω、108dB/mW)ではノイズを拾わない。ヘッドホンとの相性の問題と考えたほうが良さそうだ。

最新の「iPod」(写真右)との音質比較も行なった。

 また、9月13日に発表になったばかりの新型「iPod」(80GB版)との比較試聴も行なってみた(関連記事)。iPodは意外にもクラシック音楽との相性がいい。HD30GB9と比較すると、iPodの音はよりやわらかな印象で、フルオーケストラのスケール感ではHD30GB9に勝る部分もあった。ただし、個々の音を明瞭に聞き分けられるのはHD30GB9のほうで、解像感の高さや高域の抜け、表現の繊細さなどでiPodは一歩譲るように感じた。特に、クラシックギターなどアコースティックなソースの臨場感などに差が出る印象だ。

 なお、HD30GB9の特徴である、Supreme EXの効果に関しては、WMAのような圧縮音源に利用した場合、音の鮮度が気持ち上がるような印象を持ったが、顕著な差は出ない。補間の演算処理が加わるため、バッテリー寿命が若干短くなるというデメリットも理解した上で、オン/オフを使い分けたい。



大きな驚きはないが、着実な進化を感じる1台

 このようにHD30GB9は、従来機種の持ち味を継承し、進化(深化)させた1台となった。冒頭でも述べたとおり、30GBのHDDながら実売で5万円というのは、決して安価なプレーヤーとは言えない。例えば、iPodの場合、これよりも安価な価格で、80GBのHDDと動画再生機能を搭載した製品を購入することが可能だ。また、パソコン上に構築したライブラリーとの連携機能に関しても、こなれていない面を感じる。

 しかし、この製品にその価格に見合った価値があると感じる層がいるのも事実だろう。携帯音楽プレーヤーは、これまで機能の多さや、操作性の善し悪しで評価されることが多かったが、“いい音で音楽を楽しむ”という“質”の部分に関しては、まだまだ改善の余地がある。Media Kegが、一部ではあるが熱烈な歓迎を受けているのは、カタログに表れるスペックには表れにくい“品質の改善”を望む声があるということだと思う。

 筆者も、Media Kegで聴くことで“従来感じなかった曲の魅力”に気付くという経験があった。この快感が根強い人気の秘密なのだろう。HD30GB9は、従来機種のユーザーはもちろんのこと、携帯音楽プレーヤーの音質にもの足りなさを感じている人にもぜひ手にとってもらいたい製品だ。

“Media Keg”HD30GB9の主なスペック
製品名 HD30GB9
容量 30GB
再生フォーマット MP3、WMA(WMA-DRM対応)、WAVE、KLS(Kenwood Lossless)
対応ビットレート MP3:32~320kbps、WMA:48~192kbps
電源 内蔵リチウムイオン充電池
連続再生時間 最大20時間
充電時間 USB経由で、約5時間(ACアダプターは別売)
インターフェイス USB 1.1/2.0(Hi-Speed対応)
サイズ(W×D×H) 61×17×104mm
重量 約140g(バッテリ装着時)

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