撮影サンプル
それでは、気になる映像品質について見ていこう。今回は季節柄スポーツの秋ということでフットサルの撮影に出かけた。F1.8-3.0と十分な明るさのレンズに新開発のCMOSセンサー+DIGIC DV IIの組み合わせとあって、輝度の明暗はしっかりと表現され発色も鮮やか。また、イメージセンサーにCMOSセンサーを採用するため、強い光(金属の反射光)が飛び込むようなシーンの撮影でもスミア(撮像素子の輝度信号があふれて、垂直方向に白飛びした線が出ること)の発生がないのもうれしい。ただ、今回の撮影はコートの手前に防護ネットがあり、被写体がその奥で激しく動くというHDVフォーマット(MPEG-2圧縮)での撮影には厳しい条件であったため、撮影した映像にはブロックノイズなどの発生も見られた。動いている映像として見ていると問題ないレベルではあるが、静止した映像を見て映像の粗さを感じる人もいるだろう。詳細については、サンプルならびにキャプションをご覧いただきたい。
【広角撮影サンプル】 フットサルコート脇からズームの広角側を使用してコート全体を撮影。焦点距離は35mm換算で43.6mmとやや望遠寄りで、これ以上引いて撮るにはオプションのワイドコンバーターが必要だ。柱からは樽型の歪みが見られるが、気にはならないレベルといえる。左は全体を横640ドットのリサイズしたもの。右は中央付近を横640×360ドットにトリミングしたもの。 |
【望遠撮影サンプル】 ズームを最大望遠にし、コート奥にいるキーパーを狙ってみた。望遠端における焦点距離は436mmで、キーパーの表情や細かい動作もしっかり撮影可能だ。ただ、このシーンでは明暗の差が大きな境界線を中心に細かなノイズが発生してしまっており、その結果としてやや粗い表現となっている。左は全体を横640ドットのリサイズしたもの。右は中央付近を横640×360ドットにトリミングしたもの。 |
【ノイズが出てしまった例】 手前の防護ネットと被写体の人物の重なりによってDV圧縮特有のノイズが出てしまった例。といっても、左のように全体を横640ドットのリサイズした場合では、ほとんど気にならないので、動いているシーンで気付くことはまずないだろう。一方、右は中央付近を横640×360ドットにトリミングしたもので、静止した状態で画面を注視するとこのようにノイズが目に付く場合もある、という例。 |
【花火撮影サンプル】 夏の風物詩である花火大会の様子をAEモード「打ち上げ花火」で撮影。一般的に花火を色鮮やかに撮影するにはカムコーダーの設定を手動で変更する必要があるが、HV10ではこのモードを指定するだけで火薬の色の変化までバッチリ記録できる。左は全体を横640ドットのリサイズしたもの。右は中央付近を横640×360ドットにトリミングしたもの。 |
記録メディアがminiDVカセットなので、撮った映像の確認にはテープを巻き戻さなければならず、またパソコンとの連携についてもHDVキャプチャソフトやビデオ編集ソフトが付属していないため、別途HDV対応のビデオ編集ソフトが必要となる。このように映像の確認やパソコンとの連携といった面ではやや不便があるものの、1本のminiDVカセットに1080iのHDビデオを最大80分記録できる。カメラ側の連続撮影時間についても、付属バッテリーパックはスリムタイプながら1時間以上の撮影が可能だった。
価格はオープンプライスで、実売価格は15万円程度と予想される。ソニーのHDVカムコーダー「HDR-HC3」と同じ価格帯で、コンパクトさを売りにしているところもHDR-HC3と同じ。いわば真っ向からのライバル関係にある。HDVカムコーダーを検討している人にとっては、選択肢が増えたことは実にうれしいところだろう。ただし、ライバルとは言っても、両モデルの個性はやや異なる。HDR-HC3はタッチパネルによるわかりやすいメニューや、マニュアル操作を支援するカメラコントロールダイヤルの搭載、三脚に固定したままテープ交換を行なえるなど、総合的な“扱いやすさ”という点で秀でているように感じられる。一方のHV10は、縦型スタイルのボディーを採用したことによる“持ち運びやすさ”と、新設計のCMOSセンサーや光学式手ぶれ補正機能、外測センサーの搭載などによる“高い映像品質の実現”に特に力を入れている。どちらを重視するかで選ぶモデルは決まってくるはずだ。
コンパクトで気軽に持ち運べ、さらに画質にもこだわるHDカムコーダーがほしいという方には、HV10はまさにピタリの製品といえる。
iVIS「HV10」の主なスペック | |
製品名 | iVIS HV10 |
---|---|
撮像素子 | 1/2.7インチCMOSセンサー |
有効画素数 |
約207万画素(16:9モード) 約155万画素(4:3モード) |
焦点距離(35mm換算) |
43.6~436mm(16:9モード) 53.0~530mm(4:3モード) |
開放F値 | F1.8~3.0 |
ズーム倍率 | 光学10倍、デジタル40倍/200倍 |
フォーカス | オート(外測センサーを組み合わせた“スーパークイックAF”とTTL測距のみの“ノーマルAF”)/マニュアル |
フィルター径 | 37mm |
液晶ディスプレー | 2.7インチワイド液晶パネル(約21万画素) |
最低被写体照度 | 約0.3ルクス(ナイトモード:シャッタースピード1/2秒) 約5ルクス(オートモード:1/30秒) 約10ルクス(1/60秒撮影時) |
手ぶれ補正機能 | 光学式手ぶれ補正(レンズシフト式) |
ホワイトバランス | フルオート/TTLオート/セット/プリセット |
明るさ調整 | 23段階 |
プログラムAE | フルオート/プログラムオート/シーンモード(8モード) |
シャッタースピード | 1/30~1/500秒(オートモード時) 1/8~1/2000秒(Tvモード時) 1/2~1/500秒(ナイトモード時) |
マイク | ステレオエレクトレットコンデンサー |
記録メディア | miniDVカセット、miniSDメモリーカード |
記録フォーマット | HDV、DVフォーマット |
映像品質 |
HDV:1080i DV:SP/LP |
インターフェース | HDV・DV入出力/コンポーネント(D3&D1)出力/AV入出力/USB |
サイズ | 幅約56×奥行き106×高さ104mm/約440g(本体重量)、約500g(撮影時装備重量) |