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【詳報】ソニーの新ブラビアシリーズのラインアップに見るソニーのテレビ戦略

2006年08月30日 21時17分更新

文● 編集部 西村賢

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「今回の発表は、BRAVIAというブランド展開における“チャプター2”(第2幕)の幕開けだ」――。東京・恵比寿のウェスティンホテル東京に詰めかけた大勢のメディア関係者を前に、ソニー取締役副社長でテレビ・ビデオ事業本部 本部長の井原勝美氏は、そう宣言した。速報でお伝えしたとおり、ソニー(株)は30日、大画面薄型液晶テレビとプロジェクションテレビ“BRAVIA(ブラビア)”シリーズの新製品“2500”シリーズ11機種を発表した。

スペックや価格は速報記事をご覧いただくとして、ここでは記者発表会でのプレゼンテーションから、ソニーのテレビ事業の近況と年末に向けた市場動向、新搭載の画像処理技術についてお伝えする。

井原勝美氏
井原勝美(いはらかつみ)取締役副社長
展示製品
ソニー初の50インチ超の薄型液晶テレビも登場した

買い換え需要に乗って大画面化を一気に加速

ラインナップを見て、まず目を引くのはソニーとしては初めての50インチ超液晶テレビとなるフラッグシップ機、X2500の52V型(52インチワイド型)だ。プラズマテレビ商戦では他社に完全に出遅れ、現在に至ってもプラズマテレビ市場に参入していないソニーだが、薄型液晶テレビの“大型化”への戦線拡大で、現在の復活基調に一気に弾みを付けたい考えだ。年末商戦期にはワールドワイドで40型以上の機種の出荷比率を50%に拡大していく目標だという。

液晶テレビの平均単価が市場全体で14万円前後で推移しているなか、昨年10月のBRAVIAブランド投入以来、ソニーの液晶テレビの平均単価は急上昇し、19万円前後となっているという。液晶パネル自体は低価格化の一途をたどり、安いパネルを使った割安の製品も登場しているが、「パネル単価に左右されるビジネスは、われわれとしては気にしていない」(井原氏)とし、画質向上と、一層の大型化による付加価値アップで、液晶パネルの単価下落によるマージン率の圧迫を乗り切るという。

平均単価推移
ソニーの液晶テレビの平均単価は急速に上がっている

高単価維持への自信は、BRAVIAシリーズの好調な立ち上がりと急速な業績回復ばかりが理由ではない。ソニーマーケティング取締役の鹿野清(しかの きよし)氏は、「テレビの買い換えは8年おきと言われる。40インチ以上の大画面薄型液晶テレビへの買い換え需要の“大型化の波”がやって来ている」と説明する。大型ブラウン管の出荷台数は、今から6~8年前にピークを迎えた。つまり現在、家庭のテレビラックには26~32インチのブラウン管テレビが鎮座していて、そうしたテレビと設置面積の変わらない40インチ超の薄型液晶テレビへの買い換え需要が見込めるというわけだ。地上デジタル放送開始の追い風が吹くなか、ハイビジョン対応のハンディカム、年内予定のPS3のリリース、Blu-rayメディアの立ち上げと、ソニーはハイビジョン関連製品を全面展開。BRAVIAを“ハイビジョン総力戦”の中心に据えたい考えだ。

シェア 設置テレビサイズ
BRAVIAブランドはワールドワイドで定着し、高いマーケットシェアを獲得している家庭に設置されているテレビのサイズは26~32型が半数以上

画質とデザインで一層のブランド確立を目指す

BRAVIA登場以前のWEGAシリーズでは、熾烈な価格競争のなかで特色を失っていたかに見えたソニーの液晶テレビだが、BRAVIAで打ち出した鮮やかな色へのこだわりは、今回さらに強い訴求ポイントとなっている。

32V型以上の全モデルに搭載されるの“ライブカラークリエーション”は、赤・緑・青の原色の波長を強めつつ、その中間にある雑色スペクトルを低減する機能だ。実際に会場で展示された従来製品と新液晶を見比べると、特に森林や草原といった緑色の部分で鮮やかさが増しているように思われる。

コントラスト比も改善された。X2500シリーズで従来の1300:1から1500:1、V2500シリーズで従来の1300:1から1800:1(32型除く)、32V2500/32S2500では従来の1300:1から1700:1となっている。またX2500シリーズには、暗いシーンの表示時に自動的にバックライトの輝度を落とし、黒をより黒くする“アドバンスト・コントラストエンハンサー”という機能も追加されている。

ライブカラークリエーション機能 アドバンスト・コントラストエンハンサー
原色を鮮やかに再現するライブカラークリエーション機能バックライトの輝度を自動調整するアドバンスト・コントラストエンハンサー

動画色空間規格“xvYCC規格”にも対応する。xvYCCは今年1月にIEC(国際電気標準会議)に発行された国際規格で、精確で詳細な色再現性を動画コンテンツで実現できる。具体的には、自然界の物体色を代表する769色を従来の規格で表現すると55%の色しか再現されないのに対して、xvYCCでは100%が再現できる。会場に展示されたデモンストレーションを見ると、微妙な織物の色の階調変化や果物の色などで、かなり自然で実物に近いものとなっており、その違いは一目瞭然で分かる。ただし、映像ソースとしてxvYCCに対応するものは現在は流通・放送されておらず、今後の対応待ちとなる。ソニーでは具体的な製品名やシリーズ名は挙げていないものの、順次、映像機器でxvYCCに対応していくとしている。

xvYCC規格対応
xvYCC規格に対応し、高い色再現性をもつ

8月2日に発表されたシャープの薄型液晶テレビ“AQUOS”シリーズは、20V~37V型で価格レンジは14~38万円。BRAVIAは32V~52V型で23~85万円。フルHD対応はAQUOSは9機種中2機種、BRAVIAが11機種中7機種。大画面化と高画質化を追求するソニーの戦略が市場に、どう受け入れられるか、また今後シャープが、1月に稼働を開始した亀山第2工場から、どのような大画面製品を投入してくるかが注目される。

訂正とお詫び:記事掲載時、異なる人物が、ソニー鹿野氏として写真掲載されていました。写真を削除するとともに、本文の修正いたしました。

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