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歩行者を見る“眼”をもった安全なクルマ――NECエレの画像認識チップをトヨタが採用

2006年08月25日 16時35分更新

文● 編集部 西村賢

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クルマが歩行者を認識して急ブレーキをかける――。トヨタが9月に発売予定の高級車“レクサス”の『LS460』は、これまでの障害物センサーでは認識の難しかった歩行者との距離や相対速度を高い精度で検知する“眼”を、世界で初めて備えた。NECエレクトロニクスが開発した画像認識用並列プロセッサで可能になった。

トヨタのプリクラッシュセーフティ
前方の画像から立体的に障害物や人物を把握する

128個の並列演算で可能になった高速な画像処理

NECエレクトロニクス(株)と日本電気(株)は25日、トヨタ自動車(株)と(株)デンソーの協力を得て、車載向け画像認識用並列プロセッサーを製品化し、“IMAPCAR”(アイマップカー:Integrated Memory Array Processor for Car)の名称でサンプル出荷を開始したと発表した。

現時点でIMAPCARの採用が確定しているメーカーはトヨタのみだが、今後は国内外の自動車メーカーに販売していき、2007年度中には月産1万個を目指す。サンプル価格は2万円。

IMAPCAR
IMAPCAR。約2Wの低消費電力設計

IMAPCARは、128個の演算ユニットを実装した高並列プロセッサー。車載向けでは珍しい130nmの製造プロセスを採用し、消費電力は約2Wに抑えられている。各演算ユニットは独立したメモリーを内蔵し、高速な画像処理が可能だ。現在市場で販売されている画像認識プロセッサーに比べて約5倍の毎秒10億回(100GOPS)の演算性能をもち、白線、先行車、歩行者などの画像を、VGAサイズ、30fpsの動画ストリームでリアルタイムに認識できる。また、画像認識機能はソフトウェアで構成されるため、機能の追加や変更が容易という特徴もある。

これまでにも自動車メーカーは、近赤外線やミリ波レーダーなどを搭載し、障害物や周囲のクルマとの距離を計測、衝突防止のしくみを作ってきたが、非金属の歩行者の認識は難しく、十分な精度が得られていなかった。今回トヨタは、レクサスLS460で、ミリ波レーダーと画像認識技術の双方をもちいた総合的なセンシングシステム、“プリクラッシュセーフティシステム”を開発した。

レクサスLS460は、前方左右15度の範囲に歩行者を認めると、クルマの進行方向、速度、歩行者との距離などを総合的に判断して、衝突の危険がある場合にはブザーや警告ランプでドライバーに注意を促す。また、衝突が不可避であると判定された場合には強制ブレーキをかけ事故の衝撃を最小限に抑える。

テンプレートマッチング
テンプレートで画像をサーチして歩行者を認識する

交通事故死亡者数を5000人にまで抑える

交通戦争と言われた時代に毎年1万人を超えていた交通事故による死亡者数は、エアーバッグの普及などで、近年7000人を切るまでに減少してきたが、歩行者の死亡者数は2500人と依然多い。今後、技術の進歩に合わせて行政と業界で安全基準を定め、2012年には交通事故による死亡者数を5000人程度に減らす目標だという。

NECエレクトロニクスは車載画像認識システムの市場規模は、2010年に本格的に立ち上がり、2015年ごろには国内のクルマの約半数が、こうしたシステムを標準搭載すると見る。同社は2015年に1800万台となる市場の40%の獲得、売上高200億円を目指す。

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