ノバックの「どこでもTV for Skype」は、IP電話ソフト「Skype」によって接続された環境で、遠隔地のパソコンからTV視聴を可能とする機器だ。本体の基本的な構造はUSB端子に接続するシンプルなTVチューナーユニットで、配信・視聴機能はSkypeのビデオチャット機能を使うため、本体や付属ソフトウェアは非常にシンプルに作られている。なお、本製品にはSkypeソフトそのものは添付されておらず、ユーザー自身があらかじめダウンロードしてインストールし、Skypeを利用可能な状態にしておく必要がある。
ガムパッケージのようにコンパクトなTVチューナー
写真1 ノバックの「どこでもTV for Skype」。 |
チューナー本体はガムのパッケージのような直方体のユニットで、表面の黒い部分(金属のメッシュ構造)を通して内部のチューナーボードを見ることができる。一方の端にある白いキャップを外すと現れるUSB端子によって、パソコンにそのまま挿すことができる。USB延長ケーブルも付属するため、背面にしかUSB端子がないパソコンでも接続しやすい。底面(USB端子の反対側)には、こちらも付属のアダプタケーブルを介してTVアンテナを接続する入力端子がある。ハードウェア的なセットアップ(準備)はこれだけだ。
写真2 USB給電(450mA以上の電流が必要)で動作するため電池などは必要としない。サイズは単3電池×2本よりも小さい。 |
写真3 黒いメッシュカバーを外してみると、シリコンチップ化されたチューナーなど非常にシンプルな構造が分かる。 |
ソフトウェアのセットアップも、Skypeが利用可能な環境であれば、あとは付属のチューナー制御アプリひとつをインストールするだけだ。インストール後は制御アプリがタスクバーに常駐し、ポップアップメニューでチャンネル操作が行なえる。あとはSkype側の設定で「ビデオ入力」を「LF2000」(本機のハードウェア名)と指定すれば準備は完了だ。
TV視聴を行なうクライアント側は特に設定不要で、クライアント側のSkype(ホスト側とは別のアカウント)のビデオチャット機能をONにしてホスト側にSkypeのコールを行なう。コンタクトが成立すればSkypeのクライアントにTV画面が表示されるというわけだ。チャンネルの指定もSkypeのチャット機能を用いて「##1#」(1チャンネルに切り替え)と入力すればよい。ビデオウィンドウのサイズは可変で、フルスクリーン表示にもできる。転送される動画の解像度はQVGAサイズ(320×240)ドットで、ニュースなどの字幕表示も十分読むことができる。
写真3 上側(写真手前)のキャップを外すとUSBプラグ、下側(写真奥)には付属のアダプタを介してTVアンテナの同軸ケーブルを接続できる。このほかUSB延長ケーブルも付属する。 |
と、以上が本製品にできることである。タイムシフト視聴やHDD録画・配信機能、ほかのTVチューナーカードやビデオ機器との連携には対応していない(そもそもビデオ入力端子を持っていない)。つまり現時刻にチューナーを設置した場所で放送されているものを、遠隔地から視聴することができるというものであり、ネットワーク経由で視聴できるHDDレコーダーのような使い方はできないわけだ。また、1対1のコンタクトしか利用できない(複数人がホストをコールしてTVを見ることはできない)。
もっとも、不特定多数への配信機能があれば著作権上の問題が発生するため、メーカーとしても意図的にこの程度の機能に抑えているとも言えそうだ。また、ホスト側パソコンではテストモード以外に自分がTV画面を見る機能は用意されていないため、1台のパソコンでTVを見るためのツールには向いていない。
画面5、6 クライアント側の画面。どこでもTV for SkypeをセットアップしたマシンにSkypeで接続すればビデオが表示され、チャット画面(左側)でチャンネルも指定できる。 |
画面7 ウィンドウサイズは可変。 |
写真A ソニーのロケーションフリークライアント「LF-PK1」。 |
ソニーの「ロケーションフリー」など、旅行や出張中にノートパソコンからインターネット経由で自宅のパソコンに録画したTV番組を視聴する、という使い方が注目されているが、どこでもTV for Skypeは遠隔TV視聴機能としては最もシンプルな解決方法のひとつと言える。外部ビデオ入力がないためビデオ機器に撮り溜めた映像を楽しむことはできないし、録画機能がないためTV番組を見るためには“その時間帯”にアクセスする必要がある(時差のある海外旅行中は、ちょっとツラい!?)。
また、ホスト側のパソコンではSkypeを自動応答にセットしている必要があるため(接続時にパスワードで認証)、普段からホスト側パソコンのSkypeを頻繁に使っているユーザーには若干不便を強いるかもしれない。例えば、クライアントとなるパソコン(外出先に持ち出すノートパソコンなど)をメインに使っており、ホスト側パソコンはファイルサーバーのような、あくまでTVチューナー用として使い分けられる方には向いているだろう。
画面8 コンタクトが成立したときのホスト側の画面。TV画像は表示されるが、コンタクトのないときに表示する機能はない。 |
もっとも、ホスト側/クライアント側ともにTVを表示しながらのSkypeの通話やチャットは可能なので、普段から出張先ではSkypeで家族に電話しているという場合には、さらにTV画面を一緒に見ながら会話に花を咲かせるといった使い方も考えられる。
遠隔TV視聴環境としては非常にシンプルなシステムであるが、9800円という安価なうえにチューナー本体も小型でセットアップも単純(初心者でも迷わない)というのは大きな魅力であり、余ったパソコンをチューナー専用機にしたりSkypeユーザー同士がTV番組を見ながら盛り上がるなど、用途は広い。本格的なロケーションフリー環境を作るのは大変だとか、初期導入コストに二の足を踏むというユーザーは、最初のステップとしてこちらを試してみてはいかがだろう。
どこでもTV for Skypeの主なスペック | |
製品名 | どこでもTV for Skype |
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インターフェース | USB 2.0、専用アンテナ端子 |
TVチューナー | 地上アナログ放送(VHF、UHF、CATV) |
対応OS | Windows XP Home Edition/Professional SP2以降 |
動作環境 | メインメモリー 128MB以上(256MB以上を推奨)、HDD 空き容量10MB以上(Skypeのインストール分を除く) |
本体サイズ | 26(W)×95(D)×12(H)mm |
重量 | 約30g |