日本電気(株)(NEC)と松下電器産業(株)、パナソニック モバイルコミュニケーションズ(株)の3社は27日、携帯電話機で通信以外の共通プラットフォーム開発および共同商品開発(受託開発業務)を行なう合弁会社を設立することで合意したと発表した。
開発合弁会社の設立発表会で握手する、NECの矢野 薫社長(左)と、松下電器の大坪文雄社長 |
NEC、Panasonicブランドは継続し、独自性も継承される
今回設立される合弁会社は、共通化できる部分を共同開発することでコスト削減と開発スピードの加速を促し、今後2010年代初頭にかけて3.5Gや3.9G(※1)といったより高速・大容量通信、多機能・高性能化が求められる携帯電話機の技術基盤を確立するのが狙い。それにより商品企画や商品開発、独自性をアピールできる要素技術などにリソースを集中できるとしており、販売や製造などについては、従来通り各社で行なう。そのため新会社の設立後も、NECとパナソニックモバイルは、引き続き“NEC”“Panasonic”ブランドを継続使用する予定としている。
※ 3.5G、3.9G 3.5Gは、第3世代携帯電話(W-CDMAやCDMA2000)の通信速度を上げたもので、HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access、下り回線の高速化)技術が実用化されている。理論上最大約14Gbpsの高速通信が可能になるという。3.9Gは3.5Gを長期発展させるべく標準化団体“3GPP3”が“Long Term Evolution4”として検討している高速通信規格。開発合弁会社(名称未定)の役割と3社の関係図 |
合弁会社の社名は未定で、今年10月上旬をめどに設立される予定。所在地は横浜市都筑区。出資総額は1億円で、比率はNECとパナソニックモバイルがそれぞれ50%(5000万円)の予定となっている。役員構成は社長/副社長/取締役2名の4人体制で、社長をNECから、副社長をパナソニックモバイルからそれぞれ出向予定。従業員数は約140名を予定している。
新会社の業務内容は、
- 共通ソフトウェアプラットフォームの検討および開発
- 共通ハードウェアプラットフォームの検討および開発
- 共同商品開発(上記プラットフォームを用いた商品開発)
となっており、ハードウェアプラットフォームにはアプリケーションCPUや統合チップの設計・評価、基幹デバイスの選定・推奨、設計・評価、および調達先の評価・選定・推奨、評価基板(ブレッドボード)の設計・製造が含まれる。
3社は2001年8月から、携帯電話機の開発における協業を開始しており、2004年11月には(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモとNEC、パナソニックモバイルの3社が共同開発したLinux OSベースのミドルウェアプラットフォームがFOMA端末に搭載されるなど、実績を挙げている。
松下/NEC/TIらが通信プラットフォーム開発の
合弁会社“アドコアテック株式会社”の設立で合意
一方、通信プラットフォームについても共同開発を進める。NEC、NECエレクトロニクス(株)(NECEL)、松下電器、パナソニックモバイル、米テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)社(TI)の5社は同日、第3世代(3Gおよび3.5G)以降の携帯電話機で通信技術の中核を担う通信プラットフォームの開発・設計・技術ライセンスをグローバルに行なう合弁会社の設立で合意し、合弁契約に調印したことを発表した。
アドコアテックと端末メーカー、半導体メーカー、および5社の関係図 |
合弁会社は8月中に設立され、新会社の社名は“アドコアテック株式会社”。所在地は神奈川県横須賀市の横須賀リサーチパーク内となる予定。5社の出資総額は120億円で、比率はNECとNECEL、松下電器とパナソニックモバイルがそれぞれ合計約44%(約52億8000万円)、TIが約12%(約14億4000万円)。従業員数は、当初約180名を見込んでいる。
合弁会社で開発・設計される通信プラットフォームとは、
- LSIの基本回路設計図
- 基本回路を制御するソフトウェア
- 上記の上で通信を司る部分
- 上記をまとめてモデムとして動作させるソフトウェア
- これらを組み込んだハードウェア、ソフトウェア全般
を指す。
新会社の開発成果物は2007年秋目標で
グローバルにライセンスされる
今回の協業によって、新会社は参加5社の持つ開発リソースを獲得して、競争力のある3G以降の通信プラットフォームを開発し、NECELと松下電器(半導体社)、TIにライセンス提供する。NECELや松下電器(半導体社)、TIはこれら技術を基にした半導体を生産。NECとパナソニックモバイルは、その半導体を両社の携帯電話機に搭載する。また、生産された半導体は国内外の携帯電話機メーカーにも販売されるとともに、携帯電話機の商品化に必要なソフトウェアや通信プラットフォーム、システム評価、カスタマイズサービスなどを広くライセンスする、という。
新会社の開発成果物を採用した製品出荷は、2007年秋頃を目標にしている。
「世代変化に対応する基盤技術を
世界に先駆けて確立するために」と大坪氏
経団連会館で行なわれた発表会では、NECの代表取締役 執行役員社長の矢野 薫(やの かおる)氏、松下電器の代表取締役社長の大坪文雄(おおつぼふみお)氏らが出席し、合弁会社設立に関する説明を行なった。
松下電器の大坪文雄社長 |
まず大坪氏が、現在の携帯電話機市場を取り巻く環境について「高機能化、多機能化していく現状において、グローバルに先行して開発できる技術力、開発力が勝ち残るメーカーの必須条件である」とし、今回の2つの合弁会社の設立の目的について「世代変化に対応する基盤技術を世界に先駆けて確立するためのプラットフォームの共通化と共同開発を徹底して推進し、開発効率を最大に高めることである」と語った。加えて、「あくまでNEC、松下電器の製品を最良のものにしていくのが最終的な狙いであり、この合弁会社設立によって事業をそれぞれ統合することは考えていない」と語った。
NECの矢野 薫社長 |
矢野氏はNECと松下電器それぞれの携帯電話機に対する思いとして、「NECの携帯電話機にはNECのファンがついており、松下電器の携帯電話機には松下電器のファンがそれぞれついている。今回の合弁会社の設立によって、それぞれのいいところを引き出して、共にトップを競り合っていきたい」と語った。