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“国際Dシネマ映画祭”長編最優秀作品はルゥ・シュエチャン監督の“契約”に!

2006年07月25日 18時03分更新

文● 千葉英寿

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引き続き、長編部門国際コンペティションの表彰が行なわれた。長編部門では、国内と52の国と地域から総計283本の応募があり、その中から厳選された12本のノミネート作品が競う形になった。発表は上田埼玉県知事、プレゼンターは審査委員長のリチャード・ジョブソン(Richard Jobson)氏が務めた。ジョブソン氏はイギリスでプロデューサー/脚本家/監督として活躍する人物で、映画“Tube Tales(チューブテイルズ)”を制作したことでも知られる。審査はジョブソン氏のほか、米国の演出家のロバート・アラン・アッカーマン(Robert Allan Ackerman)氏、作詞家/演出家/キャスティングディレクターの奈良橋陽子さん、シネカノンのプロデューサー、李鳳宇氏が務めた。受賞作品は以下の通り。

■長編部門(国際コンペティション)

[最優秀作品賞/ソニーDシネマアワード]
(主催者賞:賞状、トロフィー/ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞賞金1000万円)

“契約”
“契約” 監督:ルゥ・シュエチャン(The Contact/Lu Xuechang)(100分/中国/2005年/HDCAM/HDCAM)

[新人監督賞/ソニーDシネマアワード]
(主催者賞:賞状、トロフィー/ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞賞金200万円)

“プレイ”
“プレイ” 監督:アリシア・シェルソン(Play/Alicia Scherson)(105分/チリ・フランス・アルゼンチン/2005年/HDCAM/HDCAM) (c)Joseph Costa

[脚本賞/ソニーDシネマアワード]
(主催者賞:賞状、トロフィー/ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞賞金100万円)

“シュニッツェル・パラダイス”
“シュニッツェル・パラダイス” 監督:マルティン・コールホーベン(Schnitzel Paradise/Martin Koolhoven)(84分/オランダ/2005年/HDCAM/Digital BETACAM) (c)Victor Arnolds

[技術賞/ソニーDシネマアワード]
(主催者賞:賞状、トロフィー/ソニーDシネマアワード;トロフィー、副賞賞金100万円)

“スクジーテク<小さな妖精>”
“スクジーテク<小さな妖精>” 監督:トマーシュ・ボレル(Skritek/Tomas Vorel)(87分/チェコ/2005年/Digital BETACAM/HDCAM)

[審査員特別賞/ソニーDシネマアワード]
(主催者賞:賞状、トロフィー/ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞賞金100万円)

“スイカの皮からの旅立ち”
“スイカの皮からの旅立ち” 監督:アフメット・ウルチャイ(Boats Out of Watermelon Rinds/Ahmet Ulucay)(101分/トルコ/2004年/DVCAM/Digital BETACAM) (c)IFR.A.S.

審査員特別賞を受賞した“スイカの皮からの旅立ち”のプロデューサーのベルース・ハセミアン氏は、「日本とのつながりができたことに感謝します」と語った。技術賞を受賞した“スクジーテク<小さな妖精>”のトマーシュ・ボレル(Tomas Vorel)監督のご子息で俳優のトマーシュ・ボレルJr.(Tomas Vorel Jr.)氏は「監督は次回作の準備があって日本には来られませんでした。今回の賞はスタッフの励みになると思います」と、代理として受賞した喜びを語った。今回初めて設けられた脚本賞を受賞した“シュニッツェル・パラダイス”のスタッフは全員帰国していたため、脚本のマルコ・バン・ヘフェン氏が、「とてもうれしいです。素晴らしいセレモニーをお楽しみ下さい。またみなさんにお会いできることを楽しみにしています」と電話でメッセージを寄せた。新人監督賞を受賞した“プレイ”のアリシア・シェルソン監督は「この素晴らしい映画祭とSKIPシティに感謝します。また、この映画祭に戻ってきます」と喜びを表現した。

ベルース・ハセミアン氏 トマーシュ・ボレルJr氏 アリシア・シェルソン監督
長編部門の審査員特別賞を受賞した“スイカの皮からの旅立ち”のプロデューサー、ベルース・ハセミアン氏長編部門の技術賞を受賞した“スクジーテク<小さな妖精>”の俳優、トマーシュ・ボレルJr氏長編部門の新人監督賞を受賞した“プレイ”のアリシア・シェルソン監督

最優秀作品賞に“契約”がコールされると、客席に座っていたルゥ・シュエチャン監督を始め、関係者は喜びを隠せないようで、手を取り合って喜んでいた。壇上にはルゥ監督と主演を務めたリ・ジャーシュエンさん、パン・ユエミン氏も登壇した。リさんは「とてもうれしいです」と語り、表彰式に華を添えた。また、パン・ユエミン氏は「全然呼ばれそうもないので、眠くなっていたところでしたが、びっくり仰天し、すっかり目が覚めました。一生忘れられない出来事になりました」と述べ、会場を沸かせた。ルゥ監督は、「本当に素晴らしい賞をありがとうございます。今回、初めてデジタルシネマで作りました。今後もデジタルシネマを作っていきたいと思います」と意気込みを語った。

ルゥ・シュエチャン監督 主演女優リ・ジャーシュエンさん
長編部門の最優秀作品賞に輝いた“契約”のルゥ・シュエチャン監督黒のシックなドレスで登壇した“契約”の主演女優リ・ジャーシュエンさん
リさん 俳優のパン・ユエミン氏
リさんはヒットした映画“ションヤンの酒家”で知られる、日本でも人気の女優だ“契約”に出演した俳優のパン・ユエミン氏(左)は「一生忘れられない出来事になりました」と語った

最後にジョブソン氏が総評を行なった。「作品すべてにおめでとうの気持ちを表わしたいと思います。長い時間、話し合って決めました。世界は大きく、奇妙で、恐ろしく、美しく、色々なものが描かれていました。各作品を通じて、いろいろなメッセージ、ハート、人間性を共有すべきものだと感じました。これらに出てくるテーマには“家族”がありました。“契約”は一番美しいメッセージである“希望”を示していました。デジタルを駆使した色の使い方で、自然やネオンの輝く街が描かれていました。クラシカルなスタイルでありながら、ハートのある、光るような特別な作品でした」と選評の理由をまとめた。

リチャード・ジョブソン氏
総評を行った長編部門の審査委員長、リチャード・ジョブソン氏。「(自分は)制作している側なので、選ぶのは大変でしたが、とてもいい経験をしました」と語った

世界地図にも載っていない川口が
世界に冠たるデジタル映画の中心に!

最後に瀧沢裕二ディレクターが映画祭のまとめを行ない、続いて岡村幸四郎川口市長が挨拶に立った。まず瀧沢氏は、「手応えを感じています。作品のクオリティーが上がってきており、若い作家がデジタルの力を借りて、クオリティーの高いものに挑戦し始めてきています。世界の映画を作る力がデジタルによって上がってきたと思います」と語った。岡村市長は「無事に終わってとてもうれしいです。世界地図には川口は載っていませんが、その川口に世界52ヵ国(と地域)から作品が集まってきた。これはスゴいことをお手伝いしているのではないか、と感じています。10年10回、がんばって取り組んで行きましょう。来年、4回目にお会いしましょう」と締めくくった。

表彰式の終了後には受賞監督が集まって記者会見が行なわれた。デジタルシネマは初めてというルゥ・シュエチャン監督とアリシア・シェルソン監督への質問に対し、ルゥ監督は「制作に関する利便性を感じました。いままでフィルムで撮ってきましたが今後はデジタルで撮ります。質感の問題などもありますが、時間が解決してくれるでしょう。(ソニーの)『F900』HDカムを使用したのですが、レンタル料金がもっと安ければいいのですが」と語ると、シェルソン監督も「(デジタルシネマには)経済的な利点がありますが、チリではレンズのオプションがなかったのです。レンズが高いということがあります」としつつ、「フレームや色をコントロールできること。HDモニターで確認できるところも素晴らしいですね」とデジタルシネマ制作のメリットを具体的に語った。

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