(株)ウィルコム代表取締役社長の八剱 洋一郎(やつるぎ よういちろう)氏は19日、“日本の移動体通信市場に新時代を拓くPHS”と題した講演を行なった。PHS加入者の現状や上下20Mbpsの転送速度を実現する次世代PHSなどについて説明した。
(株)ウィルコム代表取締役社長の八剱 洋一郎氏 |
PHS加入者数の推移 |
まず、ウィルコムの加入者について、6月末の時点で408万契約に上ることを説明。ほかの事業者を含めた日本全体のPHS加入者数は477万契約で、実に85.5%が同社の加入者であることを強調した。
“マイクロセル”と“マクロセル”の違い |
同氏は、ウィルコムのPHS網の強みとして“マイクロセル”方式を挙げた。他社の携帯電話やPHSが1基地局で広いエリアをカバーする“マクロセル”方式、を採用しているのに対し、マイクロセル方式はひとつのエリアを多数の基地局でカバーする。これにより通信密度が高いエリアでも1つの基地局にトラフィックが集中せず、ユーザーひとりあたりの帯域をより多く確保できるという。同氏はそのメリットとして「大量のデータ運送に向いている」ことや「ユーザーが集中してもデータ転送スピードが落ちにくい」ことなどを挙げた。
その結果として、定額サービスにおいても、速度・品質を維持したままサービスを提供することができたという。また2005年5月にサービスを開始した“ウィルコム定額プラン(音声定額)”は「誰でも、何人でも定額通話が可能」なことが受け、口コミにより爆発的にユーザー数が増加したという。
5日に発表した“W-ZERO3 [es]”については、「(現在の同社製品ラインナップにおいて)VOICE(音声)系とDATA(通信)系の間が空いている」ということで提供したデバイスだとし、その特徴などを説明した。予約も好評ということで「(初代W-ZERO3の販売台数)15万台をかなり超える」と予想。よりユーザーが増えるためにコンテンツの拡充が重要との見解を示した。
“高度化PHS”の次に控える“次世代PHS”
“高度化PHS”の転送速度一覧 |
今後のPHSサービスとして同氏は、現状のPHS方式を発展させた“高度化PHS(W-OAM)”について説明した。従来“QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)”という変調方式を採用していたが、今年2月に“8PSK(8 Phase Shift Keying)”という変調方式を採用したサービスを開始。データ通信速度はQPSKが現状の最大(8x)で256kbpsだったのに対し、8PSKでは408kbpsにまで高速化されている。今後についても“16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)”“32QAM”“64QAM”という変調方式の実証実験がすでに完了しており、16QAM(8xで約500kbps)のサービス提供を1年以内に実施できるという。
次世代PHSの主な仕様 |
また次世代PHSについても説明した。現在規格を策定中だが、“OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)”および“MIMO(Multiple Input Multiple Output)”技術を使って上下対称で20Mbpsのデータ転送速度を実現できるという。現在実証実験を進めているバージョンは実効3~5Mbps程度だが、8月から実験を開始する新バージョンでは「(20Mbpsの転送スピードが)実際に出る姿をみなさんご覧いただける」と意気込んだ。