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英シンビアンCEOが来日会見――「日本はイノベーションの中心」

2006年07月12日 19時22分更新

文● 編集部 橋本優

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Symbian OSを搭載した携帯電話機『M600i』(左)と『W950i』(右)。どちらも英ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ社製で、日本で発売の予定はない

シンビアン(株)は12日、英国本社(Symbian社)の最高経営責任者であるナイジェル・クリフォード(Nigel Clifford)氏の来日記者会見を東京・汐留で開催した。世界や日本におけるスマートフォン市場と、同社のスマートフォン用OS『Symbian OS』についての話が中心となった。

世界市場の動向を見極めるうえで日本市場に注目

Nigel Clifford氏
Symbian社 最高経営責任者のナイジェル・クリフォード氏

まず同氏は全世界のスマートフォン市場の成長について語った。今年1月から3月までの期間で、全世界で1650万台のスマートフォンが販売されたという。2005年1月~3月の販売台数(900万台)を引き合いに出し、市場が急速に成長していることを強調した。

販売台数グラフ
Symbian OS搭載携帯電話機の全世界の出荷台数推移グラフ

その中で、同社のOSを採用している携帯電話機のシェアは70%を誇るという。今年の第1四半期の同社OS搭載スマートフォンの販売台数は1170万台に上り、これは2004年の年間出荷台数の1400万台に迫る勢いだとした。また、今年の3月に発売されたフィンランドのノキア社製携帯電話機『NOKIA 3250』がSymbian OS搭載の100機種目の携帯電話機となったことに触れ、同携帯電話機がすでに100万台が販売されたとその実績を評価した。

地域別グラフ
世界市場における地域別の出荷台数の割合

地域別では、ヨーロッパ、中東、アフリカ地域が一番大きなシェアを誇るが、最も急成長を遂げているのは日本市場、次いで中国市場だという。これらの地域で成功し続けるために、ふたつのことが必要だと同氏は語った。ひとつは「お客さまのニーズを的確に捉えること」、もうひとつはパートナー企業とともに「ローカルの要求事項をきちんと収集すること」で、これらの情報は本社にフィードバックされ、製品ロードマップに反映されていくのだという。

同氏は日本市場について「イノベーション(技術革新)の中心だと強く感じている」と語った。同氏が電話業界に身を置いた20年前は、まずアメリカ市場の動向を見て世界市場で何が起こるかを計っていたが、現在はまず日本市場に注目するという。その理由は日本で普及している携帯電話機のほとんどがスマートフォンであるから、とした。なお日本では35機種の携帯電話機がSymbian OSを採用しており、最新のものは(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのFOMA携帯電話機『DOLCE SL(SH902iSL)』(シャープ(株)製)となる。

同氏は「携帯電話を作る、ということはお客さまを満足させるひとつのステップに過ぎない」と語り、その上で動作するサービスやアプリケーションが重要になるとの認識を示した。これらについても日本で提供されているものが世界に波及すると考えているとした。

最後に、本日発表されたSymbian OS新バージョンである『Symbian OS v9.3』について触れ、互換性に優れていることなどを強調した。

日本国内で出荷台数が1000万台を突破

シンビアン(株) 代表取締役社長の久 晴彦氏
シンビアン(株) 代表取締役社長の久 晴彦氏

続いて壇上に上がった日本法人代表取締役社長である久 晴彦(ひさ はるひこ)氏は、日本市場の動向について説明した。

国内のSymbian OS搭載携帯電話機
日本で発売されているSymbian OS搭載携帯電話機

2005年の第1四半期と今年の第1四半期を比較すると、出荷台数ベースで300%の成長を遂げたという。また今年の5月末において、Symbian OS搭載機の日本国内出荷台数が1000万台を突破。この勢いは「去年からスピードアップした」という。

欧米などと比べ、日本では機能やサービスに対する要求が進んでいるため、特にパートナーが重要であることを強調した。開発パートナーは世界で300社 、日本では携帯電話機製造メーカーも含めて31社が存在する。これらのパートナーとは、3ヵ月ごとに集まって日本市場でどんな機能やサービスが要求されるかを話し合う“JRB”(Japan Review Board)や、世界の通信事業者同士が話し合う“ORB”(Operator Review Board)などを実施している。また技術解説書の発行や講習会、トレーニングの開催など、技術者育成にも力を注いでいるという。

オープンかつ安全なSymbian OSを強調

David Wood氏
Symbian社 調査研究担当取締役副社長のデビッド・ウッド氏

最後に、本社の調査研究担当取締役副社長のデビッド・ウッド(David Wood)氏が壇上に上がり、Symbian OSのセキュリティーについて説明した。

Symbian OSはオープンなOSであり「リッチなオープン性によってリッチなイノベーションが生まれてくる」と語った同氏。ただし「オープンということは脆弱」ということにもつながるため、問題にもなると指摘。その上でSymbian OSは「セキュアーなオープン性を提供」しているという。

Symbian OSにおいては、ソフトウェアはインストールしても、ユーザーが承認しなければ実行されることはない。またアプリケーションの作成者が公表されていなかったり、同社の認証、署名がされていないものであれば、その旨を警告するメッセージが表示されるという。また“バッファーオーバーフロー”(バッファーの許容量を超えるデータが送られた際に発生する脆弱性)への対応も、独自のクラス(text Descriptor)を使用することで防止できるとした。

同氏は唯一の脆弱性として「ユーザーが注意を怠ってしまった」場合を挙げた。しかしSymbian OS v9以降に実装されている“プラットフォーム・セキュリティ”技術により、ユーザーの判断ミスで悪質なソフトをインストールしても、重大なミスにはつながらないと語った。プラットフォーム・セキュリティでは、携帯電話機の重要な機能を利用するソフトウェアには署名を要求するためだという。

同氏は「シンビアンのパワーはプラットフォームの価値と大量の販売台数からなる。強力なOSにより、強力なエコシステム(OSとアプリケーション開発の好循環)を進めていく」と締めくくった。

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