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【最新パーツ性能チェック Vol.42(番外編) 】幻の“Socket 479版C7-M”を独占入手! もしもC7が915GMマザーで動いていたら世界は何が変わったか?

2006年07月11日 21時10分更新

文● 月刊アスキー編集部 野口岳郎

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Socket 479版が仮に存在した場合のメリット

 AMDがAthlon以降、インテルCPUとのピン互換戦略をやめてしまってから“ピン互換のCPU”を見る機会がめっきり減ってしまった。仮にこのCPUが登場していたら、久々のピン互換となっていたわけだが、ユーザーにとってはピン互換のCPUは純正品にはないなんらかの特徴、たとえば“速い”とか“安い”とか、最近では“消費電力が非常に少ない”といったメリットがなくてはわざわざ使う意味がない。
 C7の性能は、少なくともVIA製チップセット“CN700”上では、同クロックのPentium Mに比べるとかなり低い。そのため、メリットとしては価格(単体販売されていないのでなんともいえないが、ダイサイズからすればPentium Mよりかなり安く売れそうである)と消費電力(トランジスタ数が少ないことと、IBMのSOI 90nmプロセスを使っていることが有利に働く)がポイントとなるだろう。

 だが、Vol.39での評価からすると、C7をインテルベースのソケットに装着することには性能面での大きな期待もかかる。というのも、VIAマザーでのテストにおいては、C7のメモリ性能がPC4200(=4.2GB/秒の転送能力を持つ)装着にもかかわらずわずか0.8GB/秒にとどまっていたからだ。VIAマザーのFSBは400MHzなので、FSB性能は3.2GB/秒。控えめに見ても2GB/秒くらいは出て当然である。1GB/秒にも届かないというのは、CPUあるいはチップセットの内部経路にP6バス時代の上限である1.06GB/秒を想定したボトルネックがあるのではないかという疑念が沸く。仮にチップセット(CN700)側に問題があるとしたら、今回915GMを使うことで、メモリ性能の大きな飛躍が期待できる。しかも915GMはDDR2利用時にはデュアルチャネルもサポートするので、内蔵ビデオにかなりの帯域を食われてもメインメモリに十分なメモリ帯域を確保できるはずだし、3D描画時にはこのメモリ帯域が生きてくるだろう。さらに、PCI Expressスロットつきのマザーであれば、C7では不可能な高性能ビデオカードとの組み合わせも可能になる。
 実際にどうなのか、さっそくテストしてみよう。

メモリ性能、アプリ性能ともにアップ!

 以下、テスト結果を掲載する。比較対象としては、以下の6パターンを設定した。

●C3-1.33GHz VIAのEPIA-SP13000利用時の結果。CPUはC3(C5Pコア)、FSBは133MHz、メモリはPC2100/512MB。

●C7-1.5GHz VIAのEPIA-EN15000利用時の結果(本稿VOl.39参照)。CPUはC7(C5Jコア)、FSBは400MHz、メモリはPC-4200/512MB。

●C7M-1.5(X700) Socket 479版C7-Mを、i915GMマザーに搭載し、PC4200×2(デュアルチャネル、1GB)環境で、ATI X700proビデオカードを装着した場合の結果。

●C7M-1.5(1G) Socket 479版C7-Mを、i915GMマザーに搭載し、PC4200×2(デュアルチャネル、1GB)環境で、内蔵ビデオを用いて計測した結果。

●C7M-1.5(1G) Socket 479版C7-Mを、i915GMマザーに搭載し、PC4200(シングルチャネル、512MB)環境で、内蔵ビデオを用いて計測した結果。

●Pentium M-1.5GHz Dothanコアの2.13GHz品を、FSB 400、動作クロック1.5GHzに落として計測し、内蔵ビデオを用いて計測した結果。メモリはPC4200シングルチャネル/512MB。

 なお、今回使用したSocket 479版C7-Mは、市販されているSocket 479マザーボードには装着しても動作しない。今回はBIOSをC7用に特別に改造したものを使用した。

編集部注:ここで使用したマザーボードおよびBIOSに関してはお答えできません。あらかじめご了承ください。

 まず期待がかかるメモリ性能から(グラフ1)。同条件(オンボードメモリ、シングルチャネル)のC7M-1.5(512)と製品版C7を比べると、20%強の性能アップが得られている。とはいえ、FSBの理論性能(3.2GB/秒)に比べればまだずいぶん低い。同じFSB性能のPentium Mに比べても、半分の性能にとどまっている。デュアルチャネルにすると若干、外付けビデオにするとさらに若干、性能は上がるが、差はわずかだ。どうやらチップセットではなく、C7そのもののメモリアクセス性能に弱点があるようだ。
 各種アプリによるベンチマークでは、メモリ性能が比較的大きく響く「Superπ」で10%ほど、エンコードのテストでは2%強、それぞれスコアを伸ばしている(グラフ2、3)。メモリ性能向上分が順当に寄与したかたちだ。ただ、Pentium Mとの大きな性能差は埋まらない。
 外付けビデオカードが使えるため、3Dのベンチマークは大きく向上する(グラフ4)。さすがにハイエンドボードを入れても、ヘビーな3DゲームをするにはCPUパワーとのバランスが悪いが、オンボードビデオの3D性能で満足できないときに、VIAマザーでは不可能なPCI Expressカード装着が可能なのは役に立つ局面もあるだろう。
 消費電力は、VIAマザーに比べて3Wほど多めになっている(グラフ5)。C7より消費電力が少ないはずのC7-Mだが、チップセットやマザーボード上のパーツの電力消費が、VIAマザーより多いのだろう。また、きちんとC7-Mのパワーマネージメントが効いていない可能性も高い。
 おもしろいのはマクロで作ったWordとExcelのベンチマークの結果だ(グラフ6、7)。これを見ると、同じクロック周波数のC7を使っているのに、VIAの“CN700”マザーのほうが、915GMよりも性能が高いことがわかる。このテストはほとんどが2Dの描画なのだが、元祖Windowsアクセラレータメーカーで知られるS3社の技術が入っている“UniChrome Pro”エンジンの力なのか、ドライバの完成度なのか、ともあれ一矢報いた。内蔵ビデオ機能を使ってのオフィスワークには実はCN700が向いているのかもしれない。(次ページへ続く)

グラフ1 「Sandra 2005」によるメモリ性能テスト。915Gマザーに乗せたC7Mは、CN700マザーのC7に比べ20%ほど高速になっている
グラフ2 「Superπ」による演算性能のテスト。棒が短い方が高速。メモリが高速化したのを反映し、10%弱の性能向上を見せたが、Pentium Mは遙かに遠い
グラフ3 「Windows Media Encoder」による動画圧縮テスト。棒が短い方が高速。C7と比べての速度向上は2%強。同クロックのPentium Mは2倍以上速い
グラフ4 「3DMark 2001」による3D描画テスト。飛び抜けているのは外付けのX700 proボードを装着したもの。C7同士でも、CN700内蔵よりも915内蔵タイプのほうが1.5倍ほど高速になっている。C7MとPentium Mの差はCPU能力の差ということになる
グラフ5 消費電力のテスト。Pentium Mは、2.13GHz品を1.5GHzにダウンクロックした参考値。C7同士だと、915マザーのほうが3Wほど消費電力が多くなっている
グラフ6、7 WordおよびExcelのマクロで作ったテスト。Pentium Mでの速度を1とした(長いほうが高速)。915GよりもVIAのCN700のほうが成績が良好だ

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