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「売り上げ1000億円を目指したい」――サイボウズ、東証一部上場指定へ

2006年06月30日 17時56分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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サイボウズ(株)は30日、東京・飯田橋の同社オフィスにプレス関係者を集め、7月3日に東京証券取引所の取引所市場第一部(東証一部)に指定されることが決まったと発表するとともに、同社の今後の事業展開について説明した。発表会には代表取締役社長の青野慶久(あおのよしひさ)氏、取締役副社長の津幡靖久(つばたやすひさ)氏らが出席し、一部上場に当たっての決意やグループ会社全体での事業展開の方向性を示した。

代表取締役社長の青野慶久氏
代表取締役社長の青野慶久氏

「東証の2位から1位になるんだって?」

最初に青野氏が挨拶に立ち、実家の母親に東証一部上場指定が決まったことを報告すると、「東証の2位から1位になったんだって? すごいねー」とちょっと誤解を含みながらも、たいそう喜ばれたことを報告した。

グループウェアの国内シェア
グループウェアの国内シェア

東証一部上場に決まった理由として、青野氏は

  • 収益が安定してきたこと
  • 株主が1万人を超えたこと
  • 創業者が引退し、同族会社のイメージが払拭されたこと
  • グループウェアの国内シェアトップが見えてきたこと

などを挙げ、このことが社員の励みになり一丸となって働けるようになるとメリットを示した。ちなみに、グループウェアの国内シェアは(有)ノークリサーチの調査結果を引用して、1位が日本アイ・ビー・エム(株)の“Lotus Notes”(29.8%)、2位が同社の“サイボウズ”(25.2%)、3位がマイクロソフト(株)の“Exchange”(14.4%)、4位が(株)ネオジャパンの“desknet's(デスクネッツ)”(9.3%)となっている(数値はいずれも2005年のもの)。



情報サービスを“水道化していきたい”

青野氏は続けて、同社の事業ドメインであるグループウェアなど情報共有ソフトウェア群を「情報サービスの大衆化。以前に(青野氏が)いた松下(電器産業)の理念で言えば“水道化”していきたい」と同社の経営方針を掲げた。海外のグループウェアが個々人で情報の管理をきっちり行なえるような機能を盛り込んでいるのに対して、同社のグループウェアは情報をチームで共有し、知の創造に貢献するもの、和の文化を広げるものを目指しているという。「グーグル(米Google社)は検索エンジンで情報共有を広げているが、日本企業が同じ検索エンジンで戦っても厳しいものがある。我々は別の形で情報共有を展開していく」とWeb 2.0企業の旗手であるGoogleを引き合いに出しながら、同社の立場を示した。

同社の事業展開を「情報共有の場を広げ、知の創造に貢献する」と説明 サイボウズグループの事業体制
同社の事業展開を「情報共有の場を広げ、知の創造に貢献する」と説明グループ企業を含む、サイボウズグループ全体の事業体制

さらに、「和の文化、チームワークの文化を世界に輸出していきたい」とも述べ、世界的な自動車企業となったトヨタ自動車(株)が、その自動車だけでなく“カンバン方式”や“セル方式”など同社の蓄積した知識やノウハウを文化として輸出し、世界で評価されているように、サイボウスもグループ企業を挙げて取り組んでいくと意気込みを語った。

その一例としてSaaS(Software as a Service、ソフトウェアをサービスに高めて売る)という概念に近づくべく、よりいっそうの他社との連携やM&A(企業買収)をすすめ、具体的にはモバイルに強い企業などと連携してサービスの向上・価値の提供を図っていくと語った。



「M&Aのポリシーは仲間集め」

MVNOによるケータイ事業参入を目指す“ビジネスケータイ プロジェクト”
今年3月に発表された、MVNOによるケータイ事業参入を目指す“ビジネスケータイ プロジェクト”

青野氏の話を受けて、グループ会社を統括する津幡氏が壇上に立ち、「最初は100名程度の人員でスタートしたが、現在はサイボウズ単体で200名、連結では613名が加わってもらっている」と同社の成長を振り返った。そして、M&Aのポリシーについて「連結業績やブランドイメージを挙げることも大切だが、それ以上に人を集めることが重要。“情報サービスの大衆化”という概念を理解してくれるところと、今後も手を結んでいきたい」と説明した。



iDCプロジェクト SFAプロジェクト
iDCプロジェクトSFAプロジェクト

続いて、同社がグループ会社とともに現在行なっている共同プロジェクトが説明された。

ビジネスケータイ プロジェクト
今年3月に発表された、MVNO(Mobile Virtual Network Oparatore、通信インフラを既存企業から借り受けて自社ブランドのモバイルサービスを提供する事業者)参入を視野に入れたビジネスマン向けのケータイサービス事業
(株)ウィルコムと提携して現在までに240回線を試験的に提供済みで、サイボウズをモバイルでも利用できるサービスの運用実験を行なっている
サイボウズとグループ会社の(株)ゆめみ、(株)インフォニックスの3社での共同事業
iDCプロジェクト
データセンターそのものは既存の設備を借り受け、その上でビジネス基盤を提供する事業
SaaSやASP(Application Service Provider、クライアントマシンに個別導入するパッケージ販売ではなくウェブサービスのような機能のみを提供する事業)時代に向けた新たなソフトウェア事業の展開
サイボウズとグループ会社のクロス・ヘッド(株)との共同事業
SFAプロジェクト
グループウェア『サイボウズ ガルーン 2』と連携するSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)ソフトを開発・販売する事業
グループ会社の(株)インテグラート・ビジネスシステムが開発したSFAソフト『WebHello(ウェブハロー)』の開発経験を生かして事業展開
サイボウズとインテグラート・ビジネスシステム、クロス・ヘッド、(株)ブリングアップの4社による共同事業

3~5年で3倍、5年後には10倍の売り上げ1000億円を目指したい

説明会の最後に記者からのQ&Aセッションが設けられ、「数値目標は?」と聞かれると、「具体的な数字は、M&Aなど変動する要素が大きいので発表できないが」と前置きした上で、イメージとして「今期(2007年1月末まで)が97億円の売り上げを見込んでいる。これを3~5年で3倍くらい、さらにその5年後には10倍の1000億円を目指したい。利益率は30%程度で推移しているが、これは落ちていくと予想している。それでも黒字を出し続けられる会社にしたい」と目標を語った。

“ボウズマン”を囲んでの記念撮影
Q&Aセッションの最後に、同社のマスコットキャラクターである“ボウズマン”を囲んでの記念撮影が行なわれた。ちなみに、記者会見が始まる前には、ささきいさおさんが歌う“ボウズマンのテーマ”が延々流れていた

また、MVNO参入についての追加情報を求められると、「現時点で新しく発表できる材料はありません。ただ、年内開始を目指しているので、これからNTTドコモ/au/ソフトバンクなどと立ち上げるのはスケジュール的に難しい。商用サービスはまずウィルコムとの提携からスタートすることになるだろう。外でも(グループウェアを)見られるメリットはユーザーに理解されている」と手応えを示した。

グループウェア全体の市場動向については、「中小企業向けと大企業向けの2つの市場に分けられる。中小企業向けは横ばいが続いているが、提供方法を従来のパッケージ販売中心からASP型に変えていくことで、ITリテラシーの高くない中小企業にも展開できると考えており、ここは伸ばす余地がある」「大企業向けはすでに成熟市場になっているが、ここはLotus NotesとExchangeの寡占市場で、我が社にとっては未開拓とも言える。これから切り崩しを図って大きく開拓できる市場だと認識している」と自信を見せた。



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