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ATIのビデオ支援技術“Avivo”の将来像とCOMPUTEXで発表したGPUの物理演算デモを説明

2006年06月13日 21時39分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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ATIテクノロジーズジャパン(株)は13日、東京・南青山のカナダ大使館にプレス関係者を集め、“Avivoテクニカルセミナー”と題した記者向け技術説明会を開催した。会場には代表取締役社長の森下正敏氏、PCビジネスユニットマーケティンググループ部長の信垣育司氏、およびカナダATIテクノロジーズ社のテクニカルマーケティングマネージャーのアレクセス・マデラ(Alexis Mather)氏ら列席し、今年1月に発表したハイエンドGPU“Radeon X1900”で実現されたビデオ支援技術“Avivo(アビボ)”の現状と将来像、および今月10日まで台湾・台北で行なわれたパソコンやパーツ関連の展示会“COMPUTEX TAIPEI 2006”で発表されたGPUによる物理演算デモの詳細について説明した。

代表取締役社長の森下正敏氏 テクニカルマーケティングマネージャーのアレクセス・マデラ氏
ATIテクノロジーズジャパンの代表取締役社長の森下正敏氏カナダATIテクノロジーズ社のテクニカルマーケティングマネージャーのアレクセス・マデラ氏

1分のMPEG-2映像を15秒でトランスコード

Avivoとは、ATIのGPU“Radeon X1000ファミリー”に搭載されたビデオ支援機能を活用して、ビデオキャプチャーから再生・出力までを一気通貫にアクセラレーションする技術の総称。例えば、キャプチャー時には白飛びした映像を“ゲインコントロール”して正しい明るさ情報に変換したり、輝度と色情報を分解して色つぶれやぼやけを補正する“3D櫛形フィルター”、RGB情報をオーバーサンプリングしてより適正な色に再現する“12bit A/Dコンバーター”、ハードウェアによる“ノイズ除去”、などの機能を実現する。

ゲインコントロールの例 ポストプロセスによる高画質化の例
ゲインコントロールの例。白い雪に太陽光が反射した白飛びした映像を取り込む際にも、明るさ情報を自動的に補正して破綻のない映像にする、というポストプロセスによる高画質化の例。左はサーキットの観客席(シート)がつぶれてモアレのように見えているのに対して、高画質化フィルターを掛けた右側ではシートひとつずつがはっきり見える

エンコード支援機能では、MPEG-2だけでなく今後HD映像やモバイル機器向けの映像に幅広く使われるCODEC“H.264”や“WMV9 PMC”、“MPEG-4”、“DivX”など幅広くサポートし、他形式に変換する“トランスコーディング”の高速化も可能となっている。特にPSPや第5世代iPod(ビデオ再生機能を持つ)などの普及によって、今後はトランスコードの重要性が増すと説明し、会場でもAMD Athlon 64 3800+とRadeon X1900を搭載したデスクトップ機を使って1分間の720×480ドットのMPEG-2ビデオをH.264形式に15秒程度で変換するデモを実演した。

トランスコードのデモの様子
トランスコードのデモの様子

これらの機能は、昨年中にATIが同様のセミナーにおいて「近い将来実現できる」と宣言していたものであり、ハードウェアの登場に合わせて対応ドライバーや変換ユーティリティーソフトも随時リリースしてきたことを、改めてプレスに説明した形だ。

現在のRadeon X1000ファミリーに搭載されたビデオ機能の概要
現在のRadeon X1000ファミリーに搭載されたビデオ機能の概要。2本の同一構造のビデオプロセスパイプラインが並行に配置され、DVIやVGAなど複数の出力に対応している

その上で、Avivoの将来像として

ハイブリッドチューナーへの対応
アナログ放送とデジタル放送を1チップ化したシリコンチューナーの登場に合わせて対応
エンコード/トランスコードの更なるハードウェアアクセラレーション
よりCPU負荷の少ない、高速なエンコード/トランスコードの実現
デコードの省電力化
ポストプロセッシング(再生・表示前の高画質化フィルタリング)のクオリティー向上
今後登場する新しいディスプレーインターフェース(出力先)のサポート

などを掲げた。



CPUに代わってGPUが物理演算を代行!

「賢い分岐機能」 X1900 XTXでは、従来のRadeon 9000ファミリーと比べて9倍以上の物理演算処理能力を発揮できると説明
ATIが言うには、「賢い分岐機能」によって物理演算を行なうユニットを振り分けられるため、演算処理の高い効率化が期待できるとのことX1900 XTXでは、従来のRadeon 9000ファミリーと比べて9倍以上の物理演算処理能力を発揮できると説明

もう一つの目玉である、GPUによる物理演算のデモは、2つ以上のGPUを1台のパソコンに搭載して並列処理させる“CrossFire”の新たな用途としてATIが提案するもの。従来のCrossFireでは、映像出力の最終工程である“レンダリング”を2つのGPUに分割処理させることで3D画像の高速描画を実現しているが、リアルタイムアニメーションする3D画像の生成には、頂点の動きを物理演算する行程が必要でこれを現在はCPUが演算処理している。しかし、CPUの演算処理性能が追いつかない場合にはレンダリングが高速でもCPUの演算待ちで結果的に描画パフォーマンスが発揮できない場合がある。

非対称の構成にも対応する
物理演算に1基、レンダリングに2基といった非対称の構成にも対応する

今回のデモでは、高速な命令分岐(ブランチ)ユニットを内蔵することで、CPUより余力のあるGPUが効率的に物理演算も行ない、CPUが低速でも3D描画パフォーマンスを改善できるという。この機能はX1000ファミリー全体に搭載されているが、特にメモリーバス幅やメモリークロック、メインメモリーとのインターフェース(PCI Express x16か同 x1か、AGPか)などによって性能が大きく変わり、PCI接続の通常GPUと比べるとPCI Express x16接続のRadeon X1600 XTでは2倍、最上位モデルのRadeon X1900 XTXでは9倍以上のパフォーマンス改善が見られたと説明する。

COMPUTEX TAIPEI 2006でデモしたという物理演算シミュレーションの例
COMPUTEX TAIPEI 2006でデモしたという物理演算シミュレーションの例。アリのように群がったポーンがテーブルからあふれてこぼれ落ちる様子や跳ね返っていく具合を物理的に正しく再現しているという

あいにく今回の説明会で機材の都合で実際に動作するデモは見られなかったが、COMPUTEX TAIPEIの会場では、丸い小さなテーブルにチェスの駒(ポーン)が山ほど降り積もって、跳ね返ったりこぼれ落ちたりする様子を物理演算しながら描画するデモが行なわれ、CPUで物理演算した場合には毎秒19フレーム程度の描画速度だったものが、Radeon X1900 XTXのCrossFireで一方を物理演算に使った場合は毎秒27フレームに改善された。さらに、CrossFireは非対称構成も可能で、3つのRadeon X1000ファミリー(異なってもいい)を使って2つがレンダリングを、1つが物理演算を担当するという構成も可能だ。これにより、CPUによらずCrossFire環境がゲーマーのパフォーマンスを改善できるとメリットを説明した。

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