このページの本文へ

【Interop Tokyo 2006 Vol.2】本格化するHD映像のIP化

2006年06月08日 11時51分更新

文● 編集部 西村賢

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
展示会会場
Interop Tokyo 2006展示会会場

7日~9日の3日間の開催予定で幕張メッセでスタートした“Interop Tokyo 2006”の展示会は、村井純氏の基調講演でもあったように、放送と通信の融合がパケットレベルで起こるさまを見るような、映像通信の機器や技術の展示が目白押しだ。



放送の現場でも進むIP化

放送局では、地方と東京のキー局などを結ぶ映像配信ネットワークとして、すでに衛星だけではなく光ケーブルも使い始めている。ケーブル中を通すのは、IPベースのMPEG映像であることよりも、非圧縮のHDTV信号、“HDSDI”であることが多いという。NECエレクトロニクス(株)は、そうした映像信号やデータ信号を光波長多重技術を用いて8チャンネル分同時に双方向で通信できるネットワーク機器『WDM8XX-S』を出品。合わせて、光信号を光のまま高速にスイッチングする『光マトリックススイッチ』も展示。8×8の組み合わせの入出力を、遠隔地からの操作で切り替えて使える。

光スイッチ
NECエレクトロニクスの光スイッチ

日本電信電話(株)の未来ねっと研究所が参考展示していた『i-Visto』は、1.5Gbpsの非圧縮HD映像などをIPネットワークの拠点間でリアルタイム伝送するシステムだ。スポーツイベントの中継などで、1台数億円という中継車を使わずに、既存のIP網を使うことでコストを抑えるなどの応用がある。

i-Visto
1.5Gbpsの非圧縮HD映像をIPで送受信できる“i-Visto”

ディーリンクジャパン(株)の『DMC-1253A』は、IEEE1394からのハイビジョン信号をIP化、またその逆を行なうメディアコンバーターだ。1080iのハイビジョン映像が、非圧縮で約35MbpsのIPのストリームとなる。対向で使えば、ハイビジョンで撮影した映像をIPネットワークで転送、受ける側ではメディアコンバーターのIEEE1394端子から出てくる映像を、そのままテレビや録画機器に接続して表示できる。メディアコンバーターは2基で20万円前後を予定しているという。

メディアコンバーター デモ
D-Linkのメディアコンバーター。IEEE1394とIPを相互変換するメディアコンバーターのデモ。撮影したハイビジョン映像をIP化して転送、それをIEEE1394に戻してテレビで表示


ネットの動画配信向け新技術

通信側から出てくる放送的なサービスについても、さまざまな新技術が登場している。

日本電気(株)の展示する『StreamPro』は、IPv6またはIPv4を用いて、H.264のハイビジョン映像をストリーム放送するソリューションだ。ネットの動画配信事業者を対象としたシステムで、こうしたシステムが用いられることで、1~2年後にはVODでハイビジョン映像を流すサービスが登場するだろう。

同じくNECが展示していた“ハイビジョンTV電話サービス”は放送ではないが、ハイビジョン映像のエンコード技術の進歩を感じさせるシステムだ。IP上で扱うハイビジョン映像にはH.264というコーデックが用いられることが多いが、H.264は専用ハードウェアを用いないとリアルタイムではエンコードが難しい。NECでは、Xeon-3GHzのデュアルコア対応CPUを用いることで、ソフトウェアのみでシステムを構成。遅延は150~200ミリ秒という、テレビ電話には十分実用となるレベルの品質を実現した。

StreamPro ハイビジョンTV電話サービス
ハイビジョン映像配信システム“StreamPro”ハイビジョンTV電話サービス

GyaOやオンデマンドTVといったネット上の動画配信サービスの多くは、ファイヤーウォールの入ったLANや、家庭のNAT環境で見られることも多い。このため、本来ならストリーム転送に向いた通信方式としてUDPを用いるべき場面で、実際にはTCPが使われる機会が増えている。このため、NEC研究企画部ではストリーミング用TCP制御技術を開発。OSのTCP/IPのプロトコルスタックに手を入れ、ネットワークの状態によらず、送出ストリームの帯域を一定に保つ技術を開発したという。デモンストレーションでは、1.2Mbpsの映像をWindows Media Playerで表示した場合に、通常のTCPでは“バッファ中”と表示されて映像が止まるような場面でも、新開発のTCPではコンスタントに表示が続いていた。

ストリーミング用TCP制御技術
ストリーミング用TCP制御技術のデモ


DVD画質の動画配信サービスを支える技術

急激に視聴者を増やす動画配信サービスでは、問題は帯域の確保だけではない。通常、ストリーミングサーバーから出力される映像信号は一定の帯域を消費するタイプのストリームではなく、瞬間瞬間に大量のパケットが出てくる“バーストトラフィック”が発生する。アンリツ(株)の“PureFlow SS10”は、そうしたバーストトラフィックを平滑化するストリームシェーパーと呼ばれる製品だ。実際に昨年7月には、(株)ぷららネットワークスが提供する映像配信サービス“4th MEDIA”に導入され、1回線あたりの配信量が3倍に増えた事例があるという。

ストリームシェーパー ストリームシェーパーデモ
トラフィックを平滑化するアンリツのストリームシェーパーバーストトラフィック(画面中の赤いピーク)がストリームシェーパーでなくなりコンスタントなトラフィック負荷となっている(青い線)

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン