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アーム、新ファミリーの組み込み向けプロセッサー“ARM Cortex-R4”の説明会を開催

2006年06月07日 15時35分更新

文● 編集部 小西利明

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“ARM Cortex-R4”のブロックダイアグラム アーム 取締役 エンジニアリングディレクターの渡辺信久氏
“ARM Cortex-R4”のブロックダイアグラムアーム 取締役 エンジニアリングディレクターの渡辺信久氏

アーム(株)は7日、東京都内にて報道関係者向けの説明会を開催し、5月18日に発表した組込用途向けプロセッサー“ARM Cortex-R4”についての説明を行なった。処理性能の高さとメモリーコストの低減、メモリーエラー検知機構による信頼性の向上などを特徴としている。

Cortex-R4についての説明を行なった同社取締役 エンジニアリングディレクターの渡辺信久氏は、新しいコアアーキテクチャーである“ARM V7”と、それに基づいたCortexファミリーの製品について説明を行なった。Cortexシリーズは“ARM11”プロセッサーの次世代に当たるアーキテクチャーを採用したプロセッサーで、新しい“Thumb-2命令セット”をサポートしている。シリーズ最上位の製品である“Cortex-A8”は、高性能を指向し、ベクトル浮動小数点演算機能やSIMD演算機能“NEON”の改良など、多くの機能が盛り込まれ、複雑なOSやアプリケーション実行用CPUと定義されている。“Cortex-M3”は非常に低コストなマイクロコントローラー向け製品。そしてR4はAシリーズとMシリーズの間に位置し、リアルタイム環境向けの組み込みCPUと定義されている。渡辺氏はCortex-R4がターゲットとする用途として、HDDやプリンターのコントローラー、ホームゲートウェイ機器、そして車載機器などを例として挙げている。

ARMアーキテクチャーのプロセッサーのラインナップと発表時期、性能レンジの図。Cortexシリーズは新しい第7世代のアーキテクチャーに当たり、R4はその中でも中間の性能レンジに位置する ARMアーキテクチャー拡張を示す図。Cortex-R4は“VFPv3”や“NEON”の機能は備えない
ARMアーキテクチャーのプロセッサーのラインナップと発表時期、性能レンジの図。Cortexシリーズは新しい第7世代のアーキテクチャーに当たり、R4はその中でも中間の性能レンジに位置するARMアーキテクチャー拡張を示す図。Cortex-R4は“VFPv3”や“NEON”の機能は備えない

Cortex-R4はプロセッサーとしての処理性能(特にThumb-2命令セット実行時の性能)向上だけでなく、低コストのメモリーの活用によるシステムコストの低減や、信頼性の向上などを特徴としている。ゲート数は18万~22万ゲートで、台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の0.13μm製造プロセスで製造された場合、300MHzの動作周波数を実現する。処理性能の目安としては、Cortex-R4が後継製品に位置する“ARM946E-S”プロセッサーと比較して、Thumb命令で書かれたプログラムの実行性能が50%以上向上するという。パイプラインは8段を備えるほか、内蔵の命令・データキャッシュを4~64KB(キャッシュを搭載しないことも可能)、8または12領域に分割可能なメモリー保護ユニット、内蔵の命令・データ用ローカルメモリー(TCM:Tightly Coupled Memory)をそれぞれ最大8MBまで搭載できる。これらは用途に合わせて、搭載しない選択も可能。外部とのインターフェースには、64bitの“AMBA 3 AXIインターフェース”を使用する。

信頼性向上の一環とされているのが、メモリーのパリティーチェックと、エラーを検知・訂正するECC(Error Check and Correct)をサポートした点である。渡辺氏は半導体製造プロセスの微細化によって、アルファー線によるメモリーエラーが重要になってきているとして、これらに対応する機能をアーキテクチャー側で備える必要性を指摘した。車載機器など安全に関わる機器に採用されるにあたって、重要な利点としている。また同社のハイエンド製品である“ARM1156T2-S”の400MHz動作品と比較した場合、Cortex-R4 300MHzは30%小さい面積で実装できる点も利点としてる(処理性能では若干劣る)。

32bitのARM命令に対して、Cortexシリーズが対応する16bitのThumb-2命令はコードサイズが小さくできるほか、従来のThumb命令と、新しいThumb-2と比較して18~22%高速になるという。また割り込み処理の高速化が行なわれたことにより、割り込み応答時間はARM946E-Sの118クロックサイクルから、20クロックサイクルまで短縮されたとしている。

ARM命令セットやThumb命令セットのコードと、Thumb2命令セットコードの処理性能やサイズを比較した図。Thumbに比べて性能は向上し、コードサイズはARMにより小さい ARM 9アーキテクチャーのプロセッサーとの割り込み応答時間比較グラフ。割り込み検知から処理ルーチンまでの移動に要する最悪の場合の時間を大幅に改善した
ARM命令セットやThumb命令セットのコードと、Thumb2命令セットコードの処理性能やサイズを比較した図。Thumbに比べて性能は向上し、コードサイズはARMにより小さいARM 9アーキテクチャーのプロセッサーとの割り込み応答時間比較グラフ。割り込み検知から処理ルーチンまでの移動に要する最悪の場合の時間を大幅に改善した

ライセンス価格等については公表されていないが、既存製品と大きくは変わらない価格となるもようだ。

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