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【アキバ・キーマンインタビュー No.5】ドスパラ秋葉原本店の名物店長だった、あの甲斐さんが登場!

ドスパラがパーツから撤退!?

2006年06月03日 23時50分更新

文● 大森徹哉

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同じものは商品とレジだけ


――ドスパラさんならではの仕入れの工夫とかありますか?
【甲斐】 以前はいろいろ裏技なんかを使ったりしたんですけど、最近はあまりそういうのは使わないですね。ひとつあるとすると、お店が全国に32店もあるんで、1ヵ所に集めてから配送してるとどうしても1日のタイムラグができてしまう。そこでメーカーさんに頼み込んで、全店に必ず商品を配送してもらっています。あと、秋葉原地区については、土曜日に解禁されるものは、無理を言って金曜日に持ってきてもらうようにしています。
――ちなみに、秋葉原の店舗は、それぞれ独立してやっているんですか?
【甲斐】 値段という意味でいうと、独立しています。
――それは珍しくないですか?
【甲斐】 そうなんですよ、珍しいと思います。
――なぜですか?
【甲斐】 要するに、ドスパラの店舗の成り立ちに関係しています。ドスパラと言うのは元々、そのお店自体のやり方をすごく尊重してきた会社なんです。ですので、いろいろなお店に行くたびに全然違うお店だと。言い方をよくすると、お店独自のやり方があると。悪い言い方をすると統制がとれてない(苦笑)。同じなのは「商品とレジだけ」と言われてたくらいです(笑)。
――レジって……(笑)。
【甲斐】 それを続けて店舗規模を拡大していくと、いろいろと問題がありまして。なるべく合わせられるところから同じにと、例えば制服であるとか。
――制服もバラバラだったんですか?
【甲斐】 バラバラだったんですよ。今はだんだん統制がとれる所から取り組んでいます。ただ、お店ごとに独立採算制になっているので、店舗の経営者、つまり店長が店舗の予算を達成しないとならないというノルマがあります。
――なるほど。
【甲斐】 価格を全店で合わせてしまうと、「お前の店では売れるかも知れないけど、オレの店では売れないんだよ」とか、「オレの店ではこれを売りたいんだけど、お前の店でそれをやってるからオレの店ではできないじゃないか」という話になってきます。それで、基本的には全てそのあたりは自由にやっていいと。ただ、自由にやるといっても、秋葉原と新宿で違うのはわかるけれども、秋葉原の中で違うというのはまずいだろという話になったこともあります。それで価格を合わせようとしたんです。ところが、合わないんですよね、これが。
――そうなんですか?
【甲斐】 ええ。要するに本社のほうに価格を統制する機能が、今のところないんですよ。というか、あるんですけれども、その設定は各店の決定に任されている状態なんです。義務化してないんですよ。なので、やっても意味ないだろうと。
――普通、本部みたいなところから価格が各店舗に伝わりますよね?
【甲斐】 ええ。やってます、実際。私がつけて出してます。
――(笑)。
【甲斐】 それは指標価格であって、それに合わせて、値段をつけること自体たくさんある業務の中で店のすごい負担になるんですよ。
――でも、重要ですよね?
【甲斐】 重要なんですけれども、結局ドスパラがオリジナルPCを売るのを全面に押し出してやっていますので、それが始まって以降に入ってきた店長はパーツ売りをそんなに重視してない。そうすると、パーツ売りに対する業務になるべく時間を割きたくないと。


――効率的にやりたいと。
【甲斐】 そうです。「実際に商品に値段がついてるんだから、われわれがそれをつける必要はないだろ」という方もいらっしゃいます。そういう方は売価どおりにやっていまして、こちらからも「やりやすいなあ」と思うんですよ。ただ、秋葉原なんかは特にパーツを売らないと、どうしてもお店の運営として厳しいんですよね。なので、本当は秋葉原では価格が同じであって欲しいのに、同じ秋葉原でも店舗によって価格が違うことになっています。
――価格はやはり合わせないとだめ?
【甲斐】 価格を合わせないことによってデメリットばかりかというと、そうでもないんです。やっぱり私自身もそういう中でずっとやってきたこともあるんですけれども、「あそこと値段が違う」と言われたら、「その値段にします」と言えばいいだけの話なんです。お客さんとしても、「あっちの店でこれだったけど、向こうはもしかしたら安いかも」というのを考えていただける。
――逆にいうと、店が違うから値段が違ってもいいというのはありますよね?
【甲斐】 そうですね、まあ、将来的にはやっぱり合わせるべきだと思っていますけど、今のところはまだ合ってないほうが、どうやら運営はやりやすいみたいです。
――ちなみに、値引き交渉は可能ですか?
【甲斐】 うーん、難しいですね。昔は私、受けたりしてました。やっぱりパーツは、本当に利益が無いんですよ。
――種類を問わず?
【甲斐】 強いていえば、PCケースとか、キーボードとか、マウスとか。
――サプライ系ですね。
【甲斐】 サプライ系、アクセサリー系は、他のものに比べれば多少利益はあります。いわゆる本当のPCパーツは、はっきりいって利益は全然ないです。だから、我々もなるべく安い値段、お客さんが目を引く値段をつけようと思いますけれども、それをつけたにも関わらず「なんで他のショップではこの値段で売ってるんだろう?」ってことがあるんですよ。
――(笑)。
【甲斐】 あまりに安いときは、「おかしいだろうこの値段は」とメーカーにお電話を。で、実際調べてみると間違ってたということもあるんですよ(笑)。
――そうなんですか?
【甲斐】 で、クレームを入れられたショップはすぐに直してたりするんです。「いや、値付けを間違えていました」って。で、逆に「ドスパラがあの値段で売ってますよ」って、メーカーにチクられるんですよ(笑)。そうすると逆に、うちがやられることもあります。
――なんで、その値段でやってるんだと?
【甲斐】 ええ。仕入れ先から「実は、あの店とあの店と……から言われたんだよ」と。それ、製品を入荷しているショップさん全部じゃないって(笑)。で、「あの、なんとか価格を変えてもらえないでしょうか?」ってうちの仕入れにクレームが来たりするんですよ。



ドスパラがパーツから撤退!?


――今、仕入れって何人くらいいるんですか?
【甲斐】 いわゆるバイヤーと呼ばれる人が、10人くらいですかね。
――結構いますね。
【甲斐】 ええ、他の会社より多いかも知れないです。なんでかというと、海外品があるので。あと、Prime用のパーツをロット取りする人間は専任でやっています。
――利益が出ない話を聞くと、パーツはバカバカしくて、パーツの販売を止めようみたいな話になっちゃいますよね?
【甲斐】 前になったことありますね。
――ですよね。
【甲斐】 それはお流れになったんですけれど、もし、それが本当にそうなったら、私はこの会社を辞めてましたね。
――本当ですか!
【甲斐】 ドスパラって何かというのが、やっぱりいちばん重要なんですよ。これ今、私がやっている仕事にも関連することですが、ドスパラはお客さんから何を求められてるかを常に考えたいと思ってるんです。うちのお店の場合、DJカードの会員に意見を書いてもらうところがあってメールで送信できるんですよ。そこに意見を書くと、結構な確率でポイントが当たるんです。
――へえ~。
【甲斐】 だから結構書いてもらえるんです。そこのご意見に「商品が少ない」とか、「商品がもっとあるといい」とか、「こういう系の商品をたくさん置いてください」って意見がたくさんくるんですよ。実は、そういう意見はすごく貴重ではありますが、そんな要望に全部答えたとしたら、おそらくヨドバシカメラさんくらいの建物が必要になるんですよ。
――それだけないとできない。
【甲斐】 そう。これは多分秋葉原のどのPCパーツショップさんも抱えてる悩みだと思うんです。どうしても箱が小さいんで、入らないんですよね。何をやっても、ものすごくたくさん置いたつもりでも、その週のご意見に「少ないです」とか書いてあったりする。じゃあ、どうすればいいのかなって思っちゃうですよ。でも、お客さんは当然ながらヨドバシカメラさんみたいな品揃えを求めているんじゃない。「ドスパラとして提供できる商品が少ないですよ」と言いたいんじゃないかと私は読み変えてるんですよ。
――なるほど。
【甲斐】 そのお客さんによって、ドスパラに期待するものは違うと思うんですけれど、ドスパラのやっぱり強いところは、“Prime”シリーズはありますけど、やっぱり今まで通りPCパーツであり、ドスパラ自体が提供していた安い海外品っていうのをドンドンやっていかないと。他との差別化ってのもありますし、ドスパラである必要がなくなります。
――うん、うん。
【甲斐】 ある日、ドスパラって看板が他店のものに変わってても、お客さんは特に気にしないって、そういう状態になっちゃうんですよ。それはやはり困ると。ドスパラに来たら何があるかというのを、私としては追求してお店に置いていきたいです。
――そういう意味では、「ドスパラって何?」って感じですよね?
【甲斐】 そうなんですよね。今ちょっと、それを見失いかけてると思うんですよ。やっぱりお店の人間もそれは感じてるんですよ。私みたいにずっと昔からドスパラに勤めてる人間からすると、海外品のバルクのパーツとかをたくさん扱って、メモリとかCPUとかHDDとかが異常に安い、いつでも値段を変えてるよって(笑)。ああいう感覚がやっぱり今勤めてるめてる人間には……。
――通用しないんですね。
【甲斐】 ですね。やはりショップブランドPCの“Prime”を大きな軸としてしまうと、どうしてもそちらの方が主力になってしまって、パーツのほうが隅に追いやられてしまった。そういう中で、お客さんからの不満が出てきたというのがあると思います。
――確かにそうですよね。アキバ店さんなんかもある意味、違うものをやってますしね。イメージ変わってるところがありますよね。
【甲斐】 イメージを変革していくというのはいいと思うんです。結局、その変わった先が既存のものであったりとか、あるいは量販みたいな形になるのであれば、お客さんはたぶんもう来ないですね。
――量販に行けばいいと。
【甲斐】 ええ。我々のようなところには来ない。やはり我々が独自にできるものをドンドンやっていかないと、本当に埋もれちゃう。
――そういう意味だと、立ち位置が難しいですね?
【甲斐】 それは難しいです。店舗の数が多くなっているので、方向性もいまだに多分迷走状態だと思います。
――確かに、何年か前だと、秋葉原のドスパラさんだと、なんか「ドスパラ」ってイメージがはっきりしてましたよね。
【甲斐】 “Prime”が1階に展示されるようになってから、やっぱり「この店はただのPC屋さんだ」と、多分見もしないお客さんもいる。
――1階にするって決めたのは誰なんですか?
【甲斐】 あれはスーパーバイザーの内田さんです。実際、“Prime”の売り上げはものすごく上がりました。ところが、ある一定点で頭打ちが来てしまいました。あのハコでこれ以上の売り上げの台数を立てるのは難しくなってきました。で、その次に行くステップが何というときに、少しまた元に戻すというか、ドスパラのあるべき姿、お客さんから見たあるべき姿ですかね。それに少しシフトしようかなと考えています。
――お客さん自体は変化してないですか?
【甲斐】 3、4年くらい前から変化していないです。
――1階をまたパーツにするという考えは?
【甲斐】 そういうことも考えています。すぐにって訳には行かない。でも、もしかしたらすぐにやるかも知れません。この辺はまだ全然妄想でしかないんで(笑)。(次ページへ続く)



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