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次世代DVD特集

次世代DVD特集

2006年05月23日 21時06分更新

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大容量記録メディアの利点をアピールするBD

松下電器産業のBD-R/REドライブ『LF-MB121JD』を搭載したパソコンのデモ機
松下電器産業のBD-R/REドライブ『LF-MB121JD』を搭載したパソコンのデモ機

 再生機とビデオソフトから始まったHD DVDに対して、BDはすでにデジタル家電のBDレコーダーで先行していた点もあって、今のところは大容量記録型光ディスクとして進展している。BDのビデオソフト用規格である“BDMV”に準拠したビデオソフトや、再生専用機の登場は今年後半と目されているが、なかでも普及の牽引役と期待されるPS3は、11月11日の発売が決定している。

 こうした状況下で松下電器産業(以下松下)が4月21日に発表したパソコン用の記録型BD-R/REドライブ『LF-MB121JD』は、大きなインパクトを与えた。LF-MB121JDは1層25GB、2層50GBの記憶容量を持つ追記型BD-Rと書換型BD-REに対応し、1枚の12cmディスクに最大50GBまでのデータを保存できる。2層ディスクならDVD-Rの実に10倍の記憶容量だ。またDVD±R DL、DVD±RW、DVD-RAM、CD-R/RWへの記録も可能であり、同社曰く「HD DVD以外のすべてに対応する」という万能な記録ドライブとなっている。

 松下の発表に相次ぐ形で、パソコン用周辺機器メーカー各社も同社ドライブを使ったBDドライブ製品を続々と発表し、記録型BDドライブはにわかに活気づいてきた。松下電器産業が発表した製品はパソコン内蔵用のドライブだけだが、(株)アイ・オー・データ機器や(株)バッファローの製品には内蔵型だけでなく、USB接続タイプの外付けBD-R/REドライブもラインナップされている。さらにロジテック(株)はWindowsだけでなく、Mac OS X系にも対応したIEEE 1394接続タイプの外付けドライブもラインナップしているなど、プラットフォームを問わず記録型BDドライブを扱える環境が整いつつある。

アイ・オー・データ機器『BRD-UM2』。USB 2.0対応の外付け型ドライブ バッファロー『BR-H2U2』。同じくUSB接続の外付けドライブ
アイ・オー・データ機器『BRD-UM2』。USB 2.0対応の外付け型ドライブバッファロー『BR-H2U2』。同じくUSB接続の外付けドライブ

 各社の製品にはBD書き込み用のソフトウェアが付属しているが、これらはあくまでBD-R/REを巨大なリムーバブルディスクとして記録を行なうもの。現在のDVDライティングソフトのように、再生専用機でも再生できる“BDMVでBD-R/REにビデオ映像を書き込む機能はない”。編集・ライティングソフトなどの登場で解決される可能性はあるが、“現状ではできない”ということを覚えておく必要があろう。

 また価格も安いとは言えない。松下製品は10万円前後で販売される予定だ。周辺機器メーカー各社の製品はやや安い(外付けタイプはやや高め)が、それでも10万円弱はするので、パソコン用周辺機器としてはかなり高い部類に入る。現時点ではハイエンドユーザーしか手が出せない製品と言え、低価格化が強く期待される。

 なお、気になるディスクメディアの価格だが、秋葉原では25GBのBD-Rで1800円程度、50GBのBD-REは6000円程度で販売が始まっている。

すでに販売が始まっているBD-RとBD-REのディスク。ただしドライブは現時点ではまだ販売されていない
すでに販売が始まっているBD-RとBD-REのディスク。ただしドライブは現時点ではまだ販売されていない

パイオニア『BDR-101A』。1月にはOEM供給先への出荷が始まるとの発表があったが、秋葉原等には出回っていない
パイオニア『BDR-101A』。1月にはOEM供給先への出荷が始まるとの発表があったが、秋葉原等には出回っていない

 ちなみに松下の発表より早く、パイオニア(株)がパソコン用BD-R/REドライブのOEM供給先への出荷を発表していた。しかしこのドライブは秋葉原にも出回っておらず、またCD-R/RWへの書き込み機能もないため、このままコンシューマーの目には触れることなく終わりそうだ。同ドライブは実のところ、2005年の早い時期には製品化が可能な状態まで完成していたので、結果として製品化の時期を逸したのかもしれない。



BD-R/REドライブ搭載パソコンも発表

初のBD標準搭載パソコンとなった、富士通『FMV-DESKPOWER TX95S/D』。32インチ・フルHD対応液晶ディスプレーを備える巨大なパソコン
初のBD標準搭載パソコンとなった、富士通『FMV-DESKPOWER TX95S/D』。32インチ・フルHD対応液晶ディスプレーを備える巨大なパソコン

 ドライブ単体だけでなく、BD-R/REドライブ搭載のパソコンも発表されている。富士通(株)は松下の発表より早い4月11日に、BD-R/REドライブを標準搭載したパソコンとしては初めての製品となる『FMV-DESKPOWER TX95S/D』を発表した。32インチワイドの大型液晶ディスプレー(解像度1920×1080ドット)を一体化したパソコンで、地上/BS/110度CSデジタル放送チューナーも内蔵するハイエンド製品だ。予想実売価格も60万円前後と高い。BD-R/REの記録はデータ形式のみで、BDMVでの記録はサポートしない点は松下製品などと同様だ。出荷は6月末の予定。

エプソンダイレクト『Endeavor MR3000』は、BTOメニューでBD-R/REドライブの選択が可能
エプソンダイレクト『Endeavor MR3000』は、BTOメニューでBD-R/REドライブの選択が可能

 またエプソンダイレクト(株)も4月発表のスリムデスクトップパソコン『Endeavor MR3000』で、BTOメニューで選択可能な光ディスクドライブとして、松下のBD-R/REドライブをラインナップしている。デジタル放送チューナーなどは搭載しないが、大容量リムーバブルメディアとしてのBDの利点が、比較的安価で省スペースなパソコンでも味わえるのは嬉しい。



6万円以上の価格に衝撃が走ったPS3

 BD陣営にはHD DVD陣営と異なり、PS3が早期からBD対応を表明していたため、これが牽引役となって一気に普及するのではないか、という見方が多かった。しかしSCEIが当初予定していたPS3の発売時期を、“2006年春”から2006年11月上旬に遅れるという発表を行ない、さらに斬新なシステムゆえのゲーム開発の難航が広く噂されるようになると、“PS3登場で次世代DVD戦争にも一気に決着がつく”という見方に疑問を抱く声も大きくなっていった。

低価格のモデルでも6万円以上という値段が世界に衝撃を与えた『プレイステーション3』。BD牽引役の務めは果たせるのか?
低価格のモデルでも6万円以上という値段が世界に衝撃を与えた『プレイステーション3』。BD牽引役の務めは果たせるのか?

 そうした状況下で、5月9日に発表されたPS3の価格は、業界から一般消費者、ゲームファンに至るまで大きな衝撃を与えた。20GB HDDモデルで6万2790円、60GB HDDモデルはオープンプライスだが、同モデルの米国での販売価格は599ドル(約6万5890円)と、いずれも家庭用ゲーム機としては非常に高価な価格だったからだ。PS3は発売と同時に200万台(国内のみか世界全体かは不明)を出荷すると発表されている。PS2は発売直後に国内だけで200万台が販売されたほどだが、この価格で同じような勢いで売れるかどうかは疑問だろう。また欧米ではライバルのXbox 360が、非常に好調にシェアを伸ばしているという実績もある。SCEI関係者は価格発表直後から、PS3が“ただのゲーム機ではない”という発言を積極的に行なうようになっているが、価格の高さを打ち消すだけの“ただのゲーム機ではない要素”を見せてはいない。「HD-XA1よりは安いのだから、初期のBDプレーヤーとしては妥当な価格では」という見方もあるが、消費者がどう判断するかは、今のところ未知数だろう。

 PS3だけで次世代DVDの勝敗が決するわけではないとしても、“BD有利”の見方の多くはPS3が急速に普及するとの前提があったためである。思わぬ高価格でPS3が登場することが明らかになった今、次世代DVDの覇権争いはさらに混沌としてきた、と言えるのではないだろうか。



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