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【短期連載】アップル&ソフトバンク提携の可能性を探る――第3回 iPod携帯を起爆剤としてインパクトを与え続けられるかが鍵

2006年05月23日 23時26分更新

文● 編集部

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[ASCII24] ソフトバンクが収益を上げるためには何をすればいい?
[木村氏] ベストなシナリオとしては、まず番号ポータビリティの、“華やかな”端末や音楽配信サービスなどで、うまくユーザーに訴求するというのが第一条件。ソフトバンクの孫正義氏が初期段階は投資を集中的に行うと発言しているが、これは正解だと思う。ボーダフォンは他社に比べて通信/機種インフラの整備が遅れを取っている状況なので、「お金が出来たらインフラを……」という姿勢ではそもそも他キャリアと同じスタートラインに立てない。

加えて、連続的に訴えていくということが大切。次も魅力的な新機種やサービスが出てきそう期待感を持たせてながら、実際にユーザーの興味を惹くような商品を投入していく必要がある。アップルの華やかな端末で初期に話題性を奪っても、それだけでは厳しい。「インフラにお金をかけたから端末を用意できなかった」ではユーザーにそっぽをむかれてしまう。

しかもひとつの携帯電話機で9000万人すべての好みに応えるのは不可能。音楽だけでなく、ゲーム/テレビ/薄型といった複数の“カード”を用意し、総合力でアピールしていかなければならない。

魅力的な携帯電話機やサービスで、ドコモや(株)KDDIの“au”から先行ユーザーを捕まえられれば状況が好転するだろう。先行ユーザーは月に1万円以上ものパケット代を使うため、単に加入者が増える以上に利益が確保できる。お金が増えれば、通信/機種インフラなどへの投資が可能になり、さらにユーザーに訴求するための材料を持つことによって優位に立てる。

[ASCII24] これからの課題が山積みですね……
[木村氏] ええ。しかも細かい作業は別の人間が担当するため、インフラや携帯電話機を整えるだけでなく、組織内で情報共有できているかどうかも重要になってくる。

ほかの業界と同様、携帯電話でもすべての端末が売れているわけではない。どの新機種も“ファーストイン、ファーストアウト”ですぐに売り切れればいいが、必ず在庫となる商品は出てくる。とはいえ、新しい端末を仕入れずに在庫の処理だけやっていては顧客に訴求できず、人気のある端末だけ用意してもビジネスが成り立つわけではない。どの製品をどれだけ仕入れて、価格をどのタイミングで上げ下げするかといったさじ加減が非常に難しい。

こうした細かい調整は経営トップではなく、現ボーダフォンの人間が担当することになる。ソフトバンクがどういう戦略を取ろうとしているのか、組織の意思統一を急ピッチでやらなければいけない。

[ASCII24] 相当厳しい状況に置かれていますね。
[木村氏]
大ヒットとなったウィルコムのW-ZERO3「WS003SH(B)」
ソフトバンクとしては、同社の参入で「サービスの価格が下がる」というイメージを払拭したいと思っているはず。安さで勝負しても現状では(株)ウィルコムと競合するので、魅力的な携帯電話機を出し続けて、安いけれど付加価値も高いという印象を定着させたい。現状でドラスティックに価格を下げていくと、財務にひびくことになる。

アップルもソフトバンク側から機種のバリエーションを求められるかもしれない。“いいとこ取り”の付加価値商品しか出さずにすぐに撤退するメーカーは、戦略が組みにくいためキャリア側から敬遠される。キャリアにとってはハイエンドに加えて、いちばんのボリューム帯であるミドルローエンドにも着手し、幅広くラインアップを揃えてくれるメーカーが好ましい。

ドコモやauは資金力があるため、ソフトバンクが少し上向き調子になれば、価格を下げて対抗してくる体力もある。前述のようにうまくいかなかったら、“次の一手”をどうするのかが問題になる。もう一度無理してでもインフラを整えたり、iPodに相当する話題性のある何かを見つけるのは難しいので、なんとしても成功に導くための積極的な戦略が必要となるであろう。




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