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マイクロソフト、『Windows Vista』のClearType対応新日本語フォント“メイリオ”と漢字字体“JIS X 0213:2004”についての説明会を開催

2006年05月16日 21時45分更新

文● 編集部 小西利明

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記者説明会で配られた、ClearTypeとメイリオの解説や開発ストーリーを収録した小冊子。冊子内の文字もメイリオを使用している メイリオの表示サンプル。ClearTypeを使用し、スクリーンでの可読性を重視してデザインされた新標準フォント
記者説明会で配られた、ClearTypeとメイリオの解説や開発ストーリーを収録した小冊子。冊子内の文字もメイリオを使用しているメイリオの表示サンプル。ClearTypeを使用し、スクリーンでの可読性を重視してデザインされた新標準フォント

マイクロソフト(株)は16日、同社本社にて記者説明会を開催し、『Windows Vista』に採用された新しいデザインの日本語フォント“メイリオ”と、最新の漢字字体の規格“JIS X 0213:2004”(以下JIS2004)への対応についての説明を行なった。

Windows Vistaでは、標準フォントであるMS明朝 2書体やMSゴシック 3書体、および新しいメイリオなどで、最新の漢字字体であるJIS2004をサポートする。JIS2004対応のMS明朝/ゴシックについては、Windows XPにも提供予定である。マイクロソフト ディベロップメント(株) プログラムマネージャーの阿南康宏氏はJIS2004をサポートした“JIS2004文字セット”について、現在標準として使われている文字セット“JIS X 0208:1990”(JIS90)の第1/2水準漢字、JIS補助漢字(JIS X 0212)に加えて、第3/4水準漢字を約900文字分(JIS補助漢字との重複分を除いた文字数)追加することで、より多くの漢字をWindows Vistaの標準フォントで表現可能になると説明した。そのカバー範囲は「高校レベルの教科書は網羅した」という。また漢字だけでなく欧文の発音記号や括弧などの記号、アイヌ文字などもサポートしている。追加された約900字についてはユニコード(UTF-8、UTF-16)でサポートされ、コードページの変更はない。

マイクロソフト ディベロップメント(株) プログラムマネージャーの阿南康宏氏 Windowsと文字コードサポートのロードマップ。Windows VistaではJIS2004と新フォント“メイリオ”がサポートされる
マイクロソフト ディベロップメント(株) プログラムマネージャーの阿南康宏氏Windowsと文字コードサポートのロードマップ。Windows VistaではJIS2004と新フォント“メイリオ”がサポートされる

またJIS90では一般の印刷物に使われる漢字字体(印刷標準字体)と、コンピューター画面上に表示されるJIS規格の字体で、字体が異なる場合があった。阿南氏はこの原因を、字体の表記上の標準がなかったためと述べた。それらの反省を踏まえて、文部科学省が表外漢字(常用漢字表にない漢字)の字体を2000年に定義。JIS2004では定義された“表外漢字字体表”で示された印刷標準字体を採用することとなった。また子供の人名に使用できる漢字の表(新人名用漢字)も、2004年に改正された戸籍法施行規則によってJIS2004の印刷標準字体から字体を採用したため、JIS2004対応のフォントを搭載するコンピューター上では、新人名用漢字はすべて表現できることになる。

しかし最新の標準に準拠した結果として、JIS2004ではJIS90と比較して、96の漢字で字形に違いが生じることとなった。場合によっては地名や人名の字が、新旧フォントにより見た目が変わってしまうこともあるわけだ。そのため過去との互換性を要する用途向けに、JIS2004ベースではあるが計122文字をJIS90の字形にした“旧JIS90互換MS書体”を、“Microsoft Update”などを通じてダウンロード提供する予定となっている。対象となるOSはWindows XP/Vista、Windows Server 2003。

JIS90およびJIS2004の各フォントバージョンをサポートするOS一覧。サポートの終了したWindows 98や2000については、JIS2004ベースのフォントは提供されない
JIS90およびJIS2004の各フォントバージョンをサポートするOS一覧。サポートの終了したWindows 98や2000については、JIS2004ベースのフォントは提供されない

JIS2004をサポートしたWindows Vistaの新標準フォントであるメイリオについては、イギリス在住のデザイナー、河野英一氏により説明が行なわれた。河野氏はマイクロソフトがディスプレー上で文字の読みやすさを高める技術として開発し、Windows XPなどでサポートされた“ClearType”を日本語フォントへ適用できるかを研究するため、2002年に同社のAdvanced Reading Technology(ART)グループに加わったという。

マイクロソフトのARTグループと共にメイリオを開発した、デザイナーの河野英一氏
マイクロソフトのARTグループと共にメイリオを開発した、デザイナーの河野英一氏

河野氏はまず日本語のひらがなやカタカナの字形について、“漢字より欧文のアルファベットに近い”と分析し、欧文フォントの中でもディスプレー上での読みやすさで定評のある“Verdona(ヴァーダナ)”の手法を元に検討したという。より複雑でピクセル数の小さな文字では可読性に問題の起きやすい漢字については、画数をいかに省略するかを重点に置いたという。会場で配布されたClearTypeとメイリオに関する小冊子の中で河野氏は、画数省略の好例として書道の崩し字や高速道路の行先案内板などを挙げている。

メイリオはディスプレー上での読みやすさを高めるために、横組み文章の読みやすさを重視、欧文字と混在させたときの違和感のなさ、小さい文字サイズでの読みやすさなどを重点にデザインされている。角ゴシック系の字形を採用し、横組みでの整列感を良くするために、縦横比95:100のやや横長にデザインされ、5%ほど上方向にシフトされるといった特徴も備える。見出し用に太字の書体も含んでいる(斜体は欧文字のみ)。メイリオの欧文字については、Verdonaのデザインを担当したフォントデザイナーのマシュー・カーター(Matthew Carter)氏が担当し、日本語については日本のフォントデザイン企業である(株)シーアンドジーなどによりデザインされた。

メイリオの日本語の字形デザインを担当したシーアンドジー 代表取締役の坂本達氏
メイリオの日本語の字形デザインを担当したシーアンドジー 代表取締役の坂本達氏

またゲストとして挨拶を述べたシーアンドジー 代表取締役の坂本達氏は、日本の機器メーカーが文字作成に携わる部署を現在ほとんど持っていないことに、「いかにみっともなくてなさけないか、つくづく感じます」と苦言を呈した。坂本氏は文字もまた時代によって品質や作り方が変わるとして、日本の機器メーカーも時代に合わせた文字を作るべきであるとの意見を述べた。確かに可読性に優れたフォントの開発というのは、その文字を使う国からこそ自発的に出てくるべき要望なのが当然であり、それを日本企業ではなくマイクロソフトが率先して手がけるというのは、なんとも歯がゆい話と言えるのではないだろうか。

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