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閉館まであと4日! 今しかみられない! 今見ておきたい「さよなら、交通博物館」

2006年05月10日 00時00分更新

文● 子田 聖子

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“さよなら効果”交通博物館 今後の予定はどうなる?

「もう、アキバでは見られない」そんな思いからか、交通博物館の“さよならフィーバー”が続いている。広報担当の学芸員、齋藤政子さんに、その“さよなら効果”と、移転計画などについて、お聞きした!

――平日の昼間なのに、すごい人です(取材日4月27日)。
齋藤 ここのところ、特におおぜいの方にご来館いただいてます。
――もうこの場所にはなくなるから、ひと目見ておきたいという方が多いんでしょうか。
齋藤 いわゆる“さよなら効果”のせいか、特に年配のお客様のご来館がグンと増えています。子供のころから親しんでいただいた方とか、中には万世橋を利用されたという方もいらっしゃいます。最後に一度は見ておきたいと。
――カメラを持って熱心に撮影される年配の方が多いですね。
齋藤 ご自身の思い出話を私たちにされる方もいらっしゃるんですよ。最近は忙しいので、なかなかちゃんとうかがえないのですが。でも、なくなってしまうものとして気にかけてくれるということは、大変ありがたいことだなと思います。中には怒る方もいらっしゃいます。
――怒るというと?
齋藤 「なんで閉館しちゃうんだ」ってことですね。その場合は、閉館の理由をお話しますが、そうすると納得してくださいます。

――閉館の理由、教えていただけますか?
齋藤 それはもう、第一には「建物の老朽化」ですね。現在の本館は昭和11(1936)年の建設です。収蔵品の保管には大変気をつかっておりますが、一部には雨漏りがある場所などもあるんです。
 第二には、展示スペース、収蔵スペースが手狭になって収蔵物が展示しきれないということです。交通博物館には約28万点の資料があるのですが、実際には約2000点しか展示できておりません。それに、実車両をまるまる展示しているものは現在8車輌ですが、一番新しいものでも1940(昭和15)年の機関車「C57形135号機」だったりするんです。日本の鉄道技術が認められて世界に誇れるものになったのは、むしろ戦後、それも新幹線ができてからなんですね。でも、そういった新しいものは展示できていない(新幹線は頭部分だけ)。
 こういう博物館で最新の車輌が展示できないのは、やはり残念なことですよね。そういう意味でも、移転の話は国鉄時代の20年も前からあったんです。
――なるほど。ただ、秋葉原で長年親しまれてきた場所なので、残念です。電気街はどちらかというと“お父さんの街”ですが、ここは子供も楽しめます。家族連れで来られる方も多いのではないですか?
齋藤 家族連れどころか、親子2代、3代で来られている方もいらっしゃいます(笑)。子供の頃にお父さんに連れて来られた子供が、大きくなって自分が親になって、また子供を連れてくるというような。男の子はだいたい乗り物が好きですから。
――それで、交通博物館を見たあとは、お向かいの「万世」で食事をされるとか(笑)。
齋藤 そうですね(笑)。そういう一連の楽しみ方というか、コースとして定着している方もいらっしゃいますね。「万世」さんは、土日祝限定ですが交通博物館の中で「万カツサンド」などを販売してくださっていて、すごく人気なんですよ。
――お客さんは子供さんが多いですか?
齋藤 いや、意外に高校生以上の人が大半(約70パーセント)を占めます。最近の子供さんはよく鉄道のことをご存じで、びっくりします。模型鉄道パノラマのところで「お姉さん、今日は700系走らないの?」とか聞かれたり。新幹線の“のぞみ”ではなく700系(笑)。女の子でもくわしい子がいますね。

――今後は、埼玉県・大宮で「鉄道博物館」として、2007年10月14日に開館予定とか。新しい『鉄道博物館』では見られないから、今見ておいたほうがいい、という展示物はありますか?
齋藤 1階の鉄道関連のもの、国鉄バス、鉄道連絡船関連、これについてはすべて「鉄道博物館」で見られる予定です。なので、それ以外の2階、3階のスペースに展示されているものは、今のうちに見ていただいたほうがいいと思います。
――模型鉄道パノラマやシミュレーション機などもそのまま移されますか?
齋藤 模型鉄道パノラマはもっと大きくなって、日本最大のものになると聞いています。シミュレーション機も持って行くか、もっと最新のものになるかもしれません。
――鉄道以外のものでオススメ、または貴重というものは?
齋藤 もう、全部貴重です(笑)。それぞれいろんな関連施設に移動するはずなので、二度と見られないというわけではないですが、これだけのものをまとめて見ることはできなくなってしまうと思います。
――それにしても、実車輌などをはじめ、展示物は大きいものばかりですよね。これらの移設作業は大変だと思うのですが、いつ頃、どのように運び出されていくんでしょう?
齋藤 時期、方法とも、私ども事務局(交通文化振興財団)にはわからないんですね。ただ、昔、展示物がこの博物館に運ばれてきたときは、専門家の方が分解をして運び、そのあと組み立てたというふうに聞いています。今回もそのような方法かなとは思うのですが、はっきりとはわかりません。
――移転した後の跡地の活用については? 旧万世橋駅も取り壊される?
齋藤 それもまったくわかりません。ただ、旧万世橋駅はしばらくは残ると思います。
――こちらの職員の方たちの行き先は? 新しい博物館に行かれるんですか?
齋藤 それもまだ、まったくわからないんですよ。行くかもしれないし、行かないかもしれない(笑)。ただ移転先の大宮は、もともと鉄道の街なんですよね。
――そうなんですか!?
齋藤 以前、JR大宮駅の北側に国鉄の大宮工場というのがあったんです。今は大宮総合車輌センターという呼び方をされています。そのため、周辺には工場に勤めていらっしゃる方が住んでいるとか、その工場に関連している会社の人が多くて、今でもその名残りがあるんです。
 鉄道にくわしい人は「ああ、移転先は大宮か。納得」なんて感じかなと思います。

――鉄道好きな方が多い街? それはいいですね。
齋藤 1階に展示してある「一号機関車」も、もとは大宮の工場内の「参考館」で展示してあったんです。なので、ほんとうによくご存じの方は「一号機関車は元のところに戻るんだね」なんておっしゃいますよ。
――おみやげについても、「さよならキャンペーン」の限定品がありますね。
齋藤 DVDやミニチュア、ピンバッジやジグソーパズルなどをキャンペーン用のショーケースに並べて、販売しています。こちらは売り切れたら再入荷はいたしません。
――特にオススメのものは?
齋藤 個人的には、「絵はがき」ですね。「旧万世橋駅」、「交通博物館」の2種類があるんですが、「交通博物館」のほうの北海道の画家、鈴木周作さんに描いていただいたものがすごくいいんです。水彩の色鉛筆のようなやわらかいタッチで。
――記念メダルと刻印できる機械も置いてありますね? これ、最近はあんまり見かけないですが、値段も昔のままだし、いいですよね。新しい『鉄道博物館』にも持っていってください!
齋藤 そういう要望があったと伝えておきます(笑)。でも、最近、実は問い合わせがけっこうあるんですよ。たしかにほかの場所でほとんど見かけないものなので、いい記念になるかもしれませんね。

●交通博物館ゴールデンウイーク情報 5月1日より閉館までは休まずに営業。土日祝は混雑が予想されるため、入場制限を実施する場合があるそう。



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