ぷららネットワークス、IP映像配信サービス“4th MEDIAサービス”の現状と、新IP STB『Picture Mate 300』対応の新サービスについての説明会を開催
2006年04月14日 21時15分更新
新STBとメタデータによるUIを導入した“4th MEDIAサービス”のデモ画面。手前が新しいSTB『Picture Mate 300』。USBポートに無線LANアダプターが接続されている | USB接続の簡単設定ツール“ラ・クール”を掲げながら説明を行なう、ぷららネットワークス パートナー兼シニアストラテジストの中岡聡氏 |
(株)ぷららネットワークス(ぷらら)は14日、東京都内の本社にて報道関係者向け説明会を開催し、同社が運営するブロードバンド映像配信サービス“4th MEDIAサービス”(4th MEDIA)のビジネス概況と、新たに提供を開始した新しい映像端末(STB)『Picture Mate 300』(PM300)で動作する、新しいユーザーインターフェース(UI)を備えた“4th MEDIAメタサービス”についての説明を行なった。
4th MEDIAは、NTT東西が提供するBフレッツユーザーを対象とした映像配信サービスで、専用STBを利用してTV放送やビデオオンデマンド(VOD)、カラオケ配信などのコンテンツをテレビで楽しめる。2004年7月のサービス開始からしばらくは、ぷららや提携ISPのユーザーに限定してサービスされていたが、2005年以降はISPを限定せずに4th MEDIAを視聴できる“ISPフリー.TV on 4th MEDIA”が開始されている。
同社代表取締役社長の板東浩二氏はぷらら自体の目指す姿について、「単純なネット接続を提供するISPから、映像系を中心とする“Broadband Service Provider(BSP)”に生まれ変わっていきたい」と述べた。4th MEDIAは光ファイバーによるインターネット接続(FTTH)が必須であるが、ぷららユーザーの光化率については、総会員数約214万人(3月末時点)の23%に当たる約50万人がFTTH接続ユーザーであり、「大手プロバイダーの中でも1番高いのではないか」と述べ、今後もさらに光化を進めていくとした。
4th MEDIAの現状やPM300について説明を行なった同社パートナー兼シニアストラテジストの中岡聡氏は、4th MEDIAの会員数が約3万世帯(3月末時点)との現状を示したうえで、サービス開始1年目は“技術基盤の確立”、2年目は“コンテンツの拡充”に専念していたため、十分な営業活動が行なえなかったとし、3年目の今年度は“営業の年”として、積極的な営業活動展開により毎月1万人ペースでの会員獲得を行ない、2007年3月末には15万世帯への会員増を目指すとした。また4th MEDIAと競合他社の映像配信サービスを比較して、“TV、VOD、カラオケのすべてを提供するのは4th MEDIAだけ”“ハリウッドのメジャー映画スタジオ全社の作品をVOD配信しているのも4th MEDIAだけ”など、幅広いコンテンツ提供を実現しているメリットを強調した。
4th MEDIAと他社の映像配信サービスの違いを示す表。個々のサービスでは4th MEDIAより優れるサービスもあるが、すべてを高いレベルで備えるのは4th MEDIAのみとしている |
特にコンテンツについては、「昨年(2005年)は差別化コンテンツに力を入れた」(中岡氏)と言う。若年層に人気の高いスポーツ番組については、サッカーJリーグ(J1、2)の全試合放映や日本人選手の所属する海外リーグの試合放映を行なうほか、米国WWEのプロレス放映、海外TVドラマの放映など、独自性の高いコンテンツを提供しているとした。スポーツ番組についてはライブ中継だけでなく、試合後のVOD配信や自社制作によるハイライト番組などを組み合わせて、幅広いコンテンツ提供を行なっている。
新STBのPM300については、まず従来のSTBは買取のみだったところを、新たにレンタル(月額525円)での提供も行なう。買取の場合の価格は2万4150円。またオプションで無線LANアダプターも提供することで、使い勝手を広げる。推奨する無線LAN規格はIEEE 802.11a/gとされている。
PM300本体とオプションの無線LANアダプター。本体前面にはUSBポート×2 | 背面にはLAN端子のほか、D1出力、Sビデオ出力、コンポジットビデオ出力、光デジタルオーディオ出力などが並ぶ | |
Picture Mate 300 |
既存の4th MEDIA用STBでは、ウェブブラウザーベースのUIが採用されていたが、PM300では新しい4th MEDIAメタサービスを提供することで、使い勝手の改善を行なう。中岡氏はSTBのUIについて、「お客さまは家電(の使い勝手)と比較される」と述べ、HDD/DVDレコーダーなどに似た操作系が求められているとして、ウェブブラウザーベースでは実現しにくいこうした操作系を、新たにメタデータで作ったUIで実現する仕組みを採用。ウェブブラウザーの制限がなくなり操作性は向上したという。UIをメタデータで作成するため、サービスを提供するベンダーが独自にUIをデザインすることも可能とのことだ。
4th MEDIAの新しいユーザーインターフェースのイメージ |
TV放送の視聴チャンネル選択画面 | VODコンテンツの選択画面の例 |
PM300ではチャンネル切り替えなどの操作に対するレスポンスも向上したほか、VODのレジューム再生、EPGからの視聴予約なども実装される。また従来のSTBは待機状態からの起動に1分程度かかっていたところを、PM300では1秒強へと大きく高速化した。また無線LANによる接続をサポートしたこともあり、通信中のパケット欠落による画質劣化を回避するため、パケット欠落を復元する“FEC(Forward Error Collection:前方誤り訂正)技術”も導入された。
無線LANで起こりがちなデータ欠落による画質劣化を防ぐ“FEC技術”の説明図 |
なお既存の4th MEDIA用STBや、STB機能を内蔵する(株)東芝の液晶TV“REGZA Z1000シリーズ”では、4th MEDIAメタサービスには対応できない。しかしSTBの違いによって見られない番組が生じるようなことはないと、中岡氏は明言した。既存の4th MEDIAユーザーも安心してよさそうだ。
このほかにも、煩雑な4th MEDIA関連の設定を自動で行なうUSBメモリーデバイス型のネットワーク設定ツール“ラ・クール”も次世代版へのアップデートが予定されているという。次世代版では市販されているほとんどのブロードバンドルーターに対応する予定である。
なお現在4th MEDIAで提供されているコンテンツは、すべてSD放送品質である(ビットレートは映像/音声/FEC用の訂正データを含めて約7.3Mbps)。ハイビジョン品質のコンテンツの提供が期待されるが、VODコンテンツは検討中であるものの、そもそも新作映画以外はハイビジョン化されたコンテンツがハリウッドでも少ないとのこと。またTV放送のハイビジョン化は、IP通信網でのデジタル放送配信にめどがついてからとのことだ。