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【アキバ・キーマンインタビュー No.2】フェイスの“司令塔”倉石部長がメディアに初登場!

2006年03月28日 11時44分更新

文● 大森徹哉

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 秋葉原を代表する自作PCパーツ店としておなじみのフェイス秋葉原本店。自作PC業界全体の景気が思わしくない中、人気店として着実な実績をあげている。
 そんな同店もTWOTOPとの合併、パソコン工房を全国展開するアロシステムへの吸収、そして昨年MCJと提携してPCジャパングループとなるなど、M&Aの渦中にあってその動向が注目されている。
 そのフェイスオープン以来のスタッフで、店舗運営、商品の仕入れ、広告・マーケティングなどを一手に手がけているのが、秋葉原歴13年になる倉石敬介氏。フェイス成功の秘密や、今後の展望を語ってもらった。

大学生のバイトからそのままフェイスに入りました

――店舗で取材をしていて突っ込んだ話になると、必ず「倉石さんに聞いてください」と店員さんに言われるんですよ。これは1度、倉石さんに話を聞かないといけないと、いつも思っていました。
倉石 私なんか本来、取材を受けるような立場でもないんです。写真出るのも初めてです(苦笑)。
――そもそもこの業界に入ったきっかけは?
倉石 大学時代のアルバイトです。実は留年をしていまして。授業が少なく暇になったので、「フロム・エー」を見ていたんです。そうしたら、ちょうどTWOTOPの求人が出ていて。
――いつ頃ですか?
倉石 1993年です。当時はPCが1台40万円とか50万円とかしていて、ちょうど30万円を切るPentium Proが出てきて、すごくインパクトが強かった。その頃はTWOTOPのオリジナルPC「VIP」を売っていましたね。
――その後は?
倉石 TWOTOPで5年くらい働いた後、当時副社長の久安さんが独立をして(※TWOTOPから独立してフェイスを設立)、そのときにアルバイトのままフェイスに移りました。最終的には大学を辞めて、というか追い出されるような形でしたね(笑)。
――卒業せずに?
倉石 そうです。それから社員としてフェイスにいます。
――でも、東大なんですよね?
倉石 一応、そうなんです(苦笑)。
――では久安さん(フェイス創業者・前社長)とは、バイト時代からの知り合いなんですか?
倉石 そうですね。すごく実質的、プラクティカルな考えをする方です。たとえば「社長、こんな案内が来ていますけど、この商品やりますか?」と相談をすると、「売れればやっていいよ」って、ひと言それだけ(笑)。あたり前ですけど、そこまで実質的な考え方をするんですよ。ですから、組織そのものもすごくシンプルでした。
――わかりやすいですね。
倉石 そうです。おおざっぱな反面、在庫についてはものすごくシビア。(社長は)PCも使えないし、データベースにも頼らないけれど、200ページの在庫表を印刷してきて自分で見て、何に使う、どこで安売りするとか、全部やっていました。最近は逆にシステムに頼り過ぎちゃっていて、かえって見えなくなっている部分もありますね。
――そうすると以前のフェイスさんでは、社長さんが全部判断していたんですか?
倉石 最初の1、2年はそういうやり方をずっとやっていました。徐々にシステマチックに変えていきましたけど。フェイスは'98年11月にオープンしたんですが、オープンから1ヵ月でPC本体だけで1000台代以上売れたんです。ショップブランドPCで、しかも無名のショップが広告を載せるだけでこんなに売れるのかと、当時は本当にびっくりしました。翌年2月にはフェイスのインターネットショップもオープンし、そこからぐんと売り上げが伸びていきました。でも、ここ数年は残念ながら横ばいです。
――業界的にもここ数年はだいぶ厳しい状態ですよね。
倉石 そうです。でも実は、商品点数は以前より多く売れています。薄利多売と単価の下落に苦しんでいます。たとえば、アロシステムグループで、HDDは1ヵ月に7万から8万台消費しています。それでもHDDでは、全然儲からないんです。
――1台数十円しか利益がないとか?
倉石 そうです。赤字になってしまうケースも多々あります。そこを大量に仕入れるなど、スケールメリットを生かして交渉していくのが今の命題なんです。しかし現実は厳しく、たとえば我々が月に3万台買って、じゃあ今度アロシステムと一緒になったから6万台になりました、さらにいろんなショップさんの分も集めて10万台まとめて買うからと交渉する。それでも大して安くならないんですよ。それよりもどっかの流通で余っちゃったから処分だとか、特価のものがポッと安い価格で出てきてしまう。そうすると、その価格に(秋葉原の)店頭価格が引っ張られてしまうんです。今のパーツ業界はスポット品ばかりです。



店舗のフェイスと、流通の両方を持っているのはリスクヘッジ

――他店が流通の段階で安いものを手に入れてしまうと、そこに価格が引っ張られてしまうということですか?
倉石 そうです。ですから、願うことならうちは全部の通過点になりたい。そんな発想から流通と、店舗のフェイスと両方を持つようになりました。リスクヘッジなんです。メーカーさんで1000台余っている商品がある。うちの規模じゃ1000台は大きいだろうっていう時にいろんなお客さんに声かけて、半分でもやれればうちでやりましょう、そういうやり方をしてきました。HDDもずっとそういう形で回してきました。
――これまでは、そういうやり方がすごく効果的でしたよね?
倉石 まあ、そうですね。
――でも、全部の通過点というのは、すごく大胆な発想ですね?
倉石 でもそのくらいやろうと今でも考えていますよ。そうすればチャネルの統制ができるだろうと。もちろん、価格を統制するのはまずいですけれど。
――今、秋葉原の市場では、安い価格で統制が取られているようなところがありますよね? みんな最安店に価格を合わせるような。本当は流通の部分を握って、もうちょっと市場をコントロールしたいと思っている?
倉石 流通がたくさんあって、業界の効率を悪くしているというのはあります。たとえば、HGSTさんのHDDがあって、正規代理店があります(手帳に図を書いて説明する)。そしてその下に子がいて、孫がいて。さらに同じ代理店から別の孫へと流れ、商品の出どころが同じ別の孫同士から、アロシステムに対してオファーがくるんです(メーカーの代理店から直接製品購入のオファーがある場合と、いくつかの流通を経てオファーが来る場合があるとを説明)。これは価格競争が起きないわけがない。こういう流通がたくさんあるのは本当に無駄で、ここを整備していかないと、業界はますます厳しくなってしまいます。もちろん、ユーザーさんに高く売ろうというつもりはないんです。効率のいい流通システムにより、せめて商売として成り立つ程度に健全化したい。

自分にとって一番怖いのは会社にとって影響力を持てなくなること

――アロシステムに吸収される形になって、フェイスの社長さんと一緒に何人かが辞められ、倉石さんは残る形になりましたね。
倉石 私もアロシステムとのM&Aの件ではかなり悩みました。ただ、直接今の社長(アロシステム・大野社長)と会うようになりまして、もちろん、企業風土とかやり方など違いはいっぱいありますが、ものすごい情熱と正義感とパワーを感じ、そこについて行こうと思うようになりましたね。
――フェイス創業者の久安社長が辞め、倉石さんも辞めるとは考えなかったんですか?
倉石 さぁどうでしょう(苦笑)。でも。自分にとって一番怖いのは、会社にとって影響力を持てなくなること。そういうポジションになったら意味ないと思っていますから。
――今は影響力が持てる形でやれている?
倉石 そうですね。ただ今はフェイスだけの頃より10倍くらい人がいて、規模も大きく、不透明な部分も出てくる。正直、戸惑う部分もあります。今は勉強中です。う~ん、本当は僕、大企業って好きじゃないかもしれません(笑)。
――え、もう大企業じゃないですか(笑)!?
倉石 今はね。800人とかいて大企業になっちゃいましたね。だけどそんな中でも、会社だった頃の柔軟性は維持したいと思います。
――大きい組織ながら、小さい店の良さを持つというイメージですかね?
倉石 そうです。たとえば大阪のあるお店さんさんですと、お店に立たれている方が直接仕入れ先に電話して、「~ちょうだい、いくらいくらで」って言っています。それは小さなお店の強みですね。お客さんと直接話す人が、業界のトレンドとニーズを一番把握していますから。また、在庫が余るようなことがあったら、仕入れの方が直接レジの前に置いたり、並べ替えてみたりするとかね。仕入れから販売まで、より少ない人数でできるに越したことはない。大きな組織になっても、これにどれだけ近づけるかがカギです。アロシステムが持つボリュームによる交渉力と、小さなショップの機動力のいい所取りができればいいのですが。



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