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インテル、ビジネスおよびエンタープライズ分野向けプラットフォームのロードマップについて説明

2006年03月22日 19時26分更新

文● 編集部 小西利明

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現在から2007年までのXeon DPシリーズのロードマップとTDPの変化。Coreアーキテクチャーを全面的に採用する“Woodcrest”世代で大きくTDPが下がる
現在から2007年までのXeon DPシリーズのロードマップとTDPの変化。Coreアーキテクチャーを全面的に採用する“Woodcrest”世代で大きくTDPが下がる

インテル(株)は22日、報道関係者向けの説明会を開催し、米国で7~9日に開催された“Intel Developer Forum Spring 2006”(IDF)で公表された内容を踏まえた、ビジネス/エンタープライズ市場向けのCPUとプラットフォームのロードマップと最新動向について説明した。

インテル マーケティング本部 本部長の阿部剛士氏
インテル マーケティング本部 本部長の阿部剛士氏

2006年以降の同社の事業戦略を説明した同社マーケティング本部 本部長の阿部剛士氏は、先のIDFのメインテーマは“消費電力”であったとし、モバイルデバイスからサーバーシステムまでプラットフォームを問わず、“消費電力あたりのパフォーマンス”が購入時のキーとなっていると述べた。一方で過去10数年間のインテルCPUは、性能は上がったが消費電力も増大し続けるという問題があったとし、反省すべき点であったとした。阿部氏は消費電力増大について、インテル全社の中で最初に問題視したのが日本だったと述べた。Pentium 4が登場した当時、パソコン/システムメーカー側から消費電力増大を危惧するする声が寄せられたため、インテル社内に問題を検討するタスクフォースが設立されたという経緯があったとのことだ。



Pentium世代からIntel Core Duoプロセッサーまでの命令当たりの消費電力を示すグラフ。Pentium 4は横軸の処理性能は増大したものの、縦軸の命令当たりの消費電力も増大していた。Core Duoでは処理性能を維持しながら、Pentium世代まで命令当たりの消費電力を削減した
Pentium世代からIntel Core Duoプロセッサーまでの命令当たりの消費電力を示すグラフ。Pentium 4は横軸の処理性能は増大したものの、縦軸の命令当たりの消費電力も増大していた。Core Duoでは処理性能を維持しながら、Pentium世代まで命令当たりの消費電力を削減した

消費電力増大を抑制しながらパフォーマンスを向上させるのが、2006年1月に登場した“Coreアーキテクチャー”であると阿部氏は述べた。Pentium M系列のアーキテクチャーの拡張版であるCoreアーキテクチャーによって、命令当たりの消費電力を大幅に少なくできたとしている。またアーキテクチャーと並んで消費電力抑制に効果があるのがプロセス技術(製造プロセスの微細化)であり、たとえば90nmプロセスから65nmプロセスへの変更で、20%のパフォーマンス向上と30%の消費電力削減が実現できたとしている。現在同社では全世界に65nmプロセスの製造工場を4つ稼働させているという。さらに年内には300mmサイズのウエハーを扱う工場を2つ追加するが、こちらは65nmの次の世代にあたる45nmプロセスを採用する。

今年後半に登場する新CPUについては、デュアルコアXeon DPの後継に当たる“Woodcrest(ウッドクレスト)”と、Pentium D 9xxシリーズの後継に当たる“Conroe(コンロー)”についての簡単な説明が行なわれた。どちらもCoreアーキテクチャーを採用し、デュアルプロセッサーシステム向けCPUからモバイルまで、すべてがCoreアーキテクチャーで統一される。Woodcrestは現行世代のXeon DPである“Paxbille DP(パックスビル ディーピー)”コアを採用するデュアルコアXeon 2.8GHz 2×2MB 2次キャッシュと比較して、80%のパフォーマンス向上と35%の消費電力削減を実現する。システムバス周波数も向上し、1333MHzとなる。阿部氏はこのWoodcrestについて、「エポックメイキングな製品」と述べて期待を示した。Conroeについては、Pentium D 950-3.40GHzと比べて、40%のパフォーマンス向上と40%の消費電力削減を実現できるとしている。

次世代Xeon DPの“Woodcrest”では、80%のパフォーマンス向上を実現しながら、35%の消費電力削減を果たすという
次世代Xeon DPの“Woodcrest”では、80%のパフォーマンス向上を実現しながら、35%の消費電力削減を果たすという
インテル マーケティング本部 デジタル・エンタープライズ統括部長の平野浩介氏
インテル マーケティング本部 デジタル・エンタープライズ統括部長の平野浩介氏

阿部氏に続いて登壇した同社マーケティング本部 デジタル・エンタープライズ統括部長の平野浩介氏は、CPUとプラットフォームのロードマップと特徴についての説明を行なった。平野氏はデータセンターの肥大化と消費電力の増大について触れ、「地球シミュレータはピーク時消費電力が1000万Wを超え、年間の電気代だけで10億円以上と聞く」と巨大なサーバーシステムが莫大な電力を必要とする例を挙げたうえで、大手ポータルサイトなどは毎年2~3倍ものシステム増強を行なっているが、現在の延長線上で今後も需要を満たせるサーバー増設が可能かどうか危惧しているという話を披露した。

Xeonプロセッサーのロードマップについては、デュアルプロセッサーシステムの“パフォーマンスモデル”、“メインストリームボリューム”、ラックマウント型など“超高密度サーバー”の3路線に分かれたTDP(熱設計消費電力)表記付きロードマップを提示した。これによると、2006年第2四半期に登場するパフォーマンス/メインストリーム向けXeon“Dempsey(デンプシー)”は、現行のXeon&Pentium Dと同じNetburstアーキテクチャーベースで、95~130WものTDPとなる。しかし今年後半に登場するCoreアーキテクチャーのWoodcrestになると、これが80Wまで低消費電力化されるという。動作クロック周波数は3GHzに達する。超高密度サーバー向けとしては、15日にCore Duoプロセッサーをサーバー向けに流用した低電圧版デュアルコアXeonプロセッサー(Sossaman:ソッサーマン)が発表された。こちらはTDP 31Wと、さすがに消費電力は低い。今年後半には超高密度サーバー向けにも低電圧版Woodcrestが登場し、こちらのTDPは40Wとされている。クロック周波数は通常電圧版Woodcrest2割ほど低いとのことだ。



2007年までのXeon DPシリーズのロードマップ。3つのセグメントごとにTDPを分けている。2007年早々には、Xeonシリーズはいよいよクアッドコアに移行する
2007年までのXeon DPシリーズのロードマップ。3つのセグメントごとにTDPを分けている。2007年早々には、Xeonシリーズはいよいよクアッドコアに移行する

2007年になると、パフォーマンス/メインストリーム向けには、初のクアッドコア(CPUコア4個)CPUの“Clovertown(クローバータウン)”が登場する。パフォーマンスモデル向けではTDP 120W以下、メインストリーム向けにはTDP 80Wのものが提供される予定。一方消費電力に対する要求の厳しい超高密度サーバー向けでは、クアッドコアはまだ厳しいとの理由で低電圧版Woodcrestが引き続き提供される。また平野氏は、消費電力についてはCPUだけでなくシステムレベルでどう考えていくかが重要として、CPUの進化以外にプラットフォームやその上で動作するソフトウェアによる向上も必要として、インテルはそれらを提供していくとした。

DempseyからClovertownまでをカバーするプラットフォーム“Bensley(ベンスレイ)”についても簡単に説明された。パフォーマンス/消費電力性能の向上に加えて、ハードウェア仮想化技術をメインストリームサーバー向けに提供することを目標としており、チップセットの“Blackford(ブラックフォード)”、LANチップの“Gilgal(ギルガル?)”などで構成されるほか、メモリーモジュールとして初めて“FB-DIMMメモリー”を採用する。チップの出荷は2006年第1四半期中に行なわれ、2006年第2四半期にはサーバーメーカーから製品の出荷が始まる予定である。Xeon DPベースのプラットフォームとしては、別のスライド中にて“Glidewell(グライドウェル)”の名前も挙がっている。Glidewellについての説明はなかったが、Bensleyがサーバー向けに対して、Glidewellはワークステーション向けプラットフォームと区別されている。チップセットには“Greencreek(グリーンクリーク)”が用意される。

Dempsey、Woodcrest、Clovertownの3世代に対応するサーバー向けプラットフォーム“Bensley”と、主なコンポーネント
Dempsey、Woodcrest、Clovertownの3世代に対応するサーバー向けプラットフォーム“Bensley”と、主なコンポーネント

Itaniumプロセッサーについては、現行の“Madison(マディソン)”から年内にデュアルコア化された“Montecito(モンテシト)”へ移行する。Motecitoは90nmプロセス世代で、製造プロセスの縮小(Madisonは130nmプロセス)に加えてクロックゲーティング技術などの採用により、消費電力の低減を行なう。2007年には新たに“Montvale(モントベール)”と呼ばれるコアが登場予定で、その先にはクアッドコア以上のコアを備える“Tukwila(タックウィラ)”“Poulson(ポールソン)”が控えている。

Itaniumシリーズの進化の系譜。Montecitoで90nmプロセスに移行してデュアルコア化、Tukwilaでは65nmプロセスでクアッドコア化される予定 Itanium、Xeon MP、Xeon DPと対応プラットフォームのロードマップ。2007年にはXeonシリーズはいずれもクアッドコア化される
Itaniumシリーズの進化の系譜。Montecitoで90nmプロセスに移行してデュアルコア化、Tukwilaでは65nmプロセスでクアッドコア化される予定Itanium、Xeon MP、Xeon DPと対応プラットフォームのロードマップ。2007年にはXeonシリーズはいずれもクアッドコア化される

4CPU以上のマルチプロセッサシステム向けXeon MPは、2006年中は現行(Paxville MP)と同じNetburstアーキテクチャーが継続され、2006年後半に“Tulsa(タルサ)”が登場する。2007年にはCoreアーキテクチャー採用するクアッドコアCPU“Tigerton(タイガートン)”の登場で一新される。Tigertonではプラットフォームも新しい“Caneland(ケインランド)”へと更新される。チップセットとしては“Clarkboro(クラークボロ)”が予定されている。CanelandプラットフォームではTigertonの次世代に当たるCPU“Dunnington(ダニングトン)”も対応予定となっている。

インテル マーケティング本部 エンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング部 ビジネス・クライアント・プログラム・マネージャーの岡本隆志氏
インテル マーケティング本部 エンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング部 ビジネス・クライアント・プログラム・マネージャーの岡本隆志氏

最後には、同社マーケティング本部 エンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング部 ビジネス・クライアント・プログラム・マネージャーの岡本隆志氏により、今後登場予定のビジネスクライアント向けプラットフォームの利点についての説明が行なわれた。岡本氏はビジネスクライアント向けプラットフォームの重要な点として、「セキュリティーとマネージャビリティー(管理性)の強化が非常に大きい」としたほか、これらの要素と生産性の向上を実現するには、さらなるパフォーマンスが必要であると述べた。

2006年に登場予定のクライアントデスクトップ向けプラットフォーム“Averill(アブリル)”を採用するデスクトップパソコンは“Averill Professional Desktop”と呼ばれており、CPUにはConroe、チップセットには“Intel Q965+ICH8-DO”、GbE対応LANチップに“Nineveh(ニネベ) GbE w/Intel AMT FW”といったコンポーネントで構成される。これらのコンポーネントはハードウェア仮想化技術“インテル バーチャライゼーション・テクノロジ”(VT)と、次世代の“インテル アクティブ・マネージメント・テクノロジ”(iAMT)に対応している。



新しいビジネスクライアント向けプラットフォーム“Averill Professional Desktop”を構成するコンポーネント。CPUやチップセットといったチップだけでなく、ファームウェアや管理用ソフトウェア、ドライバーなどのソフトウェアも必要な要素である ConroeとIntel 965チップセットで実現される機能。VTやiAMTといったビジネスクライアント向け機能だけでなく、HDMIサポートや新しいグラフィックスコアなど、コンシューマーにも重要な機能も実装される
新しいビジネスクライアント向けプラットフォーム“Averill Professional Desktop”を構成するコンポーネント。CPUやチップセットといったチップだけでなく、ファームウェアや管理用ソフトウェア、ドライバーなどのソフトウェアも必要な要素であるConroeとIntel 965チップセットで実現される機能。VTやiAMTといったビジネスクライアント向け機能だけでなく、HDMIサポートや新しいグラフィックスコアなど、コンシューマーにも重要な機能も実装される

岡本氏はVTとiAMTについてより詳しく説明した。まずVTだが、既存のソフトウェアベースの仮想化技術に対して、ハードウェア支援によりOS側の変更が不要で、仮想マシンの制御ソフト(VMMソフトウェア)も簡素で済むとしている。またiAMTはチップセットとLANチップおよびソフトウェア(BIOSやLANチップのファームウェアなど)で実現され、クライアントパソコンがフリーズしていたり電源オフ状態など操作不能な状況でも、ネットワーク経由での監視と修復、制御を可能とする。

さらに岡本氏は、この2つの技術を組み合わせて実現する“エンベディッドIT”を、新しいクライアントパソコンの管理機能として重要視してみせた。これはVTとiAMTに対応したプラットフォーム上で実現されるもので、まず1つのクライアントパソコン上で通常エンドユーザーが利用する環境“ユーザー・パーティション”と、組織内のIT管理部門が操作する“サービス・パーティション”の2つを動作させる。ユーザー・パーティションからはサービス・パーティションは不可視であるため、サービス・パーティション内にある管理用ソフトウェアなどを、エンドユーザーが削除したり停止したりすることはできない。一方でIT管理者はネットワーク経由でサービス・パーティションを操作して、クライアントパソコンの管理やメンテナンスを行なえる。またユーザー・パーティションからのネットワークアクセスはサービス・パーティションで監視できるため、サービス・パーティション側がファイアウォールとしてネットワーク上でのやり取りを管理することが可能となる。ウイルス対策や情報流出の監視などにも利用できるだろう。

VTとiAMTを応用したデスクトップパソコン管理手法を、同社では“エンベディッドIT”と呼び、新しい管理手法として普及を図る
VTとiAMTを応用したデスクトップパソコン管理手法を、同社では“エンベディッドIT”と呼び、新しい管理手法として普及を図る

こうした高度な管理機能を備えるクライアントプラットフォームは、2006年登場Averill Professional Desktopでデスクトップパソコンから実現されていくが、その後はモバイルプラットフォームにも展開される予定とのことだ。

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