機構設計の加藤氏は、2004年の秋からThinkPad X60シリーズの開発に取り組んできたが、「世界最小を目指して開発された『ThinkPad X40』のボディーに、より高密度でチップサイズの大きなデュアルコアのCPUや対応チップセットを収納するためには、今まで以上にシビアな強度アップの仕組みを取り入れる必要があった」と語る。ThinkPad X60では、X40と同一サイズの本体にデュアルコアのCPUを搭載したほか、2.5インチHDDのサポートなど、X40以上の拡張性も確保している。
内部カット | X60sでは、液晶パネルを軽くするために用いられたフレームなしの液晶が用いられた(右)。左はX60のもの | |
撮影:小林 伸 |
ThinkPad X60/60sの発表会では、基板の面積を25%削減し、そのスペースに大型ファンを導入。冷却性能を1.4~2.4倍に向上させたこと、基板の固定位置を最適化し、ハンダ付けされたチップへのストレスを減らす“Hover構造”を採用したことなどが紹介された。また、HDDのコネクターを伝わる衝撃を軽減するために、Tシリーズと同じフローティング構造も採用した。
発表会では積極的にアピールされなかったことだが、サイズとフォルムを保ちつつ、より軽量化を行なうために「液晶パネル自体を軽くする」というアイデアも採用したと加藤氏は語る。X60sとX60のディスプレーは共通の液晶カバーを使用しているので、一見すると同じ液晶ディスプレーのようだが、より軽量なX60sでは、同じ液晶パネルでフレームのない“軽量化LCD”を採用。約70gの軽量化を実現したという。
機構設計の加藤氏 | 製品開発統括担当の田保氏 |
製品開発研究所企画・開発推進 製品開発統括担当の田保光雄(たぼ みつお)氏は「設計コンセプトとして、軽く小さくは狙っているんだけれども、機能を落としてまで軽くしようとは考えなかった」と言う。「大きくすることでと軽くできる場合もある」が、サイズと重量のバランスを取るため「敢えてそれも行なわなかった」と田保氏は語る。
X60とX60sは共通サイズで、ともに12.1インチのTFT液晶パネルを装備している。ただし、X60sでは上述のパネルの相違に加え、より軽量な冷却機構を採用したため、50g程度の差が出る。また、標準の“4セル拡張容量バッテリー”(約4.5時間)に加え、装着時にX40/X41シリーズと同サイズになる“4セル・スリム・ラインバッテリー”(約3.5時間)の使用も可能。さらにHDDを1.8インチとすることで、ThinkPad Xシリーズでは史上最軽量の約1.16kgの重量を達成できたという。
製品企画を担当したThinkPadマーケティング プロダクトマネージャーの木村香織氏は「ThinkPad X60とX60sの売り上げはほぼ半々」と話す。木村氏の説明では、日本で販売されているモデルではすべての機種で軽量フレームを採用しているが、ほかの国では軽量化されていないTFTパネルを搭載しているケースもあるという。もうひとつ日本ユニークな部分としては1.8インチHDDのモデルを用意した点で、これは日本専用で、海外では販売していないモデルになるそうだ。
こういった特定地域をターゲットにした製品開発は、日本アイ・ビー・エム(株)の時代にはあまり行なわれてこなかった部分で、レノボに移って変化してきた部分のひとつになるという。