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【IDF Spring 2006 Vol.2】ブロードバンド無線インターネットとUMPCで実現するモバイルパソコンの新次元――モビリティー事業部ショーン・マローニ氏基調講演

2006年03月11日 19時09分更新

文● 鈴木淳也

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Napaに続く2007年前半登場のプラットフォーム“Santa Rosa”が公開された
Napaに続く2007年前半登場のプラットフォーム“Santa Rosa”が公開された

YonahベースのCore Duoを搭載したノートパソコン向けプラットフォーム“Napa”は、2006年後半のMerom登場を期に“Napa Refresh”というプラットフォームに変更される。だがチップセットや無線LANモジュールなど、CPU以外のコンポーネントはすべてNapaと変わらない。これが大きく変わるのは、2007年前半に登場予定の“Santa Rosa(サンタロサ)”プラットフォームだ。Santa RosaではMeromベースのCPUに加え、新たにチップセットが“Crestline(クレストライン)”と“ICH8-M”、無線LANチップに“Kedron(ケドロン)”を採用する。Crestlineでは第4世代のグラフィック機能が統合され、インターフェースの拡充など各種の機能強化が図られているのが特徴だ。

Santa Rosaの主な特徴。MeromベースのCPUが採用されるほか、100~250Mbpsの無線LANを実現するIEEE 802.11nのサポートと、マシンのさらなる高速起動(デモでは数秒ほどでWindows XP起動していた)が挙げられる Santa Rosaの主要コンポーネント。チップセットCrestline+ICH8-Mは第4世代の統合型グラフィックス機能を搭載し、セキュリティー機能搭載やインターフェース増加などの強化が行なわれる
Santa Rosaの主な特徴。MeromベースのCPUが採用されるほか、100~250Mbpsの無線LANを実現するIEEE 802.11nのサポートと、マシンのさらなる高速起動(デモでは数秒ほどでWindows XP起動していた)が挙げられるSanta Rosaの主要コンポーネント。チップセットCrestline+ICH8-Mは第4世代の統合型グラフィックス機能を搭載し、セキュリティー機能搭載やインターフェース増加などの強化が行なわれる

新しい無線LANモジュールKedronは、ようやく標準化が完了した次世代無線LAN規格“IEEE 802.11n”を採用する。802.11nは802.11b/gの上位版にあたる規格で、100Mbps以上の高速無線通信が可能となっている。通信速度は将来的に、250~500Mbpsクラスまで引き上げ可能とされている。802.11nはMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)と呼ばれる技術を採用しているのが特徴で、2つのアンテナを同時制御することで、より広い帯域で安定した通信を行なえるようになっている。インテルは以前より「802.11nの採用は標準化が完了しだい進める」と表明しており、標準化のタイミングをもって実行に移したことになる。

Santa Rosaのもう1つの大きな特徴は、KedronとCrestlineに接続される“Robson(ロブソン)”と呼ばれるモジュールの存在である。東芝やサムスンが主に製造を手がけているNAND型フラッシュメモリーをモジュール化してパソコンに内蔵するもので、チップセットのCrestlineに直結して利用する。そのメリットはパソコンの高速起動だ。壇上で示されたデモでは、数秒程度でWindows XPが起動し、Robsonを搭載していないノートパソコンに比べ、明らかに2~3倍以上の速度差が感じられた。

Santa Rosaでの超高速起動は、Robsonと呼ばれるNAND型フラッシュメモリーを搭載したモジュールで実現される
Santa Rosaでの超高速起動は、Robsonと呼ばれるNAND型フラッシュメモリーを搭載したモジュールで実現される

ちなみに余談だが、Santa Rosaという名称はどこから来たのだろうか。実はワインカントリーで有名なSanta Rosaのこと。Centrinoプラットフォームにつけられる開発コード名“Sonoma”やNapaは、ともにワインカントリーで有名な場所だ。Sonoma→Napa→Santa Rosaという順序で、地理的には次第に北上を続けている。となると、Santa Rosaの次のプラットフォームには、さらに北にあるワインカントリーが名称に使われることになるのかもしれない。

講演ではそのほかにも、“2006 Concept Notebook”と呼ばれるコンセプトマシンが発表された。専用ドックに差せばデスクトップパソコンになり、外出時はノートパソコンとして利用できる。さらにノートパソコン時にはディスプレーとキーボード部分の配置を自在に変更することが可能で、タブレットPC的な使い方ができるほか、ディスプレー部分をキーボードより前面にスライドさせて、シネマディスプレー的な使い方をすることも可能なものだ。

“2006 Concept Notebook”と呼ばれるコンセプトマシンは、コンバーチブル型タブレットPCを彷彿とさせる、ディスプレーとキーボードを分離して自在に配置できる点が特徴となっている ディズプレイの向きを回転させることで、立てかけ型TVのような形でキーボードを背面にまわすことも可能。狭い場所でも操作できるということで、マローニ氏は“エコノミークラスモード”と表現していた。右手後ろにあるのがドック
“2006 Concept Notebook”と呼ばれるコンセプトマシンは、コンバーチブル型タブレットPCを彷彿とさせる、ディスプレーとキーボードを分離して自在に配置できる点が特徴となっているディズプレイの向きを回転させることで、立てかけ型TVのような形でキーボードを背面にまわすことも可能。狭い場所でも操作できるということで、マローニ氏は“エコノミークラスモード”と表現していた。右手後ろにあるのがドック
2006 Concept Notebookを“フライトモード”と呼ばれる状態に変形させたところ。キーボードを使用せずにタッチスクリーンで操作できるため、狭い場所での作業に向いている
2006 Concept Notebookを“フライトモード”と呼ばれる状態に変形させたところ。キーボードを使用せずにタッチスクリーンで操作できるため、狭い場所での作業に向いている

モバイルWiMAXの時代へ

“IEEE 802.16-2004”と呼ばれる、屋内~屋外の固定アンテナで通信する形式の第1世代のWiMAX規格の製品。各メーカーが家庭やオフィス向けの各種アンテナを提供している
“IEEE 802.16-2004”と呼ばれる、屋内~屋外の固定アンテナで通信する形式の第1世代のWiMAX規格の製品。各メーカーが家庭やオフィス向けの各種アンテナを提供している

欧米や韓国など一部の国では、数ヵ月以内に商用サービスの開始がアナウンスされている広域無線LAN技術“WiMAX”が、モバイル用途に活用できる日が到来しつつあるようだ。“IEEE 802.16-2004”と呼ばれる現在の第1~2世代WiMAXでは、屋内または屋外に設置された固定アンテナと基地局を結んで無線データ通信を行なうことを目的としていた。この形態は家庭やオフィスのブロードバンド接続環境には利用できるものの、出先でノートパソコンから接続するというモバイル用途には向かない。

講演にて紹介されたのは、外出先からノートパソコン経由でWiMAX通信が可能になるパソコンカードモジュールだ。2006年内に登場予定のこのカードは、モバイルでの通信をサポートする“IEEE 802.16e”に対応している。インテルではこのモバイル環境に対応した第3世代のWiMAXが、2006年にも登場予定と以前から述べていたが、いよいよ現実となるようだ。

ステージ上に突然現われたバイク。その正体はWiMAXアンテナを内蔵し、どこからでもインターネットに接続可能なモバイル端末バイクだ 運転席正面のディスプレーには地図が表示され、目的地までのルートをインターネットで検索することも可能
ステージ上に突然現われたバイク。その正体はWiMAXアンテナを内蔵し、どこからでもインターネットに接続可能なモバイル端末バイクだ運転席正面のディスプレーには地図が表示され、目的地までのルートをインターネットで検索することも可能

WiMAXサービスの実現には国ごとに異なる法規制の問題や、通信キャリア側の対応を待たなければならない。今回パソコンカード向けのモジュールの提供開始がアナウンスされたことで、今後数年で製品の低価格化やサードパーティの参入が期待されるところだが、日本でのサービスインに関してはまだまだ不透明だ。3G携帯電話、PHSに続く第3のモバイル通信手段として、今後の関連ベンダーの活躍に期待したいところだ。

WiMAXカードの試作品。はみ出すアンテナ部が大きいのは試作品ゆえか。2.3~2.5GHz帯を使うノートパソコン向けのWiMAX通信カードは、2006年後半にも提供が開始されるという さらにインテルでは、無線LAN+WiMAXの機能を1チップで実現する無線モジュールの開発にも成功しているという。これは2月の半導体会議でも紹介された
WiMAXカードの試作品。はみ出すアンテナ部が大きいのは試作品ゆえか。2.3~2.5GHz帯を使うノートパソコン向けのWiMAX通信カードは、2006年後半にも提供が開始されるというさらにインテルでは、無線LAN+WiMAXの機能を1チップで実現する無線モジュールの開発にも成功しているという。これは2月の半導体会議でも紹介された

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