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ソリッドワークス、3次元CAD導入促進セミナー“八王子3次元モノづくりセミナー”を開催――3次元化促進で海外勢に打ち勝つ開発力を!

2006年02月13日 23時18分更新

文● 編集部 内田泰仁

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ソリッドワークス・ジャパン(株)は13日、東京都八王子市において、製造業向けの3次元CAD導入促進セミナー“八王子3次元モノづくりセミナー”を開催した。共催は八王子の産業活性化推進団体“「首都圏情報産業特区・八王子」構想推進協議会”(通称:サイバーシルクロード八王子)。セミナーの内容は、実際の開発/設計者による3次元CADの導入事例の紹介、経営的視点から見た3次元CAD導入のメリット、初心者向けの3次元CAD講座、など。

セミナーの冒頭に登壇したソリッドワークス・ジャパンの代表取締役社長、臼井冬彦氏。セミナーを通じて、3次元CADによる開発力/生産性の向上をアピールするとともに、「会社の規模や経営プロセスにあったツール/製品を提供」すると述べ、中小規模事業者の3次元CAD導入を訴えた同じく冒頭に登壇したサイバーシルクロード八王子 会長の甲谷勝人氏。3次元CAD導入の効果を“企業体質の改善”と捉える経営的視点の必要性を述べ、「時代に先んじて変化して、生き抜くビジネス」展開を説いた

八王子市は、古くは絹織物業などで知られる都下の商工都市で、現在も大手光学/精密機器メーカーから中小規模製造業まで、多数の開発/製造拠点が集まっている。サイバーシルクロード八王子は、八王子市、商工会議所、民間企業、教育機関などが協力して設立した団体で、地元産業の活性化、企業間連携の推進などが活動目的。今回のセミナーは、同団体が7日に開催した“3次元CADの最前線~勝ち残る企業を目指して”というセミナーをフォローアップするものとして、ソリッドワークス・ジャパンの主催で実施された。

コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)の田代進氏。実際に製品開発に携わる現場担当者でもあり、同社での3次元CAD普及に尽力田代氏も参加した、3次元CAD“SolidWorks”を導入した製品開発の“成功例”。現場が積極的に普及を推進したことが勝因だったという

午前中に行なわれた基調講演では、3次元CADの導入/活用事例、産官民連携による普及/スキル向上への取り組み例が紹介され、基調講演前半に登壇したコニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)の田代進氏は、同社における開発/設計現場での3次元CAD導入の実情を解説した。

田代氏によると、同社では1997年に3次元CADの導入を開始したものの、初期の導入は決してスムーズではなかったといい、最初の3次元CADを利用した製品開発(中速デジタル複合機)では、途中で利用を断念したほどだったという。当時断念せざるを得なかった事情としては、ハードウェアのパフォーマンスやソフトウェアの能力の不足、データ管理面での知識不足、設計部門以外での3次元CADへの対応の遅れ、部品加工先の対応の遅れなどがあり、2次元から3次元への大幅な環境の移行の場合、「導入直後には効果は(すぐに)出ない」こともあるという。しかし、いったん軌道に乗れば、2次元CAD環境では困難だった“試作レス”での設計/開発(2次元の場合、デザイン確認をはじめとしてさまざまな局面で試作作成が必要だったが、3次元CADの場合は、3Dデータを生かした実際の試作に近い詳細な事前確認が容易)、後戻りしない設計が可能になり、設計品質の向上、期間の短縮、コストダウンが実現できるとそのメリットをアピールした。

同社の3次元化に向けた特徴的な取り組みとしては、実際の設計/開発担当者が中心となったボトムアップでの社内普及を行なった点が挙げられる。一般的に、大規模な開発環境の導入/移行は、トップダウン型の社内普及が取られるというが、同社では、設計/開発の現場が積極的に普及に向けた提案やマニュアル/ルール作成、支援組織運営などを行ない、関係する他部署での導入/利用の支援や教育/啓蒙なども行なっているという。

同社でのケースは、どちらかというと大規模導入事例となるわけだが、田代氏は、3次元CADの導入は「“人がいないから導入できない”ではなく、導入する意思があれば、規模に関わらず可能」だとして、中小規模事業者にも3次元CADの導入を勧めた。また、「成功事例をトレースするだけでは(導入が)成功しないケースもあり、自分たちの置かれた環境に合わせた工夫が必要」だといい、成功への秘訣として、十分な移行期間の設定、ツールの使いこなし、設計/開発の現場からの積極的なフィードバック、などの必要性を述べた。

3次元設計能力検定協会 理事の栗山弘氏“3次元設計能力検定試験”のターゲット。最大の目的はプロをいきなり作ることではなく、“卵”の育成にあると栗山氏は言う

後半に登壇した特定非営利活動法人3次元設計能力検定協会 理事の栗山弘氏は、同協会および長野県における3次元CAD普及の取り組みを紹介した。長野県では現在、高等専門学校や大学、商工会議所などに3次元CAD(ソリッドワークス・ジャパンの“SolidWorks”シリーズ)が気軽に学習できる環境を整備しており、産官民が協力した普及およびスキルアップに取り組んでいる。これらの活動は、工学教育の現場(高専/高校/大学)が基点となったものだといい、大学などでは、授業カリキュラムにも積極的に3次元CADを組み込んでいるケースもあり、“SolidWorks”のアカデミックライセンス数は、東京都、大阪府についで多い県となっているという。

このような流れの中から生まれた3次元設計能力検定協会は、、3次元CADを中心とした設計能力検定試験“3次元設計能力検定試験”を実施している団体で、長野県の教育機関および民間企業と、長野県の支援により活動を展開している。“モノづくり”で海外勢との海外勢との厳しい競争に勝ち残るためには、よい品質の製品を“早く”“安く”開発することが必要だとして、「本当に力のある設計者を戦略的に育成していく」(栗山氏)ことを目標に、開発の最も根本的なパートである設計の質の向上と効率化に向け、3次元CAD活用による開発力の徹底強化/革新を進める支援を行なっているという。同協会の検定試験は、単なる試験の合否判定ではなく、“設計者の育成”を行なうことを意図しているといい、3次元CADおよび設計の基礎となる7つの能力(JIS製図法/精度設計/材料選定/強度設計/信頼性設計/要素設計/加工法)のバランス評価を行なっている。

なお、第1回の“3次元設計能力検定試験”は2005年11月19日に終了し、第2回は5月20日に行なわれる。今後、毎年5月と11月に定期的に実施していくという。

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