トレンドマイクロ(株)は10日、都内ホテルで記者説明会を開催し、2006年の戦略説明を行なった。登壇した同社代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)のエバ・チェン(Eva Chen)氏はこの中で、2005年はセキュリティー対策製品市場に大きな変化が始まった年だと振り返ったが、この変化をイノベーションのチャンスと捉え、「安心して情報がやりとりできる環境」の提供を目指すと述べた。
代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏 | トレンドマイクロ/米シマンテック社/米マカフィー社のエンタープライズ市場における売上推移。なお、セキュリティー対策市場に新規参入したマイクロソフトについてチェン氏は、「価格面ではシマンテックやマカフィーのほうが強いプレッシャー」「数ある競合のひとつ」とコメント |
チェン氏は2005年に起きた市場の“変化”について、業界/脅威/顧客/自社の4観点にまとめている。
- 業界動向
- 米マイクロソフト社の参入
- アプライアンス製品の登場
- 競合における事業の多角化
- 新しい脅威の出現
- 多種多様なワームやボットの登場
- 標的を絞った局所的な攻撃
- スパイウェア/ルートキット/フィッシング詐欺
- 顧客の状況の変化
- ネットワーク境界の消失(=ユビキタス化)
- 小規模企業によるセキュリティー要求の増大
- トレンドマイクロ自身の変化
- 顧客セグメントによる組織体制のスタート
この中でも特に、「(最近は)大きなウイルスなどの被害は報告されていないが、それでも大きな危険を感じている」と述べ、インターネットの生活インフラ化(ショッピングや個人情報のやり取りへの活用など)を狙った情報や金銭の詐取などの従来のウイルスなどの被害とは別の被害が新たに生まれたことで、「ネットワークは静かに壊滅状態へ向かっている恐れもある」と警鐘を鳴らした。
同氏は、これらの脅威の変化/深刻化に対しては、これまでに取り組んできたセキュリティー対策(クライアント・ソフトウェアによるファイル検索/ゲートウェイ製品によるトラフィックの監視など)に加えて、ネットワーク自体にいかにセキュリティー対策機能を融合していくかが重要だとしている。同社では、パートナー企業のルーター製品などへの技術提供などといった協業、インターネット上で情報をやり取りする際の“相手”の信頼性/正当性を証明する認証システムなどの普及を図っていくといい、「実際のお店でのショッピングでクレジットカードを不安なく使えるのと同様の安全性」を提供したいとした。
日本代表の大三川彰彦氏 | 2006年の製品ロードマップ。2005年より新製品/サービス数は増える見込みとのこと |
また、日本市場での展開について説明を行なった同社日本代表の大三川彰彦氏は、国内市場の動向について、セキュリティー対策アプライアンス、セキュリティー管理サービス、セキュリティー対策コンサルティングが20~30%超の成長を続けるとの予測を紹介し、各分野に対して「トレンドマイクロのテクノロジー、ナレッジをさらに発展」させて取り組んでいくと述べた。
2006年の戦略としては、前述のネットワーク機器ベンダーとの協業強化とカスタマイズソリューションの展開、サービスの強化を進めていくとしう。チェン氏、大三川氏が挙げた顧客セグメント別の展開は以下のとおり。
- エンタープライズ企業
- ゼロデイアタックの事前予防/企業ネットワークへの侵入の阻止/マネージドサービスをベースとした、ネットワークとセキュリティーの融合展開
- “ビジネスのゴール”を目指したセキュリティー対策プロセス管理の提案
- 中小/中堅企業
- “Worry-free”をスローガンに、ネットワーク/セキュリティーの専門家のいない中小/中堅企業にも導入しやすい製品/サービスを強化
- コンシューマー
- 従来のソフトウェア/サービスに付加するサービスを、ユーザーのニーズに対して先を読んでオンタイムに提供
- パートナーとの連携によるパッケージ製品販売の拡大(プレインストール促進など)、次世代製品/サービスの具体化
COO兼CFOのマヘンドラ・ネギ氏 | 製品ジャンル別の売上に占める比率 |
なお、この日の説明会では、代表取締役 最高執行役員(COO)兼最高財務責任者(CFO)のマヘンドラ・ネギ(Mahendra Negi)氏が2005年の通期連結決算を報告。これによると、売上高は対前年比18%増の730億3000万円、純利益は18%増の186億7000万円。地域別の売上高比率は、日本が40%、北米が21%、欧州が25%、アジア/オセアニアが11%、中南米が3%となっているといい、将来的には日米欧の比率を同水準にしていきたいとしている。また、2006年第1四半期の業績は、売上高が前年同期比13%増の195億円になる見込みだという。