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SAP、2006年度の戦略説明会を開催――「スピードとパッション」を持って2005年の成長を継続

2006年01月30日 18時50分更新

文● 編集部 内田泰仁

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SAPジャパン(株)は30日、2006年度(※1)の新戦略の概要を発表し、これに併せて都内で説明会を開催した。同社代表取締役社長のロバート・エンスリン(Robert Enslin)氏によると、2005年度は「2001年度以来の好業績」だったといい、2006年度はこの好調をベースに、顧客価値の向上とパートナーとの協業強化を軸とした各種施策に取り組んでいくとしている。

※1 同社の会計年度は1月~12月。

代表取締役社長のロバート・エンスリン氏2005年度のまとめ

エンスリン氏によると、2005年度のビジネス状況は、前年度に比べて、ソフトウェア売り上げが8%、総売り上げが7%の増加となり、業務アプリケーション市場での「リーダーシップを拡大」したという。特に、ソフトウェア売り上げは、市場でのライバルとなる日本オラクル(株)の5.8倍に達しているというが、オラクルが企業買収/合併により成長しているのに対して、SAPは「合併によらず、有機的に成長」していると比較し、日本市場での製品展開、ビジネスを伸ばすことによってシェア、規模を成長させる戦略を継続すると述べた。

また同氏は、2005年以降の日本の景気回復(IT投資の回復など)や構造改革の進展(各種民営化や規制緩和)、法制度改革(コンプライアンス/ガバナンス強化要求の高まり)、社会情勢(人口減少の開始)などの動きは、同社にとっての“好機”にあるとしており、2010年に向けた中~長期目標と2006年度の注力施策をそれぞれ発表した。

2010年に向けた展開としては、まず第1に、同社製品を大規模/自社開発の業務システムに代わる“業界標準のビジネス・アプリケーション”として提供することを挙げ、特に自社開発システムの利用比率が高く、同社製品のようなパッケージ・ソフトウェアの活用度が比較的低いとされる、金融/公共/小売の3業種に対するアプローチを強化していくとしている。また、同社が『SAP Business One』などの製品投入で取り組みを強化している中堅企業向け市場での展開では、業界をリードできる付加価値の高いパートナーとの協業を日本で確立し、あらゆる業種および地域に対してビジネスを拡大し、パートナーとともに成長する展開を進めるとした。さらに、標準的なESA(Enterprise Service Architecture )プラットフォームとして“SAP BPP(Business Process Platform)”を確立すると同時に、ISVコミュニティーを立ち上げ、広範囲の業種/業務に対して付加価値の高いソリューションを提供していくと述べた。

2006年度の注力施策としては、顧客価値の向上とパートナーとの協業強化を軸とした、4つの項目が挙げられている。

顧客価値の向上
顧客価値の向上を目指した専門部隊“カスタマー・バリュー・オフィス”の設立や、営業スキル/エグゼクティブ・マネージメント・スキルの向上を目的とする“バリュー・エンジニアリング”の充実により、さらなる顧客価値の向上を図る。また、顧客との長いパートナーシップを確立すべく、顧客企業の経営層とより密接な対話を進める”Let's Talkキャンペーン”を実施。
パートナーと共に成長する戦略の確立
製品、技術、サービス、チャネル全てのパートナーと協業し、Win-Win関係を構築。“SDN(SAP Developer Network)”や“PBN(Powered by SAP NetWeaver”などのオープンプラットフォーム支援や、各パートナーとの共同戦略立案を進める。
人材の最大活用と能力開発
競争力強化に向けた社内人材の活用/開発を強化。強力なマネージメントチームの結成に向けた主要経営幹部や従業員の積極的な雇用および登用、人材管理の充実およびマネージメント層を対象としたトレーニングの実施、能力/業績に応じた報酬および評価制度の実施、社内における双方向コミュニケーションの確立などに取り組む。
“ESA”をベースとした技術革新の進展
“プラットフォーム”(SAP BPP)をベースとした、経営課題に対応した的確なソリューションを高い顧客価値として提供。また、プラットフォームを基盤としてモジュール化したアプリケーションを提供することにより、ビジネスのスピード化/高品質化/コスト削減を実現。

また、これらの重点施策の実施に向け、同社では併せて組織改革も実施する。改革の大きな柱は、地域/業種などにより細かくセグメント化した営業本部の設立と、各営業本部へのマーケティング/アライアンス/ソリューション/コンサルティング/バリュー・エンジニアリング/サポート/セールスオペレーションなどの部門に各営業本部を支援する担当を設置する、という2点。これにより、ニーズに応じた顧客満足度の高い営業の実施と、これを支援する“ワンチーム”営業戦略の展開が可能になるとしている。この組織改革により創設される営業本部は以下のとおり。

  • 地域営業本部(中堅/中小企業向け営業部門)
  • 製造営業本部
  • ハイテク産業営業本部
  • 流通・サービス産業営業本部
  • プロセス産業営業本部
  • ストラテジック・インダストリー営業本部(金融/公共向け営業部門)

またこれに併せて、ストラテジックソリューション事業本部およびバリュー・エンジニアリング本部の拡充と活動内容強化、ESAの訴求と展開を遂行する専任組織としての“ESA Office”の新設を行なうという。

なお、2006年度の売り上げ目標の具体的な数値としては、ソフトウェアのライセンス売り上げで15~17%増としており、エンスリン氏は「(ドイツ)本社発表と同様、アグレッシブな数値ではあるが、達成できる目標だと思う」と期待感を示すとともに、「2005年の成長を生かし2006年の成長を果たすには“スピードとパッション”が必要」と締めくくった。

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