昨年のFC EXPO 2005(第1回)では、効率的に電力を生み出すための原料や触媒、原料の運搬・輸送・管理など、燃料電池における基礎的な技術や製品が目立った。今年もこれらの改良は進んでいるが、加えて目に付いたのは実用上必要とされるであろう“新技術”への取り組みだ。
その好例として挙げられるのが、(株)四国総合研究所の“水素を見る”という可視化装置。水素はガスとして漏れ出した場合はもちろん、燃焼した場合でも人の目にはほとんど見えない。そのため、万一水素漏れの事故や火災があっても、その原因・現場を特定するのが難しいという。
手前の黒い筒がレーザー発信機、奥のカメラでラマン散乱光を検出する | カメラで撮影したデータを可視化する装置。この3点で構成される。左のパソコン用ディスプレーを見ると、緑のドットで水素ガスが漏れていることが確認できる | |
四国総合研究所が開発した水素ガス可視化装置 |
四国電力(株)の子会社である四国総合研究所(ちなみに、日本の電力会社のうち研究機関を別会社に設けたのは四国電力だけとのこと)はここに目をつけ、
- 水素火炎を見る
- 火炎が放出する紫外線光の画像
火炎周辺が高温になることで発生する赤外線画像
火炎の背景に透過して見える可視光画像
⇒上記の3つを合成してモニター装置に表示する - 水素ガスを見る
- レーザー光を当てることで、水素ガス(水素分子)に当たって入射時とは周波数が変化した“ラマン散乱光”を補足、画像化
水素ガスの背景に透過して見える可視光画像
⇒上記の2つを合成してモニター装置に表示する
という方法で、水素火炎や水素ガスの漏れを検出するモニター装置を開発した。同社では3年前から研究開発を進め、昨年横浜で開催された“水素エネルギー会議”で研究結果を発表している。
水素火炎可視化装置。こちらはレーザー光を発する必要がない(炎から紫外線や赤外線が出るので、それを検出するだけでいい)ため、かなり小型化が進んでいる。赤い炎は紫外線/赤外線画像から合成したCG | 初期に開発したタイプの水素火炎可視化装置の内部。紫外線、赤外線、可視光線の3つのカメラが並んでいる | |
同じく四国総合研究所の水素火炎可視化装置 |
説明員によると、よく寄せられる質問として、「何%濃度の水素まで検出できるのか?」と聞かれるそうだが、技術的には1%の水素でも検出できるものの、この技術開発の目的は、水素ガス漏れがあった場合に原因を特定することが目的であって、その場合は故障個所から高濃度の水素が出ているはずなので、あまり低濃度の水素を検知する必要性はないだろう、としている。なお、同社はあくまで研究機関であり、製品化についてはメーカー(製造会社)と協議しながら進めたいとのこと。